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2020-10-14

【ボクシング】ライト級戦線に名乗り! 巧者・柳がランカー対決に完勝/元王者・粉川がTKOで再起

柳の右が斎藤を捉える!

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 14日、東京・後楽園ホールで行われた『SLUGFEST.15』は全4試合がKO決着──。メインの日本ライト級ランカー対決は、7位の柳達也(30歳=伴流)が6位の斎藤一貴(28歳=角海老宝石)を6回52秒TKO。前座に登場した元東洋太平洋スーパーフライ級&日本フライ級王者(現・日本フライ級4位)の粉川拓也(35歳=角海老宝石)が日本ライトフライ級6位・山口隼人(31歳=三迫)を6回1分39秒TKOに下した。

技巧派・柳が攻防バランスに冴え

この日の柳の攻撃はヒット率も高く、効果的だった

■ライト級8回戦

○ 柳  達也(伴流)61.0㎏
  斎藤 一貴(角海老宝石)61.1㎏
  TKO6回52秒

 接近戦での位置取り、味のあるショートブローの差し込み方などに定評がありながら、ここというところで効かされたりダウンを奪われたり……というのが柳のこれまでだった。が、「コロナの自粛期間で自分のボクシングを見つめ直した」。曰く、「フッとガードを下げてしまうところ、頭の位置などを意識するようにした。攻めに逸る意識から、守りにやや比重を置くほうに」したのだという。
 2回には左ショートフックを斎藤のテンプルにヒットして尻もちをつかせ、4回には斎藤の左ガードの外から右を巻き込んでダメージを与える。中に入っての得意の右ボディブローからの左右ボディブロー。巧みにポジションやテンポを変化させていることが利いている。時折斎藤も強打を叩き込んでくるが、これらはしっかりと両腕、両グローブで防いだ。
 6回、左フックのカウンターで齋藤を腰砕けにした柳は、ニュートラルコーナーに詰めて連打の雨あられ。ここでも「余計なパンチをもらわないよう、ディフェンスに意識を置いていた」から、力みの抜けたスムーズなブローが流れ込む。防戦一方の斎藤を、レフェリーが救いだした。
 2012年の全日本スーパーフェザー級新人王。同僚で、同年のフェザー級新人王となった伊藤雅雪(29歳)はその後、東洋太平洋、WBO世界スーパーフェザー級王者へと駆け上がったが、柳は渋い技巧を持ちながら、華やかな伊藤の陰に隠れ、遠回りをしてきた。
 その伊藤は横浜光ジムへ移籍し、ライト級参戦。「国内のボクシングを盛り上げたい」と、同じくライト級への転級を表明している東洋太平洋スーパーフェザー級王者・三代大訓(25歳=ワタナベ)と12月に拳を交える。さらに同級には日本・東洋太平洋・WBOアジアパシフィックの3冠王者・吉野修一郎(29歳=三迫)も君臨する。
「そろそろタイトルマッチもやりたいから」と、“開眼”した理由を語る柳。「そうなってもおもしろいですよね」と、名前こそ出さなかったものの、元同僚との対戦を思い浮かべていたのは明らかだった。
 柳は25戦17勝(7KO)6敗2分。斎藤は10戦7勝(5KO)3敗。

会心の勝利に笑顔がこぼれる柳

粉川は38戦目にしてスタイル一新を図る

山口を強打で攻め立てる粉川

■フライ級8回戦
○ 粉川 拓也(角海老宝石)50.8㎏
  山口 隼人(三迫)50.7㎏
  TKO6回1分39秒

 昨年8月、OPBF王者ジェイアール・ラクィネル(フィリピン)に痛烈なTKO負けを喫した粉川に、引退を勧める声は多かった。が、「そういう人たちを見返したかった」と37戦のキャリアで築いたボクシングの一新を図った。軽快に動き回るスピードボクシングから、強いパンチを打ち込んでいくファイター寄りのスタイルに。あの内山高志(元WBA世界スーパーフェザー級チャンピオン)の最初のトレーナーを務めるなど“チャンピオンメーカー”として名高い洪東植(ホン・ドンシク)トレーナーに教えを請うた。
 先制攻撃を仕掛けた山口に対し、粉川の強打スタイルは序盤こそハマらなかったが、2回にステップを使って手数を集める“これまでの”リズムを使うと、様相が変わりだす。そこから歩いて山口に迫り、右からの左ボディブロー。4回には右の精度が格段に上がり、狙い打ちの状態になっていった。
 山口もボディブローで先手を取っていたものの、2回にバッティングで右目上を、4回に粉川の右で左目上をカット。出血とダメージによって急激に失速していったのは否めない。両目上は古傷があって、毎試合のようにカットしてしまう。これは大きなハンディだった。
 粉川の右狙い打ちは5、6回と続き、レフェリーは山口の状態を見て試合を止めた。
 同僚でボクサー型からファイターとなって成功した例は、最近ではWBOアジアパシフィック王者となった阪下優友(引退)が印象に残る。粉川はまだ“洪トレーナー式”にフィットしているとは言い難いが、「洪さんの教えを信じてやります。もちろん世界チャンピオンを目指して」と意気上がる。
 粉川は38戦31勝(14KO)6敗1分。山口は25戦15勝(2KO)9敗1分。

粉川のKO勝利は2013年9月以来


速攻を決めた齊藤。次戦は、中間距離での駆け引きも見てみたい

■スーパーフェザー級8回戦
○ 齊藤 陽二(角海老宝石)58.9㎏
  脇田 将士(ミツキ)58.9㎏
  KO1回2分31秒

 長身(180cm)サウスポーの脇田に、12cm下回る齊藤は一気に仕掛けた。左右ボディ連打を叩き込み、早々にロープに詰めた。
 いったん、攻めをブレークさせた齊藤は、ふたたび距離を詰めて脇田を青コーナーに押し込んで右。脇田はたまらずキャンバスに倒れ込み、立ち上がったものの、レフェリーが続行を許さなかった。

文_本間 暁 写真_馬場高志

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