昨日24日、愛知県名古屋市の武田テバオーシャンアリーナで1位のジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)を7回TKOで下し、WBO世界フライ級王座の2度目の防衛に成功したチャンピオン田中恒成(畑中)が25日、名古屋市内のCBCテレビで一夜明け会見。フライ級王座では初めてのKO勝利には満足したものの、内容については反省の弁を繰り返した。

上写真=左目周囲が少しだけ腫れている王者・田中。結果にはホッとした表情だったが……

会見前、畑中会長とともにふるまわれた祝い酒で「乾杯!」。もちろんチャンピオンは口をつけず

「テーマを『スピードと距離』なんて言っていて、そこが全然ダメでした。これがいまのオレの実力です」。田中は自虐的に語りながら苦笑を浮かべた。

 記者として、第三者として見ていても、個々のパートそれぞれでゴンサレスとは大きな開きがあった。「最終的には総合力の戦いになる」と宣言していたとおり、そこで大きく上回っていた。だからこそ、本来持ちうる自由奔放なパフォーマンス、そして「ニューバージョンの田中恒成」を見たかった。

「8月に入って1週間くらい熱を出して減量が遅れた」というコンディショニングの影響なのか、それとも、「相手が遠く感じた」ことで気持ちが急いて、強引に右で捕まえに行ってしまったのか。「潰しに行こうと思えば、いつでも潰せると思う。けれど、それはやりたくない。我慢して“塩試合”の展開を続けたい」と戦前語っていたが、リズム、テンポの悪さはスタートから明らかだった。

「当日になって、コンディションが良くない、スピードが出ないと感じて、入場のときも迷っていた。試合の途中まで『押し潰しに行っちゃおうかどうしようか迷っていた』」と言い、彼の中での最終手段に早々にシフトしていったのだ。

 彼はおそらく、ボディを攻めれば倒せる確信があったはず。だが、そうではなく、もっと幅の広い、引き出しの多い、縦横無尽なボクシングを見せたかったはず。その“自分のプライドとのせめぎ合い”が葛藤と迷いを生んだのだろう。

 オーソドックスがサウスポーに対峙する手段として、“右をリードブローとして使う”かたちがあるが、昨日の田中恒成は、“いきなりの右を強く長く打ち込もう”ということに固執しすぎた。スタンスのベースとして「4:6」、つまり後ろ重心を徹底して作り上げ、このかたちはキープできたが、それが右を打つ際のスムーズさを欠いたかもしれない。右ストレートを打ち込んでいってはときにバランスを崩し、そこを狙い打たれる場面もあった。

「試合では出せなかったが、取り組んできた練習は無駄ではない」。ジムワークで披露してくれる“スペシャルな姿”を、世界中のボクシングファンに見てほしい。記者は切に願うのだ

 今回のトレーニングでは、本来、彼を一流たらしめている“左”を徹底的に磨いていた。多彩なフェイントや多角的かつシャープに放つ左は、ファインダーを覗いているこちらを惚れ惚れとさせた。しかし、いざ本番では左リード、ジャブは極端に少なく、こちらの欲求は満たされなかった。
「右が当たるから。左を痛めていたわけではありません」と彼はその理由をひと言返してきたが、その“前の手”を自在に操るボクシングを見たいという欲望は、決して高すぎる期待ではなかったはずだ。

「昨日は出すことができませんでしたが、今回の試合に向けて取り組んできたことは収穫。レベルアップできたと思う」と本人も反省と自負を併せ持つ。

 断じてサウスポーが不得手なわけではない。引き出しが多いからこそ、迷いが生じる面もあろう。けれど、田中恒成を起動するのは“ジャブ”。冷静にシンプルに考え、そこを見つめ直してほしい。内容に納得できていない自身の気持ちを大切に持ち続けてほしい。

「次戦は年内にもう1試合やりたい」と畑中清詞会長は語った。
その試合に向けて、ふたたび動き出すとき、田中恒成がどう語るか。動きで何を語りかけてくるか。その日を楽しみに待ちたい。

文&写真_本間 暁

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