28日、東京・後楽園ホールで行われた『GOD'S LEFTバンタム級トーナメント決勝』(バンタム級8回戦)は、日本同級6位の中嶋一輝(26歳=大橋)と日本スーパーフライ級18位の堤聖也(24歳=角海老宝石)が77対75(中嶋)、76対76、76対76の1-0で引き分け。トーナメントルールにより、ドローとしたジャッジがそれぞれ中嶋、堤の優勢につけたため、中嶋の優勝となった。

上写真=中嶋(右)の強打を、堤はブロック、ガードで防いでいった

“ゴッド・レフト(神の左)”、元WBC世界バンタム級チャンピオン山中慎介さんから、優勝賞金100万円と高級腕時計を贈呈された中嶋に、笑顔はまったくなかった。

 このトーナメントに入って、渡辺健一(ドリーム)、南出仁(セレス)をいずれも初回KOで打ち破り、優勝候補の筆頭と騒がれた。強烈な左ストレートを見せておいての、これまた恐ろしい威力を持つ右フック。完全に“覚醒”した感があった。

画像: 出入りを駆使する堤のボクシングは、中嶋をコントロールしたように見えたが……

出入りを駆使する堤のボクシングは、中嶋をコントロールしたように見えたが……

 だが、対する堤と陣営は、徹底して中嶋攻略の策を練ってきた。元来はスイッチヒッターでオーソドックスの時間が多いが、この日はサウスポースタイルから動いて撹乱し、タイミングをずらして飛び込んで打つ。中でかき回しておいてパッと離れ、中嶋の打ち気を外す。

 こちらはナチュラルなサウスポーの中嶋は、上体を立ててどっしりと構え、足はほとんど使わずに、相手を引き込んでおいて、打ち合いの中で決め打ちするタイプ。が、フットワーク、サークリングを駆使する堤に、じりじりと間合いを詰めていく中嶋だが、自分の距離を外されるため、パンチを出すことすらかなわなかった。

 そんな中嶋を、堤は完全に翻弄していった。グローブと足でフェイントを数多く入れ、深いステップインからの右リードがヒットする。左右フックも中嶋のボディを捉える。上下に細かく連打も見せてこれをヒット。中嶋の強烈な“タメ打ち”は「全部ブロックの上」(堤)となった。

「相手が焦っているのはわかった。いつもなら、僕も焦って打ち合いに行っちゃうけれど、最小限に抑えて抑えて……」(堤)

 元来、負けん気が強く、打ち合い上等の堤だが、その気持ちをコントロールできるかがポイントで、それを見事に完遂できた印象だ。

画像: 堤のボディを狙う中嶋。だが、必殺ブローを打ち込むリズムをつくることができなかった

堤のボディを狙う中嶋。だが、必殺ブローを打ち込むリズムをつくることができなかった

 対する中嶋は、5回にようやくプレスと手数を強めて左ボディアッパーをヒット。6回にも同じブローをヒットしてから、必殺の右フックを返すが、堤も右フックを合わせ、これが中嶋の左目上を切り裂く。

 7、8回と、堤は右へのスイッチも混ぜながら、こちらも強く出て打ちに行く。ようやく中嶋の強打も生きる展開になったが、リズムとペースに乗り切れずにここまできた中嶋が、それをひっくり返す場面は訪れなかった。

 パワーパンチでは中嶋が上だったが、それを見事にブロック、ガードで防いだ堤。手数とヒット数、そしてペース支配は堤が完全に上回ったように思えたのだが……。

やりたいことは、ほぼすべてできた感の堤は、振り絞るように反省点を述べた

「カウンターをすごく警戒していたので、あと半歩の勇気が足りなかったのかな……。ドローというのがめっちゃ悔しい」と、半ば放心状態で振り返った堤。だが、「僕が強いというのは証明できたと思う。絶対に這い上がります」と、最後は力強く言い切った。

悪いところがすべて噴出した感の中嶋。この試合を糧に、パワーパンチを当てるための柔軟性を磨いてほしい

 控室でも笑顔がまったく見られなかった中嶋は、「悔しい。ドローかなと思った」と試合結果についての印象を語り、「重心を低く来られたのでやりづらかった」と堤のスタイルを振り返ると、あとは自身についての反省の弁。「狙いすぎた。力んで速い回転を使えなかった」と繰り返した。

 柔軟なボクシングを披露してみせた堤に、中嶋は学ぶ点が大いにあったのではなかろうか。圧倒的なパワーパンチを生かすためのパターンは、まだまだたくさんあるはず。

 優勝こそならなかったものの、堤はそのポテンシャルで株を上げ、中嶋は大きく羽ばたくための試金石となる試合。ジャッジの見方には疑問が残るが、両選手の未来が楽しみなことは間違いない。

文_本間 暁
写真_小河原友信


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