写真上=モートンの写真を手に王座奪取を誓った吉田
「格闘技人生を通じて、最高級の試合です。ずっと世界を取ることを目標にやってきました。必ず世界チャンピオンになって、お世話になってきた方々に恩を返したい」
11年前、20歳のときに格闘家を志してハワイへ。以来、総合、キック、シュート、ムエタイを経てボクシングの魅力に取り憑かれた吉田が、最大のチャンスに瞳を輝かせた。初めて世界のベルトをかけて戦う相手は、思い出深いハワイの出身でもあるモートン。4歳年上のWBO女子アジアパシフィック・フライ級王者だ。戦績は吉田の12勝1敗に対し、8勝(1KO)1敗3分。今年3月にはフィリピンで日本王者の日向野知恵(スパイダー根本)に判定勝ちし、初防衛に成功している。
1階級下で戦うことになる吉田だが、日本王座を手にするまではスーパーフライ級で何度も戦っており「適正階級だと思っています」とウェイト面は心配していない。モートンについては「アマ歴もあって経験豊富だし、気持ちも強い。背が低い(155センチ)ので、下からもぐりこまれないようにしたい」と分析した。
課題とするのはコンビネーションの強化。「いいパンチが当たっても、上体が前にいってクリンチになったりで、KOできない。気持ちが前に出すぎ。いま、徹底的に改善しています」。見守る加山利治会長は「とにかく練習が好き。スタミナ、フィジカルでは負けないし、何より負けん気が強い。いままでも厳しいマッチメークをしてきたが、勝ち残ってきた。そういうところが彼女の強さ。やってくれると思います」とジム初の世界ベルト奪取に期待を込めた。
4歳になったばかりの娘、実衣菜(みいな)ちゃんを育てながら、リングに立ち続けてきた吉田。出産後、一度はやめようと思ったボクシングを続けてこられたのも、その実衣菜ちゃんやジム、周りの人々の応援があってこそと、感謝の思いは強い。普段は保育園の送り迎えやインストラクターの仕事にも追われるが、今回ばかりは実衣菜ちゃんを鹿児島の母のもとにあずけ、練習に集中する。幸い、実衣菜ちゃんも「全然、大丈夫」と健気に言い、ママの世界戦決定を喜んでくれたという。一番の「理解者」のためにも、吉田は勝利を誓う。
取材◎藤木邦昭