鮮やかな左フック一閃──。10日、東京・後楽園ホールで行われたWBOアジアパシフィック&OPBF東洋太平洋ライト級王座決定戦に臨んだ日本同級チャンピオン吉野修一郎(28歳=三迫)が、WBO・AP9位、OPBF10位のハルモニート・デラ・トーレ(25歳=フィリピン)に初回2分10秒TKO勝ち。一挙に東洋圏のベルトをふたつ獲得し、日本と合わせて3冠王者となった。

上写真=絵に描いたようなワンパンチKO!

 開始から勢いよく左右フックを叩きつけ、さらには真ん中に左右のストレートを伸ばしてきたデラ・トーレ。吉野は両腕のガード、グローブでそれを受け止めていたのだが、そこを突き破らんばかりの勢い。だが、直撃弾をもらわないことが肝要。腕、あるいはグローブに少しでも当てれば、威力は弱まるからだ。「(相手の)スピードは想像以上だったけれど、パンチの威力はそれほどでもなかった」と吉野は言うが、それは自らがその威力を殺していたからだ。

 デラ・トーレの突撃に、吉野は下がらされている。会場の誰もがそう思ったが、吉野、そしてセコンドはそれを戦略だったと語る。

「序盤、相手が出てくるのはわかっていました。だから、最初は打たせておいて、しっかりガードで防いで、自分もプレスをかけながら疲れさせたうえで、中盤以降に攻めていこうと」(吉野)

 デラ・トーレは、吉野に顔面への意識を持たせ、右フックを吉野の左サイドボディへ2発叩きつける。吉野はグローブで「背中(の反則打)」をアピールするが、なおも攻め入るデラ・トーレへ左フック一閃。

 これがフィリピン人のアゴを打ち抜くと、そのまま横倒しになって失神。レフェリーが即座に試合をストップした。

 控室のアップ段階でも「手首が返っていて、打ち抜きが利いていた」と椎野大輝トレーナーもその威力を感じていたという一撃だ。

 まるで劇画のようなワンパンチKOに、会場は騒然。これで7連続KO勝利となった“フィニッシャー”へ、大いなる賛辞の声援と拍手が贈られた。

「中盤で倒すつもりが、早かったのでびっくり」と吉野本人。だが、「パンチ力には自信がある」とも
写真_藤木邦昭

 吉野は8月下旬から9月上旬にかけて、同僚の先輩・小原佳太とともにアメリカ・ロサンゼルスで合宿。強豪と何度も手を合わせ、「日本にはない戦い方を知り、いい経験ができた」と、層の厚い本場のボクシングを体感した。また、ロス行きの前には3階級制覇のホルヘ・リナレス(帝拳)ともスパーリングし、世界の超一流のスピードを味わった。だから、思ったよりスピードのあるデラ・トーレにも、「試合をやってみて、雑な選手だと感じた」と、すぐに対応できたのだろう。

 今後は、3冠すべてを保持していくのか、それともどれかを返上するのかは未定。三迫貴志会長は、「本人が希望するように海外での試合も考えたい。キャリアも積ませたい。でも、日本国内での戦いも重要。『われこそは吉野を倒してやろう』という選手、ウェルカムです」と、自信満々に語った。

取材・文_本間 暁
写真_菅原 淳

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2019年11月号


This article is a sponsored article by
''.