世界再アタックを目指すIBF世界スーパーフェザー級4位、尾川堅一(帝拳)は6日、東京・後楽園ホールでフィリピン・フェザー級12位のグレン・メデュラ(フィリピン)とノンタイトル10回戦を行い、メデュラの棄権によって4回終了TKO勝ちを収めた。

写真上=強烈な左でメデュラを攻める尾川

 立ち上がりからスピードとパワーで圧倒した。2回には長い左フックを脇腹に決めてダウンを奪い、3回にも連打を浴びせて対戦者を崩し落とした。その後も強打にさらされたメデュラは続く4回を終えてから、戦いを放棄した。

 圧勝だった。1年間のライセンス停止ののちのカムバック戦となった2月のロルダン・アルデア(フィリピン)戦は硬さも目立ち、判定勝ちにとどまったが、結果だけなら今回は文句なし。ただの一点を除くなら、些細な不安さえなく戦い終えた。

 その『ただの一点』とは、左目上のカットである。3回のダウンで戦意を喪失していたメデュラがレフェリーに促されて試合を続行したのはいいが、破れかぶれの大振りで、さらに頭をぶつけられのだ。「なめた程度。絆創膏を貼っておけば治ります」という程度ですんで事なきをえたが、余分であったことは間違いない。。

 それでも、尾川の表情は冴えなかった。会見も「中途半端でした……」の重い一言から始まった。やはりきれいに倒したかったのだ。

 本来ならこの日、尾川はIBF世界スーパーフェザー級の挑戦者決定戦を戦っているはずだった。ところが、対戦するアジンガ・フジレ(南アフリカ)が渡航書類の不備のために来日できず、9月に延期になってしまう。急きょ、フィリピンからメデュラを呼んでノンタイトル戦に変更されたわけだ。つまり調整試合、前哨戦になる。尾川は自分の力を実戦で試し、その上で次戦に向けてファンの興味を高める戦いをしたかったはず。だとしたら、満足しきれる戦いではなかったろう。

「左パンチ中心に組み立てていくはずでしたが、最後には右に頼ってしまいました」

 戦う意欲をなくし、無防備のまま抱きついてきたメデュラにも「ほんとうはあそこで本気で殴らなくてはいけなかったんでしょうけど」。きれいに倒して終わりたかったのだ。

「相手の心を折ったのだから20点くらいはあげてもいいのかな」

「2月(の試合)より、全然いい感じで戦えました、楽しんで戦えたし。ただ、自分の中で楽しみすぎました。それに、ところどこで気持ちがルーズになって集中力が切れていたかもしれません」

 ただ、もともとポジティブシンキングの尾川は、だんだんと前を向く。「倒した左ボディは収穫ですね」。「ある程度は左パンチで試合を組み立てることもできました」。「9月にはもっと自信をつけて、リングに上がりたいですね」。

 そのためにも評価できる自分だけをまず見たい。尾川にはもう世界を獲ること以外に、ボクサーとしての完成はない。一昨年冬、アメリカ・ラスベガスでのIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦で判定勝ちし、腰にしたベルトは今はない。身に覚えのない薬物使用の嫌疑から取り上げられた。だからこそ、だ。

「世界戦でも、挑戦者決定戦でも勝たなければ意味はないんです」

 この前哨戦、内容のいかんにかかわらず、尾川には確かに決意の結び目になったのだ。

文◎宮崎正博
写真◎小河原友信

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