WBO世界ウェルター級チャンピオンのテレンス・クロフォード(アメリカ)は14日、ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンで指名挑戦1位エギディウス・カバラウスカス(リトアニア)とタイトルマッチ12回戦を行い、9回44秒でTKO勝ちし、3階級目の世界タイトルの3度目の防衛に成功した。圧勝の内容ながら、カネロ・アルバレス(メキシコ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、そして井上尚弥(大橋)らと争うパウンドフォーパウンド・ランキング(全階級最強)のトップ争いには微妙な評価が残る戦いぶりだった。

上写真=タイムリーな右フックで3度のダウンを奪ったクロフォード

 序盤のクロフォードは、やや不安定に見えた。強引に前に出るところを、カバラウスカスの右カウンターで狙われたり、3ラウンドには右ロングをかわしそこねた直後に連打を振り回されて、思わずヒザをつくシーンも(判定はスリップ)。

 しかし、地力の差はあまりに大きい。左右どちらの構えでも戦えるクロフォードは、サウスポースタンスをベースに4ラウンドからペースを上げる。バルトの強打者にとってもチャンスとなる距離での打ち合いを実行。技術、センスで格上の力を持つチャンピオンの右フック、左ストレートのクリーンショットが次々にヒットしていく。5ラウンドも観客を沸かせるハイテンポの打ち合いに打ち勝って、カバラウスカスの自信を根こそぎ引っこ抜いた。

 その後、いったんはペースダウンしたクロフォードだったが、7ラウンドにカバラウスカスの右を当てられて、再び燃え上がる。激しく攻め込み、右フックでダウンも奪った。そして9ラウンド、クロフォードは満を持してフィニッシュに取りかかった。左ストレート連発し、挑戦者をロープへと追い込むと、アッパー、フックと切り返した右のコンビネーションブローでダウンを奪う。立ち上がったカバラウスカスを右フック一発でダウンを追加。レフェリーのリッキー・ゴンサレスはここでストップを宣した。

「前半のパンチは効いちゃいない。カバラウスカスの攻撃にはすべて対応できた」

 と語ったクロフォードはこう続ける。

「本当のトップと戦いたい。2020年は大事な1年になる」

 36戦全勝27KOと不敗のレコードをひとつ伸ばしたクロフォードだが、最後のコメントには意味深にも、いま抱えるストレスを含めている。所属するトップランク・プロモーションのウェルター級にはクロフォードと並び立たせて納得させられる選手はいないのだ。

 強大な実力、実績、魅力を持つマニー・パッキャオ、エロール・スペンス・ジュニア、ショーン・ポーター、ダニー・ガルシア、キース・サーマンはすべて最大のライバル、PBC(プレミアボクシング・チャンピオン)のボクサー。前日、15連続KOをマークして“WBAゴールドチャンピオン”となったバージル・オルティスはゴールデンボーイ・プロモーション、スーパーライト級から上げてくるモーリス・フッカーはDAZN。いずれもPBCほどではなくても近くて遠い存在だ。同じプロモーション傘下ではWBAレギュラーチャンピオンになったばかりのアレクサンデル・ベスプーチンもいるが、いささか格落ち。なお、3年後にはスーパースターになっているかもしれないジャロン・エニスは、軸となるプロモーションも決まっていない。

 この日の戦い、4ラウンドから距離を近づけ、打ち合いからペースを巻き取ったのは、あくまでも力量差が明白だからできたこと。クロフォードはウェルター級に転向して以来、一度もトップレベルと戦っていない。序盤のもたつきが、作戦によるもの、単なる油断だけならいいが、錆びつきがあったとしたら……。空間管理術の達人クロフォードも32歳。もう若くはない。今回のやり口ではPFPで再びトップ評価を勝ち取るのはむつかしい。

 今回の観客はMSGのキャパシティのやっと半分1万101人。前座にブルックリン出身の超人気者テオフィモ・ロペスが出場してのこの数字だ。興行的に意味でも、実力を保つためにも、クロフォードとボブ・アラム(トップランク社長)は本気で考える時だ。

画像: 行き先の定まらない“巨人”クロフォード

行き先の定まらない“巨人”クロフォード

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティ イメージズ

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