上写真=記者とのやり取りに、自然、表情がほころぶ木村。明るさが、いまの心境を物語る

 自身のInstagramやTwitterなどで、練習再開を報告してきた前WBO世界フライ級チャンピオン木村翔(30歳=青木)が19日、正式に現役続行を表明する会見を開いた。一時は「このまま引退」の可能性も示唆した木村だが、「負けてファンが増えた感じ。応援して下さる方の声が背中を押してくれた」と、ふたたびリングに戻ってくる理由を語った。

得たものは、失ったものよりも大きかった

「木村が遊んでいた1ヵ月半、連絡を取らなかった」と有吉会長。すると、「会長、2ヵ月です」と木村

「今日は(記者が)2、3人だったらどうしようと思った」と、のっけから爆笑をかっさらった木村。現代っ子気質と、武骨な昭和の香りを漂わせるスタイルが見事にマッチ。独特のキャラクターが生み出され、メディアの人気も抜群なのである。これは、木村ファン同様の惹きつけられ方だろう。

 昨年9月24日。田中恒成(畑中)との壮絶なバトルの末、世界のベルトを手放し、「ベルトを失ったら終わりと思っていた」木村は、失意のまま、引退を匂わせる発言をしていた。

「2、3週間は、そんな状態でした」と木村。しかし、周囲の声は否が応でも本人の耳に届く。

「また頑張って!」「辞めないで!」「また試合を見たい!」……。

 負けて失ったものは大きかったが、きっと得たものはそれ以上に大きかった。木村は、それを肌身に感じ取ったのだ。

新たな試み

「……といっても、2ヵ月くらいは遊びまくってました(笑)」と“奔放ぶり”は相変わらずだったが、「気持ちが入らないとダメな性格」を知っている有吉将之会長は、“30歳の少年”を放牧していた。

「僕にはまだまだ足りない部分がある」。田中戦を経て、未熟さを痛感したのだという

 ジムワークを再開したのは12月。
「(田中戦は)勉強になった試合。経験値は上がったと思う。でも、技術的にはまだまだ」(木村)
「木村はこういう性格なので、まずは楽しませようと。いろんな新しいことをやったりして気持ちをつなぎ止めている。伸びしろはかなりあると思います」(有吉会長)

 木村が言う技術的なこととは、「攻撃面ではパンチの角度とか、防御なら、いろいろなディフェンスの仕方とか」(有吉会長)
“新しいこと”とは、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のステップであったり、マイク・タイソン(アメリカ)のようなヘッドムーブからの攻撃だったり……。

「前から、試合と試合の合間に遊びも兼ねて、そういう動きを取り入れていたんですが、試合が決まったら、木村の長所だけ、必要な部分だけ残して、あとは削って削って……という作業をしてきたんです」(有吉会長)

“昭和の香り”が春とともに帰ってくる

 だが、木村の武骨なスタイルは、相手を引きずり込んでしまえば滅法強いが、田中恒成の技術力、柔軟性には突き離されてしまった。だから、若干のモデルチェンジを施すには、いまが絶好のタイミング。年齢は30歳となったが、ボクシング年齢はまだまだ若い。木村翔という男は、乾いたスポンジ状態である。大舞台での敗北を味わって、悔しさを味わい、もっと強くなりたいという思いを多分に募らせたはずだ。気持ちが乗らないことにはまったく無頓着な男だが、いざ入ったときの集中力、爆発力。それこそが、この男の最大の武器なのだから。

 日本のファン以上に、中国での人気度は凄まじいという。かの地でも、敗れて以降、木村人気はさらに過熱しているそうで、「中国から、いい話をいくつかいただいているので、いまは交渉中」と有吉会長。伝え聞くところでは、3月下旬に中国という線で、復帰戦の話は進められているという。

「もう1度、ベルトを獲りたい。ファンに熱い試合を見せたい」
 木村は落ち着いた口調で、熱のある言葉を吐いた。

 もうまもなく、あの懐かしい香りを運んだ春がやってくる──。

今日は大好きなイエローは封印。爽やかなスーツ姿で、新たな気持ちを表現した

文_本間 暁 写真_山口裕朗


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