21日、東京・後楽園ホールで行われたウェルター級8回戦でアフガニスタン出身の21歳、日本ウェルター級3位のクドゥラ金子(本多=本名クドゥラ・トゥラ)が日本タイトル挑戦経験もあるベテラン、35歳の同級11位・尹文鉉(ドリーム)に2回3分9秒KO勝ち。デビュー以来、無傷の11連勝(8KO)を飾った。

上写真=試合巧者・尹が吹っ飛ぶようにダウン

 初回、尹のタイミングをずらしてくる左ジャブ、フックをところどころにもらったクドゥラだったが「(尹は)パンチがなかったから」と、2回には自信を持って、接近戦を挑む。頭をつけ合うようにしてコツコツと左右のアッパーを集めていたクドゥラはラウンド終了間際、4連打を効かせると、フォローの連打でノックダウン。尹は立ち上がったものの、レフェリーのビニー・マーチンは10カウントを数え上げた。

 現日本同級王者の永野祐樹(帝拳)に対し、強打の新星は「いつでも準備はOK。早くやりたい」と腕を撫すが、遠回りを強いられた。

 元日本王者の有川稔男(川島)をセンセーショナルな3回TKOで退けたのは昨年11月。日本上位ランカーに躍進し、今秋の最強挑戦者決定戦から来春のチャンピオンカーニバルでの日本タイトル挑戦に照準を合わせていた。ところが世界挑戦経験もあり、実績豊富な小原佳太(三迫)が最強挑戦者決定戦への参戦を決めたため、出場は叶わず。「悔しかった」と率直に振り返る。

ボディ打ちの上手い尹のお株を奪うような左ボディブローを決めるクドゥラ。初回終盤まで、ロングブローをミスする場面が続いたが、終了間際にショート連打で攻め、2回に入っても、ショートの強打を多角的に決めた。実に頭のいい選手だ

 が、28戦(18勝4KO7敗3分)のキャリアで一度もKO負けのなかった老獪な尹を倒し、着実に経験を積んだ。本人の口からは明かされなかったが、8月中旬には左手小指を剥離骨折し、スパーリングも思うようにできなかった。9月上旬には台風15号の影響で千葉・四街道の自宅が3日間停電。眠れない夜を過ごすなど、調整段階の苦闘を乗り越えての勝利は、若いクドゥラの今後に必ず生きてくるに違いない。

金子実チーフトレーナーとともに。会長、トレーナーにとっては宝の“息子”だ

 母国ではテロの影に怯え、未来など描けなかった少年が、13歳のときに家族とともに日本に移住し、初めて描くことができた夢かボクシングの世界チャンピオン。「たくさんお金を稼いで、アフガニスタンの子どものたちのために学校を建てたい」というクドゥラの夢に「青写真は崩れましたが、しっかりチャンピオンロードに戻してあげたい」と本多正孝会長も寄り添う。クドゥラも「これからもいいチャンスをつかめるように頑張るだけ」と前を向いた。

文_船橋真二郎
写真_馬場高志

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2019年10月号


This article is a sponsored article by
''.