日本バンタム級タイトルマッチ、チャンピオンの齊藤裕太(花形)対挑戦者同級1位・鈴木悠介(三迫)の10回戦は27日、東京・後楽園ホールで行われ、中盤戦からポイントを連取した鈴木が3-0の判定勝ちでタイトルを奪取した。齊藤は2度目の防衛に失敗し、試合後の控室でリングからの引退を明言した。

写真上=壮絶な打ち合いを繰り広げた鈴木(左)と齊藤

 鈴木にとっては、あまりに待たされたタイトルマッチだった。2年前の日本タイトル最強挑戦者決定戦に勝ちながら、毎年恒例のチャンピオンカーニバルへの出場規定や自らの負傷によって、指名挑戦権を行使できないできた。その間に決定戦に勝ってチャンピオンになっていたのが齊藤だ。初回からハイピッチで飛ばしたのは、待ち続けた男の意地だったかもしれない。

 立ち上がり、左ストレートを立て続けにヒットしたサウスポーの鈴木が、序盤戦を押さえた。懸命にピッチを上げようとする齊藤の努力が実るのは4回になってからだ。右ストレート一発で鈴木をぐらつかせる。これを契機にパンチングパワーで勝る齊藤の連打が主導権を握るようになる。多用するアッパーカットも効果的に見えた。両目上をカットしながらも奮戦するチャンピオンがこのまま押し切るのか。しかし、戦いはひとすじ縄にはいかない。

 6回だ。左目の腫れが目立ち始めた鈴木がドクターチェックを受けた直後、一気にスパートに入った。齊藤は力なく後退した。

「どうしたわけか、5回か6回から足がけいれんし始めて。それにどのラウンドかわかりませんが、左のボディブローが効いてしまいました」

 その後の齊藤は立ち直ることができない。動きはどんどん淡白になっていく。サイドへ、あるいはバックにとステップを切りながら左ストレート、右フックと放つ鈴木の恰好の標的になっていく。鈴木の顔も右側が大きく腫れ上がるが、ペースは落とさない。10回、齊藤のラストスパートもしのいで、そのまま勝利のゴールに走りこんだ。

画像: 悲願の王座奪取を成し遂げた鈴木

悲願の王座奪取を成し遂げた鈴木

 試合後、鈴木は精密検査を受けるために病院に急行。一方、敗れた齊藤はほっとした表情のまま完敗を認める。そして決意も明かした。

「これで終わりです。負けたら引退と決めていました。いいボクサー生活でした。新人王戦でMVPをとったり、最後にチャンピオンになれたり、本当にラッキーでした。長女が生まれて4人家族になりましたし、これからはふつうのパパになります」

画像: 試合後、齊藤は花形ジムのスタッフに長年の戦いを労われた

試合後、齊藤は花形ジムのスタッフに長年の戦いを労われた

 笑顔で振り返る齊藤の傍らで、花形進会長は「よくやったよ」と何度となく繰り返していた。終身成績25戦12勝(9KO)10敗3分。傷だらけになりながらもリングに残したその戦歴は、齊藤裕太という男の一生の宝になる。

文◉宮崎正博
写真◉椛本結城

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