源大輝(ワタナベ)の返上で空位になった日本フェザー級王座は13日、東京・後楽園ホールで同級1位・阿部麗也(KG大和)対2位・佐川遼(三迫)の10回戦で争われ、僅差ながらも3-0の判定勝ちを収めた佐川が新チャンピオンとなった。阿部は2度目のタイトル挑戦に失敗した。

写真上=佐川(右)の右ストレートが阿部を襲う

 ジャッジのスコアを見れば96対94が2者に96対95が1者。採点上は確かに競っていても、内容的にはかなりの差があった。佐川は「(阿部の)いくつかのパターンを考えて練習してきた」ことがピタリとはまった。一方の阿部は「試行錯誤を重ねているうちに、どんどんラウンドが重なっていって」、いつの間にか敗勢の真っただ中にいた。

 思いどおりにペースメイクできたサイドと、迷ったままさまよい続ける側。日なたと陰を振り分けたキーワードは『距離』。長身で、リーチのある佐川は、サウスポーの阿部に右ストレートの長槍を見せつけて、なおさら遠さを演出していく。阿部はこの佐川に対してあまりに策がない。対戦者の右をダックして、リターンの左、あるいは右フックと返すが、むろん、『距離』を意識して戦う佐川に届くはずもない。

 阿部からすれば、もうひとつ『行けない』理由があったのかもしれない。4ヵ月前、タイトル初挑戦となった源戦。阿部は初回の2度のダウンで失ったポイントを挽回しきれずに引き分けに終わっている。「無理しちゃいけない」。無意識の警戒感が悪循環を呼んだのか。それは中盤以降の展開に、微妙に影を落としていく。

◆後半戦も佐川がペースを握ったまま

 長い距離を互いが意識し、火花ひとつ散らない展開となった前半戦。わずかにテンポを上げた阿部が4ラウンドを押さえ、続く5ラウンドは佐川が盛り返す。5回を終えて発表された採点は全員が48対47ながら、2-1で佐川のリード。つまり、阿部が勝つためには残り5ラウンドのうち、4ラウンドを取らなければならない。なのに第6ラウンド、阿部は出なかった。佐川の右を軸にした攻めを漫然と見送ってしまった。

 ならば、7ラウンドから、阿部は苦汁をがぶ飲みする覚悟が必要だった。わずかながらでも、確かに阿部は攻勢を強める。だが、もうひとつ中途半端。源戦のダウンの記憶がうっすらとでもまとわりついていたかのように。佐川に右ストレート、左フック、さらにボディブローと切り返されると、もうそれ以上、迫ることはできなかった。

 最終回、阿部はやはり源戦のように懸命に出る。佐川のペースも乱れるが、間合いを崩しきれず、肝心な一打は空転した。

「アマチュア時代から、頂点に立ったことがないんで。実感がないのですが、うれしいです」

画像: 初のベルトを巻いた佐川

初のベルトを巻いた佐川

 さして期待されてプロ入りしたわけではない。2戦目にはKO負けも経験している。それでも9戦目(8勝4KO1敗)でのタイトル獲得。朝、寝床の傍らに確かにあるベルトを見て、佐川は初めて歓喜を爆発させるのかもしれない。

一時は日本ボクシング界のエース候補だった阿部は、この足踏みを彼自身がどう受け止めるか、だ。ぐんぐん成長していたころは、攻防にもっとたくさんの引き出しがあった。対戦者のレベルが上がったから、もっと深い解釈を求めるのではなく、この際、これまで作ってきた引き出しの全部を開けてみればいい。そうすれば思い出すこともあるはずだ。対戦者のパンチにのたうった敗北ではない。戦法を読み違って選択ミスをしたと考えるなら、復調は案外、速やかではないのか。その能力を惜しんで、あえてエールを送りたい。

文◉宮崎正博
写真◉菊田義久

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