26日、兵庫・神戸市立中央体育館で元WBA世界スーパーバンタム級王者(現日本フェザー級21位)・久保隼(30歳=真正)が昨年5月のWBAフェザー級戦(6回TKO負け)以来の再起。セミファイナルではWBO女子アトム級王者・岩川美花(37歳=高砂)が2018年7月の王座獲得戦以来の世界戦で、鈴木菜々江(28歳=シュウ)の挑戦を受けた。
写真_太田裕史
久保(左)は、五十嵐の攻勢を丁寧にいなした
■58.0kg契約8回戦
○ 久保 隼(真正)
五十嵐嵩視(トコナメ)
判定3-0(78対75、79対74、79対74)
左側にやや上体を傾けたいつものスタンスのサウスポー久保。これは、五十嵐の前の手(左腕)のインサイドに右のリードブローを滑り込ませる構えだ。ヒットを目指したものでなく、自らのリズムと距離をつくるためのジャブで、これを小気味よく突き続ける。そしてこのジャブに続けて打ち込む左ストレート、アッパーカットを上下に打ち分ける。五十嵐は入り込むタイミングを考えるあまり、見入る時間が長くなり、久保を心地よく振る舞わせすぎた。
久保のインサイドへのジャブは、終始間断なく打ち込まれた。続けて打ち込む左を外して、五十嵐も時折右を合わせた。が、久保はさらに連打で迫る五十嵐の間合いを、丁寧にフットワークでかわした。
世界2階級制覇を敵地で狙った王者シュ・ツァン(中国)との一戦は、目の不調もあってまったくいいところなく敗れた久保だが、この日は丁寧に、被弾を防ぐ意図は見えた。アウトから被せるジャブ、左ストレートからの返しのブローなど、バリエーションを増やすと山場を作る展開に持ち込めるはずだ。
久保の戦績は16戦14勝(9KO)2敗。五十嵐は13勝(5KO)5敗。
クリーンヒットでは王者・岩川が上回ったが…
■WBO女子世界アトム級タイトルマッチ10回戦
○ 岩川 美花(高砂)
鈴木菜々江(シュウ)
判定2-1(96対94、97対93、93対97)
足の入れ換えを頻繁に行うチャンピオン岩川は、極めてめずらしいスタイルのスイッチボクサー。相手の出方によって、足をずらしながら間合いを外し、そのスタンスで当たるブローを選択して放つ。これに幻惑されてしまうと、完全に岩川のペースとなってしまうのだが、元日本王者の鈴木は、それを完全に無視して、ひたすらに距離を詰めて手数を出す。
挑戦者・鈴木は猛烈なスタミナで最後まで追い続けた 打たせないボクシングにこだわる岩川は、スッと体を寄せたり、パンチを打たれない位置に頭を持っていったりする巧みさを見せるが、腕を巻き込んでしまう鈴木とのクリンチのシーンが増えた。
驚異的なスタミナで、ひたむきに手数を出し続ける鈴木は、一見すると派手に見えたかもしれない。が、鈴木の入り際や、インファイトで的確にヒットを奪っていたのは岩川。ずらしの防御テクニック同様、玄人好みのスタイルは健在だった。
しかし、この日のスコアのように、完全にアピールするには物足りない部分があるのも事実だ。最終10回、岩川は鈴木のブローに相打ちのタイミングで左右フックを出し、すべて先に当てることに成功した。危険がともなうことには違いないが、岩川の見切りがあれば、もっと早い回から仕掛けられたはず。そうなれば、展開も違ったものになったはずだ。
2年越しの初防衛となった岩川の戦績は16戦10勝(3KO)5敗1分。初の世界戦に惜敗となった鈴木は15戦10勝(1KO)4敗1分。
2年ぶりにリングでベルトを巻く姿を披露した岩川
昨年連敗の湊は、“ビッグネーム”大場をストップ
■バンタム級6回戦
○ 湊 義生(JM・加古川)
大場 浩平(SUN-RISE)
TKO2回32秒
2014年9月以来、6年ぶりのリング復帰となった元日本バンタム級王者の大場(35歳)だが、2018年フライ級全日本新人王の湊(22歳)が開始早々から左フックでプレスをかけて、ロープを背負う立ち上がり。
2回、湊が右ストレートをヒットして大場からダウンを奪うと、立ち上がった大場に湊がラッシュ。防戦一方となった大場をレフェリーが救った。
昨年は現・日本フライ級王者ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)、日本ユース・フライ級王者の白石聖(井岡)と対戦し連敗していた湊は、新人王戦以来の勝利で12戦9勝(4KO)3敗とした。大場は41戦36勝(14KO)4敗1分。