投球数制限や連投の禁止など、球児を故障から守る取り組みについての議論が盛んになっている野球界。その一方で、女子野球界では女子選手の故障や競技能力についての調査・研究が少なく、女子に適した競技規定が作られていないという現状がある。長年、女子野球を取材してきたライターの飯沼素子氏はこうした状況に警鐘を鳴らし、女子選手が安全に、かつ思い切り野球を楽しめる環境づくりが必要であると訴えている。
 part1では、女子野球選手がケガなく安全にプレーするための規定作りや、指導者の意識改革の必要性について提言する。

文・図表◎飯沼素子(フリーライター)
写真=2019年夏の全国大会で、投手5人を投入して優勝した作新学院高校女子硬式野球部(写真提供/同部)

女子野球でも見られる投球過多

 金足農業高校、吉田輝星投手の力投に沸いた2018年夏の甲子園大会。その一方で881球という球数(秋田大会を含めると1517球)に、あらためて勝利至上主義を見直し、選手を野球障害から守ろうという機運が一気に盛り上がった。

 同年12月には新潟県高野連が19年4月から1日の球数を100球に制限する「球数制限」の導入を発表し(日本高野連の時期尚早という判断で延期、のち撤回)、19年2月には全日本軟式野球連盟が小学生の球数の上限を70球にすることを決定。10月にはポニーリーグが年齢別の投球数制限などを発表し、日本高野連も11月末、1週間の球数制限500球(これ以上投げるとケガの危険性が高まると考えられる数字)、3連投の禁止、大会日程の緩和などを正式に決めた。
 まさにこの1年は、18歳未満の選手たちを野球障害から守ろうと、関係する連盟が大きく動いた年だった。

 だが、この動きから取り残されてしまったのが女子野球界だ。たとえば全軟連の球数制限70球は、なぜか女子児童の全国大会には導入されていないし、中学硬式野球リーグでも女子大会の球数制限は検討されていない。軟式と硬式の女子野球連盟が運営する大会にも球数制限はなく、ワールドカップも男子(18歳以下)には球数制限があるのに、女子にはない。

 しかし、選手を野球障害から守るという観点から言えば、やはり女子にも球数制限などの規定を導入し、勝利至上主義に歯止めをかける必要がある。なぜなら、特定の選手に頼った采配は、男子に限ったことではないからだ。

 一例を挙げてみよう。下の表は高校の全国大会で優勝、準優勝、ベスト4の成績を収めた「エースと心中型」チームのエースたちの投球状況だ。女子は全員、高校女子硬式野球界を代表する優れた選手たちゆえに、監督たちは彼女たちの腕に優勝の夢を託し、初戦から決勝(または準決勝)まで全試合に登板させ、ほぼ完投させている。

画像: 女子野球でも見られる投球過多

 その球数(総数)は4~7日間で316~438。この数は果たして女子選手にとって適正なのだろうか。仮に男子の指針を使って女子の球数の上限を計算してみると、女子野球は7イニング制なので、男子の500球の9分の7の389球。すると選手CDEGがオーバー。また389球に達さなかった選手も、5日間で4試合、4日間で4試合といった過密スケジュールのため、2連投、3連投しており、性差を加味するまでもなく投球過多に陥っていると推測される。

 17年に全日本野球協会と日本整形外科学会などが発表した中学野球選手(軟式硬式1万1134人)の実態調査(注1)によると、1週間に350球以上全力投球した選手の67.4%が痛みを経験しているといい、高校生とはいえ彼女たちの体が心配だ。

 球数制限は小規模チームに不利ではあるが、競技人口の増加に伴い、男子の指導経験しかない監督・コーチが増えている現状を考えると、分かりやすい指針である球数制限は、女子野球にこそ必要なのではないだろうか。あるいは球数制限に抵抗があるなら、投球回数制限、連投禁止など、何かしらの規定を設けて女子を野球障害から守る意識を徹底すべきだと考える。

 また、選手の体を守るためには、大会日数を増やすことも大切だ。炎天下の大会では特に、休養日を設けたり、ダブルヘッダーにならないように予備日を増やすことが望まれる。それが難しければ、予選をして参加チーム数を絞るなど、運営を根本的に見直す勇気も必要だろう。


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