8月14日、鶴岡東(山形)は2回の集中打による5得点や五番・丸山蓮の2打席連続本塁打などで、9対5でセンバツ準優勝の習志野(千葉)を打ち破り、チーム初となる甲子園2勝を挙げた。
 その鶴岡東には、欠かすことのできないムードメーカーの控え投手がいる。

※上写真=監督のような立ち振る舞いでチームメートにゲキを飛ばす鶴岡東・相川
写真◎牛島寿人

監督の助言で春のベンチ外から甲子園の舞台へ

 両手を腰に当ててベンチのホームベース側最前列から戦況を見つめ、1球ごとに顔より高い位置で手をたたいて選手を鼓舞し、外野に届かんばかりの大声で守備位置を指示する。
 しかし、誰がどう見ても監督のように振る舞う人物の背中には、間違いなく10という数字が縫い付けられている。

 この男、実は指揮官ではなく右サイドのリリーフ投手、相川陽だった。

「声出すのはいつもやっています。あそこの位置についたのは今日が初めてです。でしゃばったっす。(監督の佐藤)俊先生が端っこにいたんで自分が取ったろと思いました。山形大会ではずっと俊先生の横で声出してました」

 1回戦の高松商(香川)戦後、そう話していた相川はチームのムードメーカー。

「投げっぷりが良い。長身でリズム良く投げてくれるようになったかな。面白いキャラしてます」というのが佐藤監督から見た評価。

 春の大会はベンチ外だった。この段階でベンチに入ったことのない3年生が夏に背番号をつけることは現実的に難しい。そんなとき、佐藤監督の進言でオーバースローからサイドスローに変えた。すると投げ方が合っていたのか、球速が上がり、スライダーの曲がり幅も増えた。
「人生で一番練習した」という2週間を経て、東北大会でついにベンチ入り。夏の山形大会でもリリーフとして3試合に登板した。

 教室でも盛り上げ役であることに変わりはない。3年間同じクラスで、女子サッカー部に所属する芝田涼梨さんは「クラスでもいつも面白い。甲子園でもチームを盛り上げてほしいです」とエールを送る。
 あまり努力を人に見せびらかすタイプではないが、吹奏楽部顧問で相川の担任でもある森木茂先生は「ひょうきんなところもあるんですけど、やることはきっちりやってくれます。1年のころはケガもあったみたいですけど、地道に頑張っているとは監督やスタッフから聞いていました」と証言する。 

 甲子園では背番号が12から10へ昇格。1回戦で勝利を収め、2回戦で習志野との対戦が決まると「楽しみですね。自分も美爆音です。僕の声は宇宙まで届くんです」と、大音量の吹奏楽に負けない声量を誓っていた。結果は9対5で勝利、センバツ準優勝校を撃破した。

 甲子園2勝は鶴岡東にとって新記録。「伝説になったっす。いけるとこまでいきたいです」。
 カバンの中には土を詰める用の袋を常備しているというが、使うのはまだまだ先になりそうだ。

文◎小中翔太(スポーツライター)

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