7月31日、東京・後楽園ホールで東日本新人王準々決勝全10試合が行われ、9月26日、27日の両日、同会場で開催される準決勝進出を争った。今年4月の新人王初戦から3連続KO勝ち、昨年8月のデビュー以来、5戦全KO勝ちを飾ったのがバンタム級の竹田梓(たけだ・あずさ/高崎)。昨年の東日本新人王戦で決勝まで勝ち上がったサウスポー、ビバリー塚田(ワタナベ)を鮮やかな左アッパーで2度キャンバスに這わせ、2回1分14秒TKO勝ちを収めた。

KOは意識しないが
「自然とパンチが出る」

 まだ4回戦の新人がなかなか打てるような左アッパーではない。初回途中に一度顔を跳ね上げ、タイミングをつかんでいたのだろう。塚田が出てきたラウンド終了間際、その入り際をものの見事に捉え、ガクリとヒザを着かせた。相手の攻めはダッキングやブロッキングでしっかりかわすなど、試合運びは実に冷静。2回のフィニッシュもロープ際で迎え撃ち、この試合、3発目の左アッパーを決める。ゆっくりと塚田が崩れ落ちるのと同時、レフェリーがストップした。

 KOは「特に意識はしていない」という。それでも「勘のよさ」には自信がある。「狙ってなくても、フッとよけたとき、ここで入るなっていうのを感じて、自然とパンチが出るんです」。

 勝利の瞬間、「ウォーッ!」と言葉にならない雄叫びを上げた。

「僕のなかでは勝ったあと、『なんてことねえよ』って感じで(クールに)やりたいんですけど、練習の辛さとかがあって、どうしても」

 照れくさそうに笑い、「冷静にやるのがスポーツマン。次回は気をつけたいと思います」と殊勝に続けた。色白の22歳の若者がリングの上では自分ではない自分になる。

「リングに上がる直前までは『できる、できる』『勝てる、勝てる』って自分にしゃべりかけて。でも、リングの下とは違って、上は別世界。リングに上がっちゃえば、落ち着いて、自分のできる限りをやるだけなんで」

「若いときは2度ない」ーー
会長の言葉を信条に

 神戸生まれ。家族と横浜、栃木と移り住み、幼稚園のころから空手を続けてきた。ボクシングは中学2年のときに引っ越した群馬で始めた。それから一心不乱に打ち込んできたわけではない。プロテスト合格後、一度ジムを離れたことがあった。「結局は1回、2回勝って、それで終わりなんだろうなって、自分のなかで諦めてしまって」。ジムの期待を裏切った思いがあった。だが、「もう一度やりたい」とジムに戻ると、森田良治会長、小松進一チーフトレーナーは温かく迎えてくれた。大きな未来は口にしない。ただ、その恩を「勝って、返したい」とだけ言った。

「あそこで受け入れてもらえなかったら、仕事をして、ご飯を食べて、寝て、その繰り返しだけの人生だったと思うんです。僕は別に勉強ができるわけでもないし、仕事がすごいわけでもない。でも、ボクシングはこうして勝てている。僕の人生を明るくしてくれたのかなと思います」

 都心のジムと比べ、練習環境に恵まれない地方のジム。ふだんは正社員として工場で働く。今回は予定が合わず、出稽古もできないなかでの調整。現役時代、高崎ジムから日本タイトルに3度挑戦したサウスポー、小松トレーナーとのミット、同門で4階級上のライト級で戦う4回戦ボクサーとのスパーリングで左対策に取り組んできた。環境は言い訳にせず、これからも「目の前のことをやり遂げたい」という。

「森田会長がよく言ってくださるのは『若いときは2度ない』ということ。そのとおりだと思うんで、今、自分にできることをできる限りやりたい。そう思っています」

 ジムから東日本新人王誕生となれば、2002年ウェルター級の新井恵一以来、17年ぶり。全日本新人王は1983年度スーパーフェザー級の神保通夫以来、実に36年ぶり2人目となる。

※東日本新人王決勝は11月3日に行われ、その勝者が12月22日、西日本、中日本、西部日本新人王の間で争われる西軍代表決定戦の勝者と全日本新人王決定戦を戦う。会場はいずれも後楽園ホール。

取材・文◎船橋真二郎

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