5月25日(日本時間26日)、アメリカ・フロリダ州キシミーのオセオラ・ヘリテージパークで行われたWBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチで、チャンピオンの伊藤雅雪(28歳=横浜光)が9位の挑戦者、ジャメル・ヘリング(33歳=アメリカ)に0-3の判定負け。2度目の防衛はならなかった。採点は110対118が二人と112対116。伊藤はこれで28戦25勝(13KO)2敗1分となった。ヘリングは22戦20勝(10KO)2敗。

上写真=ガードのインサイドに滑り込んでくるヘリングの右。これも邪魔なブローだった

 戦没軍人を称える国民の祝日メモリアルデーの週末。元海軍兵のヘリングには多くの支持者が集まった。チャンピオン伊藤にとってはトップランク社との契約第一戦だったが、雰囲気ははっきりアウェー。そんな中で、早い段階から不穏な空気は流れた。長身サウスポーであるヘリングの右ジャブ、左ボディブローにペースをつくられる。戦前から警戒していた左ボディは、やはり「巧かった」。伊藤自身、3、4回には「このままじゃまずいな、と」感じていた。「逃げられる、自分が追いかける」という避けたい展開にはまり、8回にはインファイトに巻き込んだが、続く9回には再び距離をとられた。初めて12回戦を戦うヘリングには疲れの色も見えたが、右を狙って出てくる伊藤をうまくかわし切った。

ヘリングの左ボディストレートは、伊藤にとってもっとも邪魔なブローだった

 乳幼児突然死症候群で失った愛娘アリアナの10度目の誕生日になるはずだった5月25日に世界王座に就いた元ロンドン五輪代表ヘリングは、「この勝利を娘アリアナにささげたい。イトウはタフなチャンピオンだったが、私はいつも世界タイトルを獲れると信じていた。今日はそれが実現した。メモリアルデーにそれが叶ったことで、それはより甘美になった」と語った。

 2012年のプロ転向後、存在感を示しているとは決していえなかったヘリングだが、この念願の世界初挑戦にしっかり仕上げてきた。控え室で、伊藤にベルトを返そう(世界のベルトは持ち回りではない)と、インタビューを遮らずにじっと待っていた姿も印象的だった。

伊藤の左がヘリングを襲う。しかしこの日の伊藤は、右からの入りに固執しすぎた感があった

 敗れた伊藤は「もっとファイトしてくると思っていた。こういう展開を予想すべきだったなと思う。(終わった瞬間)勝ったとも思わなかったが、負けた気もしない、そんな試合。サウスポーは苦手のつもりはなかったんですが。今後のことは、何も言えません。改善の余地はあると思いますが、自分に失望したところもあるので」と失意を隠せなかった。国を越えて存在感を放てる選手に。そう夢を掲げていた分、落胆は深いに違いない。しかし、世界チャンピオンになって「やっとボクシングがわかってきた」と話していた28歳は、この敗戦も大きな糧にすると信じたい。

かつて、アメリカ代表チームでともに汗を流したWBOウェルター級王者テレンス・クロフォード(右)が祝福

 またアンダーカードで行われたWBOスーパーフライ級インターナショナル王座決定戦、同級4位の江藤光喜(31歳=白井・具志堅スポーツ)と同級5位のジェイビエール・シントロン(24歳=プエルトリコ)の10回戦は、1回2分37秒、無効試合に終わった。

 衝撃の初回TKO勝ちから一転。WBO、競技役員たちが集合してビデオを精査した結果、試合は無効となった。

 経緯はこうなる。江藤の右一撃でシントロンがダウンし、足元がまったく定まらないままのプエルトリコ人を見てレフェリーが試合終了を宣言。江藤の初回TKO勝ちがコールされた。ベルトを肩に、次期世界挑戦権を手にしたはずの江藤は「ハッピーな気持ちです。早く家族に会いたいです」と喜びを表現したが、その後、シントロン側がダウンはバッティングによるものだと主張。ビデオ映像で、右パンチの前に江藤の頭部が当たっていることが確認され、裁定が覆った。

 シントロンは11戦10勝5KO1無効試合。江藤は、30戦24勝(19KO)4敗1分1無効試合。

 6月に行われる井岡一翔(Reason大貴)とアストン・パリクテ(フィリピン)のWBO王座決定戦の勝者への次期挑戦権がかかっていた今回の一戦。WBOはすでに江藤とシントロンの両陣営に、再戦をオーダーしている。 

 全11試合が行われた今興行では、日本にもなじみの深い元WBC世界スーパーフライ級チャンピオンのカルロス・クアドラス(30歳=メキシコ)が本格的なバンタム級転向第1戦で、ダニエル・ロサノ(29歳=アメリカ)を8回判定で下した。右のストレート、アッパー、左フックをコンスタントに当てて一方的に試合を進めたクアドラスは、80対72(二者)と79対73の大差で勝利した。戦績は42戦38勝(27KO)3敗1分。ロサノは22戦15勝(11KO)7敗。

 元IBF世界スーパーフェザー級チャンピオンのホセ・ペドラサ(30歳=プエルトリコ)は、アントニオ・ロサダ(29歳=メキシコ)に9回2分34秒TKO勝ちを収めた。ジャーボンタ・デービス(アメリカ)に世界王座を奪われた後、階級を上げたペドラサは、昨年12月にWBA・WBOライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に判定負けして以来の再起戦でもある。プエルトリコの俊才フェリックス・ベルデホを破って名を上げたロサダの圧力をかわし、巧みなコンビネーションで上下を叩くペドラサは、9回に左ストレート一撃でダウンを奪い連打でレフェリーストップを呼び込んだ。戦績は28戦26勝(13KO)2敗。ロサダは44戦40勝(34KO)3敗1分。

文_宮田有理子 Text by Yuriko Miyata
Photos by Mikey Williams / Top Rank

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