毎週、ベースボール・マガジン社発行の野球の知識や考え方を深める一冊を紹介していく。今回は、選手権100回大会を記念して発売された『甲辞園』(ベースボール・マガジン社・編)を取り上げる。

甲子園の歴史に思いをはせる

画像: 甲子園の歴史に思いをはせる

編集:ベースボール・マガジン社
価格: 2,500円+税
2018年 7月31日発売
A5判並製・402頁
ISBN:978-4-583-11173-5 C0075

 春のセンバツに続き、夏の甲子園中止が決定した。この中止に関してはさまざまな意見が飛び交い、選手、高校野球ファン、そして野球が好きではない人にとっても、「甲子園とは一体何か」を考える機会になったのではないだろうか。

 甲子園とは何かを考える助けになるのが、2018年の選手権100回大会を記念して発売された『甲辞園』だ。甲子園と広辞苑をかけたタイトルのとおり、第1回選手権大会から2018年の第90回選抜大会までの甲子園にまつわるトピックを集めた辞典になっている。

 今なおその名を残す名選手や名将、強豪校に古豪、さわやかイレブンや伸び伸び野球といったその年の流行、カチワリやアフリカン・シンフォニーといった甲子園名物、さらには甲子園球児のプロ入りにまつわる事件についても掲載。もちろん、大会記録やルールについても取り上げている。

 その中で「中止になった大会」という項目(200ページ)を引用してみよう。

 1918年には米騒動の余波で本大会が中止になったが、41年には戦局深刻化による文部省次官通達で、夏の地方大会の半ばで中止が決まっている。続く42年から45年は、第2次世界大戦のため春、夏の大会ともに空白期間となった。41年に関しては、優勝まで決まった府県も多かったが、第3次近衛文麿内閣は、臨戦態勢をとるため学徒は居住地にとどめるとしてスポーツの全国的な催しが禁止されたのだ。しかも、防諜上の必要として、朝日新聞は中止の社告を出すこともままならず。各地の大会は、単なる府県大会に切り替わり、途中で中止した県も、開催しなかった県もある。府県大会優勝を決めたチームのうち、帝京商(現帝京大高、東京)は幻の初出場となり、同様に県大会で優勝した青森工、韮崎中(山梨)、畝傍中(奈良)にしても、現在まで甲子園出場がないだけに、このときが大チャンスだった。

 

 1941年の大会中止は、地域によってはすでに都道府県予選が始まっている段階で決定されたらしい。当時の高校生たちは、迫りくる戦火に野球どころではなかったのだろうか。それとも、今の球児と変わらず、甲子園という大舞台にあきらめきれぬ思いを抱いていたのか。

 サイレンの響かない今年の夏は、この1冊とともに甲子園の積み重ねてきた歴史に思いをはせて過ごしてみては。 

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