10日、東京・後楽園ホールで行われたOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの三代大訓(25歳=ワタナベ)が、挑戦者6位の木村吉光(23歳=白井・具志堅スポーツ)の攻撃力に苦戦。ジャッジ三者ともわずか1ポイント差(114対113)の2-1判定を辛くも制した。三代はこれで4度目の防衛となった。

上写真=王者・三代の右ボディアッパー。ストレート系に加え、フックやアッパーのボディ打ちも上手いのだが……

「首の皮1枚つながった」。勝利者インタビューで開口一番、そう語った王者は、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 終わってみれば、たったの1ポイント差。初回、右のカウンターで木村にヒザを着かせた三代だが、そのダウンがなければ勝敗はひっくり返っていたところだった。

画像: 強くて的確な左ジャブが三代の武器。ポイントを取るにふさわしいものだが、これに続く攻撃をもう少し前面に出せれば……

強くて的確な左ジャブが三代の武器。ポイントを取るにふさわしいものだが、これに続く攻撃をもう少し前面に出せれば……

 抜群のスタンスをキープし、アマチュア仕込みの洗練されたボクシングで、わずか5戦目で一気に王座へと駆け上がった三代。国内でも有数のジャブの名手で、ストレート系だけでなく、アッパーカット、ボディ打ちなども秀でているテクニシャン。だが、カウンターを狙うあまり、あるいは、“ここ”というポイントが見えない限り、自らボクシングをつくっていこうとしない部分に物足りなさを感じた。
 相手に打たれれば、それを相殺したり、上回ったりする回転力のある連打を見せる。ラウンドのラスト30秒で連打を仕掛けてポイントを奪取していくあたりは、巧さ以上に狡猾さを感じる。ファイトというよりも、ゲーム的感覚。
 実際、この日もそんなラウンドがいくつもあった。攻勢やクリーンヒットでは、木村が大半を占めていても、終盤の三代の仕掛けが評価された印象がある。
 自ら攻撃を仕掛けていって、相手にカウンターを取られる。それを警戒した、“三代流”のスタイルかもしれないが、待機するボクシングで、ポイントを得ようとする方向性こそ、危うさを感じるものだ。
 ポイント計算をした上で、最終回を流した点も、終わってみれば綱渡りの戦法だった。圧勝せずとも、1ポイントでも勝っていればいい。相手を圧倒して勝てるだけの武器があるにもかかわらず、気持ちの部分の問題がそうさせているのならば、こんなにもったいないことはない。
 基礎がしっかりと備わっていて、もっともっと上のステージも期待できる選手だけに、そろそろ自ら引き出しを開けて、持っているものを存分に披露してほしいと思うのだ。

画像: 挑戦者・木村のジャブは、ストレートに近い威力があった。ジャブの名手・三代をジャブで圧倒する場面も

挑戦者・木村のジャブは、ストレートに近い威力があった。ジャブの名手・三代をジャブで圧倒する場面も

 一方、敗れはしたものの、大健闘を見せたのが挑戦者・木村。「勝たなければ意味がない」と大いに悔しがったが、ジャブの名手・三代に、ストレートに近い左ジャブで打ち勝って見せるシーンも多々あった。
 2016年の全日本フェザー級新人王だが、東日本決勝あたりから、上体のパワーに頼りすぎる試合が長らく続いた。鍛え抜かれた下半身が“宝の持ち腐れ”の印象だった。
 が、ここ数戦、そしてこの日も、下半身主導の攻撃、それと連動したボディワークを多用した防御にキレが戻ってきた。元WBC世界ライトフライ級王者・友利正さんがトレーナーとなって、下半身を主導で、筋肉を柔らかく使うボクシングに取り組んでいるのだという。

「(三代の)ジャブが効いた」という木村は、鼻血を流し、再三顔面をのけ反らされた。それでも、右の強烈なストレート、角度をいくつも変えた左フックで、三代を何度も追い込んでみせた。
 三代もさすがに防衛を重ねるチャンピオン。ガードは堅く、距離で外すのも実に巧みで、最後の一手こそ許さなかったが、7回に右を立て続けに決められたシーンはダメージがあっただろう。

 三代にはあらためて課題が浮き彫りになった試合、木村は目指しているボクシングの確かさを感じさせる試合だった。

文_本間 暁
写真_小河原友信

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