23日(月)、横浜アリーナでIBF世界フライ級王者モルティ・ムザラネ(37歳=南アフリカ)に挑戦する元WBAミニマム、WBCフライ、IBFライトフライ級の3階級制覇王者・八重樫東(36歳=大橋)が10日、練習を公開。ハードワークをこなして、大量の汗を流した。

上写真=松本トレーナーの持つミットに、右のハードパンチを炸裂させる

試合間近にもかかわらず、八重樫の表情は普段どおり柔和

「こんなにやって大丈夫か?」。報道陣が心配するほど、八重樫はハードなトレーニングを繰り広げた。ベンチに両足を乗せて、腕を畳まない腕立ちはなんと7分! 汗はフロアにボタボタと落ち、丸太のような腕はついに小刻みに震えだす。さすがの八重樫も、うっずらと苦悶の表情を浮かべる。しかし、視線に築いた八重樫は「あ、5分でやめるつもりだったのに(笑)」と笑顔で軽口を叩きながら、それでも“ノルマ”をしっかりとやりきり、さらにパワーマックスへと進む──。

 試合まで2週間を切っての、いまだ苦行僧のようなトレーニング。「オーバーワークでは?」と思ってしまいそうな凄まじい練習メニューなのだが……。
 プロキャリア15年、これまでもオーバーワーク、リカバリーミスなど、様々な経験を重ねてきただけに、彼なりの考えがあるはず。なんの心配もいらない。

 ミラン・メリンド(フィリピン)に初回TKO負けという衝撃的な王座陥落から2年半。「あの当時に、いろんなものを忘れてきたけれど、だいぶ取り戻せてきた。それが新鮮」と、嬉しそうに語る。
 スパーリング開始当初は、大橋秀行会長、松本好二トレーナーともに「心配になった」というほど、調子が上がらなかった。しかし、それはまだ、八重樫の心の中で戦い方などに迷いがあったため。試行錯誤を繰り返し、いまは完全に吹っ切れた。「やるべきことをやって、あとはコンディションを当日にピークに持っていくだけ」と、走り続けるのみだ。

画像: 「一緒にやりませんか?」。張り合う相手がいないと──と、八重樫は報道陣に声をかけたが、結局ひとりで反復横跳び

「一緒にやりませんか?」。張り合う相手がいないと──と、八重樫は報道陣に声をかけたが、結局ひとりで反復横跳び

 ムザラネはかつて、井上尚弥の対戦者候補だった前WBOバンタム級王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)、そのテテを倒して新王者になり、一躍尚弥のライバルとなったジョンリール・カシメロ(フィリピン)をいずれもKOしている。近年は、技巧派としての地位を確立しており、「技術、ファイティングスピリットともに実力者同士のぶつかり合い。いい試合になるのは間違いない」と大橋会長も確信している。

「顔は腫れると思います。でも顔面で戦うわけじゃない。“被弾”は勝利への布石」と八重樫。決して玉砕戦法などではなく、八重樫なりの、ムザラネ攻略のための戦法。これは、当日のリングでの戦いぶりを楽しみにしたいと思う。

ボタボタと滴る汗が、フロアに湖をつくりだす

「いろんなプランを立てて、どこがハマるか、ハマらないか。風を感じて戦いたい」

 八重樫は、同郷の後輩で親交の深い元WBC世界スーパーフライ級チャンピオン佐藤洋太さん(現在、盛岡市内で焼肉店『チャレンジャー』を経営)の言葉を、常々引き合いに出して言う。

「洋太はいつも『オートマ(オートマティック)で戦う』って言ってましたよね。僕もそのオートマで行きたいんですよ」。

 高校1年でボクシングをスタートしてから数えれば、もう20年を超えている超ベテラン選手。「その経験は、僕にとってなによりの財産」。その宝物をフル稼働して、八重樫東という男の生きざま、集大成をきっと披露してくれるはずだ。

文&写真_本間 暁

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