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2020-10-15

ロマチェンコ対ロペスほか。秋のビッグマッチを展望する

現代ボクシングの極地に立つロマチェンコが若き危険な対戦者を迎え撃つ

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海外ボクシングの目玉は、井上尚弥ばかりではない。10月から11月にかけて、ビッグマッチがずらりと並ぶ。ボクシング・マガジン11月号では、そのなかでも特撰カードを厳選し、プレビューしている。

究極の新旧対決、ロマチェンコVSロペスの行方


テオフィモ・ロペス

 最大注目は17日(日本時間18日)の世界ライト級王座統一戦だ。パウンドフォーパウンド、全階級をとおして最強と評価されるハイテク・テクニシャン、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に、これまた全階級とおしてもっとも魅力的な若手ハードパンチャーとも言われるテオフィモ・ロペス(アメリカ)が対する。この試合にかけられた世界タイトルはロマチェンコのWBAスーパー・WBO、ロペスのIBFだが、ロマチェンコはWBCの特別栄誉の称号、フランチャイズ・チャンピオンだけに、実質的な4団体統一タイトルマッチになる。

 ロマチェンコの技術の奥行きは底知れず、たゆまぬトレーニングで鍛え上げた縦横無尽のフットワークは32歳にして健在。一方のロペスは23歳。天性のひらめきとと、一撃強打は秀逸である。

 ともにこの試合が16戦目だが、内容はずいぶんと違う。五輪2連覇、アマチュア396勝1敗の戦歴を引っ提げてプロ入りしたロマチェンコは3戦目で世界王座獲得を獲得し、これが14度目の世界タイトルマッチ。その間に3階級制覇も成し遂げた。ロペスはこれが2度目の世界戦に過ぎない。キャリアの差がすべてを決めるという見方が大半だが、ロペスの持つ驚異の潜在能力がこれをひっくり返す可能性も秘める。パンデミック以前は5月開催で内定したいたこの一戦、無観客試合で実現にまで至った経緯を含め、入念に展望していく。

 この試合はWOWOWで18日午前11時より中継される。ボクシングに興味がある人なら、決して見逃せない。

2020年屈指の好カード。スペンス対ガルシア


エロール・スペンス


ダニー・ガルシア

 現代の英雄たちがひしめくウェルター級。孤高のロードを往くテレンス・クロフォードは別として、もっとも充実した戦力を誇るのは不敗のサウスポー、エロール・スペンス(アメリカ)だ。どこまでもしなやかに戦い、そして鋭利なブローで対戦者を切り崩す。そのスペンスと対するのは、冷徹なカウンターパンチャー、ダニー・ガルシア。ガルシアの計算し尽くした試合運びと、左フックの破壊力は折り紙付き。スリル満載の戦いになること必定である。

 ただし、スペンスにも大きな不安材料がある。昨年10月、テキサス州ダラスで、愛車の白いフェラーリを運転中、道路上で3回転する大事故を起こしている。車は大破しても、スペンス本人は奇跡的に軽傷ですんだが、本当に大丈夫なのか。真実は試合当時のリングの中でしかわからない。

 なお、ボクシング・マガジン11月号ではこの試合は11月21日に開催としているが、本誌締め切り後に12月5日に変更になっている。WOWOWの放送スケジュールの欄でも、日本時間の11月22日に先行ライブ配信としているものは12月6日になっているので、くれぐれもご注意を。

井上とデービス。アメリカではどっちが人気を集めるか


ジャーボンテ・デービス


レオ・サンタクルス

 井上尚弥がジェイソン・マロニー(アメリカ)とラスベガスで対決するのは現地時間の10月31日。実はこの日、アメリカではもうひとつのとびきりのカードがある。ジャーボンテ・デービス(アメリカ)対レオ・サンタクルスの対決だ。デービスの持つWBA世界ライト級王座と、サンタクルスのWBAスーパー世界スーパーフェザー級の2階級の世界タイトルがかけられる変則的なタイトルマッチとして組まれており、その賛否両論も集めるが、極上の顔合わせに違いはない。

 23戦全勝22KOと驚異のKO率を誇るデービスは、単なる腕力自慢ではない。繊細な距離感覚、ほとんど軌跡とも思えるナチュラルタイミングの持ち主。思いがけない局面から、一気の連打でのストップ、あるいは凄絶なKOシーンを生み出していく。ただし、ウェイトコントロールが下手で、調子に波もある。ここまで4階級制覇している好戦派、サンタクルスのエンドレスの連打で追い立てる可能性もある。さて、どうなるのか。

 アメリカ国内ではスポーツ専門チャンネル『ESPN』で放映される井上と、プレミアチャンネル『Showtime』で有料のPPV(ペイパービュー)放送のデービスで、どちらが視聴者を集めるかと、早くも話題沸騰中だ。

 いずれのビッグマッチも、ボクシング・マガジンのプレビューで下知識を取り込んで、十分に堪能されたい。

写真◎ゲッティ イメージズ
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