先週のこのページで大いに宣伝した五輪連覇のフェザー級、ロベイシー・ラミレス(キューバ)がプロ初戦でまさかの敗北。初回にダウンを食らい、自信を持った対戦相手に押しまくられての完敗だった。いや、ボクシングは何が起こるかわからない。さて、今回のウィークエンド・プレビューはやや夏枯れ気配。それでも、スーパーバンタム級の新エース候補エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)の防衛戦など、注目のカードはしっかりとある。

写真上=エマヌエル・ナバレッテ(右)

8月17日/バンク・オブ・カリフォルニア・スタジアム(アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス)

★WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦
エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)対フランシスコ・ダバカ(アメリカ)
ナバレッテ:24歳/28戦27勝(23KO)1敗
ダバカ:24歳/20戦20勝(6KO)
※ESPN+で全米中継

 ナバレッテの存在感がぐんぐんと高まっている。次期スター候補とも目されていたアイザック・ドグボエ(ガーナ)に、戦前の予想を大きく覆して判定勝ち。それだけでもびっくりなのに、再戦ではもっとはっきりと、ワンサイドのTKOに仕留めた。ずっとメキシコ国内で中堅クラスとばかり戦ってきた男が、今や「スーパーバンタムの4王座をまとめるかも」とアメリカの多くのメディアが持ち上げている。

 細身の体はやや頼りないが、長い距離を作り、ポンポンと多彩な攻撃を仕掛けていく。うるさいほどの動きと183センチのロングリーチが作る攻撃は角度豊か。よどみなく次々に繰り出してくる攻撃はまるでコンビネーションのデパートのよう。一発のパンチはなくても、対戦者にとってはまったくの脅威だ。

 ダバカはメキシコ生まれのアリゾナ育ち。ここまで目立った戦歴を残していたわけではない。スターダムへのスタートラインを飛び出したナバレッテが、さらに加速するためのマッチメイクという評がもっぱらだが、ナバレッテだって1年前はほとんど同じような評価だったのだ。

 さて試合場のバンク・オブ・カリフォルニア・スタジアムは過去2度のロサンゼルス五輪でメイン会場となったメモリアルコロシアムに隣接するサッカー場。キャパシティは2万2000人。真夏の夜に、メキシカン・ニューヒーローがどこまでかっこよく勝てるのかが焦点だ。

◆2階級制覇狙うマグダレノにタフなテスト

画像: ジェシー・マグダレノ

ジェシー・マグダレノ

 前座カードもなかなかの顔ぶれだ。

 ドグボエにKO負けしてWBO世界スーパーバンタム級王座を失う以前は、ジェシー・マグダレノ(アメリカ/27歳/26勝18KO1敗)こそが期待の中心地にいた。元気のいい戦いが売り物のサウスポーは、ノニト・ドネアを破って、自ら上昇気流を巻き上げて見せた。ところが、負傷とドグボエ戦のダメージで長いブランクが重なり、すっかり第2集団に沈んでしまった。現在はフェザー級で戦っているが、今回の相手ラファエル・リラ(メキシコ/25歳/27勝18KO3敗2分)は今後の展開を考える上で、大事な試験用紙にもなる。ここ2年間で3敗しているが、その相手はレオ・サンタクルス、ジョセフ・ディアスに不敗の新鋭ジョエット・ゴンサレス。ゴンサレスとはクロスファイトで、サンタクルス、ディアスには一方的な敗北もよく粘り抜いた。マグダレノも少なくとも大差をつけないことには、明日のチャンスにありつけない。

 スーパーライト級10回戦のアーノルド・バルボサ・ジュニア(アメリカ/27歳/21戦21勝8KO)は、原田門戸の名前で日本のリングに立っていたリッキー・シスムンド(フィリピン/32歳/35勝17KO14敗3分)と対する。不敗の連勝を続けながらも決定打不足がささやかれたバルボサだが、前戦ではベテランのマイク・アルバラード(アメリカ)を痛烈にKOした。シスムンドも頑丈さでは知られるが、このところ3連敗。バルボサは強打開眼の本格化を印象づけたい。

画像: ヤニベク・アリムハヌリ

ヤニベク・アリムハヌリ

 ヤニベク・アリムハヌリ(カザフスタン/26歳/6戦6勝2KO)はミドル級10回戦に出場。世界選手権優勝、五輪代表というアマチュア実績が示すようにハイレベルなサウスポーで、攻撃も鋭い。だが、最初からキャリア豊富な強敵続きのせいか、なかなかKO勝利につながらない。メキシコとカナダを往復しながらキャリアを積んできたスチュワート・マクラレン(カナダ/32歳/27勝11KO3敗3分)にはどんな勝ち方になるか。

まだまだあるぞ!注目カード

◆不敗のサウスポー、フォスターはキックの元王者と

 総合格闘技のUFCがボクシング進出を狙っているという。MMA最大手のトップ、ディナ・ホワイトは、自信が熱心なボクシングファンだと公言してはばからない。そのUFCのストリーミングチャンネル『UFCファイトパス』でも定期的にボクシング中継を実施している。

 17日の放送はアメリカ・マサチューセッツ州スプリングフィールドのMGMスプリングフィールドから。メインイベントではチャールズ・フォスター(アメリカ/29歳/18戦18勝9KO)が保持するNABA北米ライトヘビー級タイトルの防衛戦を行う。フォスターは実にきれいなボクシングをするサウスポーで、よくしなう上体を利した守りの強さ、シャープな左ブロー、そして角度のいい右フックを持つ。あまりにまとまりすぎの感もないではないが、きっかけをつかめば十分にトップを狙える素材だ。

 挑戦者のデニス・グラチェフ(ロシア/37歳/19勝10KO7敗1分)はもとはと言えばキックボクサー、K1ルール、ムエタイルールなんでもこいで3度も世界チャンピオンになっている猛者だ。国際式転向当初は話題をまいたが、鳴りをひそめて久しい。フォスターの使命はこのグラチェフを一方的に打ちのめして、トップクラスにアピールすることのみ。

◆剛腕フェイゲンブッツがマイナー世界戦

画像: ビンセント・フェイゲンブッツ

ビンセント・フェイゲンブッツ

 若きスーパーミドル級スラッガー、ビンセント・フェイゲンブッツ(ドイツ/23歳/30勝27KO2敗)が17日、ドイツのルートヴィヒスハーフェンでマイナー団体のGBU世界タイトルの防衛戦を行う。挑戦者はセサール・ヌネス(スペイン/34歳/16勝8KO1分)だ。

 メジャーのWBAタイトルを失って3年。フェイゲンブッツは自慢の強打で倒しまくり、以前の勢いを取り戻しつつある。ややがさつなところもあり、トップレベルと戦えばどうかとなると微妙だが、ローカルファイトで何とか勝ち星を積み上げたヌネスなら、簡単に打ちのめしたいところ。

 前座にはヨーロッパレベルの元アマチュア強豪がずらりと登場する。その中で注目したいのは17歳の女子フェザー級、ゾフィー・アリッシュ(ドイツ/3戦3勝1KO)。天才少女ボクサーとして売り出されている。この日の6回戦は肩慣らしに過ぎないが、あるいは陣営はこの先を見越しているのかもしれない。というのも、8回戦にはノルウェーからカタリーナ・サンデルス(31歳/11戦11勝2KO)を呼んで試合を行わせる。若いゾフィーにも次戦あたりで、このサンデルスと不敗対決を戦わせ、最初のヤマを作ろうとしているのか。

 プロモーターはドイツ・ボクシング全盛期の大立役者ヴィルフリート・ザウアーラント。試合地ルートヴィヒスハーフェンは世界トップの総合化学品メーカーの拠点。さまざまな化学反応を試みる?

◆過酷な英才教育にアピチェットは耐えられる?

 タイ期待のライト級、アピチェット・ペッチマネー(29歳/4戦4勝2KO)が、17日、自国のブンチュンで10回戦を行う。

 WSBに出場したこともあるアマチュアスター、アピチェットは29歳にしてのプロデビューという事情のせいなのか、従来のタイ方式の育成ラインとはちょっと違う。ムエタイの強豪のようにいきなり世界戦とか、それともひたすら無名と戦わせて勝たせ続ける最近の傾向とか、そういう路線とは違う。

 デビュー戦でいきなり13戦全勝の同国人と8回戦。2戦目にOPBFシルバーのタイトルマッチを行い、3戦目にはWBCアジア・シルバー、そして今度はWBCアジア・レギュラーの王座決定戦だ。

 しかも、今回の相手はビッグネームだ。スリヤ・タタクン(タイ/34歳/61勝41KO4敗)と言ってもピンとこないかもしれないが、リングネーム、チョンラタン・ピリャピニョと聞けば熱心なファンなら『ははん』とくるはず。デビュー以来の43連勝をマークし、過去3度の世界戦を経験している。ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)には痛烈にストップされたが、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、クリス・ジョン(インドネシア)には判定まで粘り切った。

 スタイリッシュなボクシングが魅力のアピチェットだが、この最初の難関を乗り越えられるのか。

文◎宮崎正博
写真◎ゲッティイメージズ

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