WBA世界ミドル級チャンピオン、村田諒太(帝拳)は16日、東京・九段のホテル・グランドパレスで記者会見を開き、12月23日、横浜アリーナで9位のスティーブン・バトラー(カナダ)を相手に初防衛戦を行うと発表した。バトラーはWBAでこそ下位だが、WBOでは1位にランクされる24歳の強打者。村田は「ボクサーとしてかなえたい夢がある。この試合をその第一歩にしたい」は語った。なお、この日は拳四朗(BMB)対フェリックス・アルバラード(ニカラグア)のWBC・IBF世界ライトフライ級王座統一戦、八重樫東(大橋)がモルティ・ムザラネ(南アフリカ)に挑むIBF世界フライ級タイトルマッチがアンダーカードに組まれている。

 7月、ロブ・ブラント(アメリカ)を2回でストップし、劇的に王座を奪還。再びトップに回帰した村田のさらなるビッグなチャレンジをも視野に入れて、その初防衛戦の相手は、さまざまに注目を集めていた。海外メディアでは、あのマニー・パッキャオ(フィリピン)を破った元ウェルター級WBA王者ジェフ・ホーン(オーストラリア)が内定していたと報じられていたが、前哨戦で敗れてリストから消え、いよいよ誰が選ばれるかわからなくなっていた
 

 そして決まったのがバトラーというのも驚いた。つい数日前、WBO本部から同団体のミドル級チャンピオン、デメトリアス・アンドレイド(アメリカ)に指名防衛戦の実施を通達したばかり。その指名挑戦者というのが、バトラーだったからだ。この記者会見にバトラーとともに出席したプロモーターのカミーユ・エステファン氏は言った。

「いろいろな話があったが、ムラタに挑むのが一番、エキサイティングな試合ができると考えた」
 いろんな意味で優遇を受ける指名挑戦者の権利。さらにWBO王座に挑めば、アンドレイドが契約するDAZNはファイトマネーをとびきりはずんでくれるはず。それを蹴ってでも、日本に飛んで村田と対戦するのは、揺るがぬ自信があればこその決断だろう。
 

「次のステージへの第一歩になる」と村田

  受けて立つ村田は、ほんのり険しい表情で決意を語った。
「(バトラーについては)好戦的というイメージ。WBOの指名挑戦者だから、そんな相手に勝てば、世界的評価も上げることになります」
 

  ただし、目指すのはここではないとも言い切った。
「自分の気持ちに素直でありたい。ボクサーの中のトップに立ちたい。その気持ちがモチベーションを作ってくれます」
 

 もちろん、この先の行方ばかり見ていて、気持ちを先走らせることはない。

「負けたら(キャリアは)終わるでしょう。先ばかり見ていてもだめ。まずはこの試合だけを見つめたい。夢は結果の後についていくものです。これから2ヵ月、心と体を鍛えつくします」
 

 確かにバトラーは安易な対戦相手ではない。ここまで30戦28勝(24KO)1敗1分の戦績のとおり、シャープな左ジャブで間合いを取ってから、打ち込んでくる右ストレートには一撃KOの破壊力を秘める。
 

 祖父のマーシャルはプロボクサーだった。プロ8戦目でイギリスに遠征。後に名選手、ホセ・ナポレス(メキシコ/キューバ)にTKO勝ちしてWBC世界ウェルター級王者となるジョン・H・ストレイシー(イギリス)に24戦目での初黒星をつけた英才だった。その血を受け継いだ孫のスティーブンもアマチュアでボクシングを始め、2013年にカナダ選手権に優勝すると、18歳でプロに転向した。注目のホープ対決で、ブランダン・クック(カナダ)の一世一代の右カウンターでTKO負けを喫しているが、その後10連勝(9KO)と勢いを取り戻してきた。

「レジェンドになるための扉になる」。バトラーの決意の言葉は村田とまったく同じだった

「ムラタは偉大な選手だと思う。けど、僕とは目を合わさなかったから、怖がっているのかな」とまずは軽く挑発。村田はブロッキングに定評があるが、と問われると、「いくらガードを固めていても、パンチは当たる。当たれば倒せる」と自信を示した。そして、「12月23日に私がレジェンドになるための新しいストーリーが始まる」と締めくくった。

 もちろん油断はできないが、村田がバトラーのジャブを殺し、ブラントとの再戦で見せたようなビートの利いたアタックで攻めきれれば、優位の予想は動かない。期待感をも込めて、巷間にちらほらと舞う、さらなる高みにあるスーパースラッガーとの対戦に、現実味を加えるためにも、圧巻の勝ちっぷりも義務付けられる。

文_宮崎正博
写真_山口裕朗

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