31日の初防衛戦に向けて26日、報道陣に練習を公開したWBO世界スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(30歳=Reason大貴)。ほんのわずかな時間だったが、彼の魅力、強さはそこに凝縮されていた。

上写真=基本中の基本の前後ステップ。右足と左足のカタチを見てほしい

 1ラウンド3分。井岡が動いたのは、軽いシャドーボクシングをした、たったそれだけの時間である。が、たかが1ラウンドと思うなかれ。その180秒に、彼のボクシングがたっぷりと溢れ出していたからだ。

東京農業大学時代の先輩、佐々木修平トレーナーの肩を借りてストレッチ

 腕、肩、胸のストレッチに始まり、下半身をほぐす。股関節と腹筋を意識し、骨盤を利かしてパンチを軽く下に打つ。ここまでがアップだ。

股関節を意識して、下半身のストレッチ

腹筋と骨盤を意識して、下に向けてパンチを放つ

 ゆったりと、スローに、リング内を動き始める。ヒザと足裏を非常に繊細に駆使して、上体を動かす。肩を動かす。頭を動かす。パンチを打つではなく、腕を伸ばす程度。だが、下半身との連動を意識したもの。いや、すでに無意識に連動しているレベルだ。

画像: 前後動作を後ろから。足裏の使い方、バランスの取り方がおわかりいただけるだろうか

前後動作を後ろから。足裏の使い方、バランスの取り方がおわかりいただけるだろうか

 下半身と上半身の連動だけではない。軸となる右足と、前足(左足)の連動が実にスムーズだ。つまり、重心の移動が滑らかで、バランスが決して乱れない。

リング内をすいすいと水平移動していく

 移動は前後左右だけではない。まるでダンスでも踊るかのように、右斜め前45度、左斜め前45度、またはその逆のステップバックと、緻密な足さばきで移動していく。角度は45度に限らず。その折々で微妙に変化していく。二桁ではなく、数センチ単位で。もう、体のどこをどう機能させれば、そのわずかな距離を無駄なく移動していけるのか、体が覚えこんでいる。これに得意の左ジャブが加わって、相手に打たれず、自分だけが打つ空間を築いていくのだ。

足の裏のどの部分でもバランスを取れる。イスマエル・サラス・トレーナーと長年、細かいステップを鍛錬してきたおかげで、見事なバランス感覚が身に着いた

 決してド派手な跳躍やフットワークをするわけではない。一切の無駄を省いて、距離をつくる。まさに「精密機械」の印象だ。

 31日、大晦日のリング。井岡一翔の足さばきをじっくりと観察してほしい。

文&写真_本間 暁

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