12日、無観客で行われた『第41回チャンピオンカーニバル』、日本スーパーライト級タイトルマッチ10回戦は、王者・井上浩樹(28歳=大橋)が、挑戦者1位の永田大士(30歳=三迫)の前進と手数を止められず。7回2分17秒で右目周辺の腫れとカットによるレフェリーストップ。井上は、16戦目にして初黒星(15勝12KO1敗)。2度目の防衛に失敗した。

上写真=歩いて追って打つ。永田はこの戦い方を遂行していった

文_本間 暁
写真_山口裕朗

「3回のバッティング以降、記憶がない」。右目周辺を大きく腫れあがらせた井上は、「なんかずっと変な感じでした。体に力が入らなかった」とも。
 開始から、井上の動きははっきりと緩慢だった。サウスポー同士、身長に優る井上は、軽快なステップワークとスピーディーな連打でカウンターを取るスタイル。一方の永田も井上同様、アマチュア出身だが、ファイターに近い戦い方を得意とする。井上をひいき目に見ていえば、「無駄な動きを排除して、永田を引き寄せてカウンターを狙っているのか?」だったのだが……。

 敢えて動かなかったのか、あるいは不調により動かなかったのか。真相はわからない。だが、本人も常々語る「フットワークから作るボクシング」をしないため、リズムにも乗れず、作れず、受け身のかたちが出来上がってしまったことは確かだった。

得意の右フックをヒットする井上浩樹だが、タイミングも当たり方もいまひとつ

 動かない井上に対し、永田はとにかくひたすらにグイグイと迫っていく。加藤健太チーフトレーナーが、折々に「歩け」という指示を飛ばす。これは、ジムでのスパーリングでも再三与えられていたもの。基本的に、のしのしと歩いて井上に迫り、細かいショート連打をベースにする。フットワークを使って入るよりも、実はショートカットが利いて、相手を追い込む効果がある。これに、時折飛び込んで左ボディフックを強打するなどするから、緩急の変化もつく。

 件の3回のバッティングは、永田が左アッパーカットでボディを打ちながら飛び込んだ際に起きたもの。井上はこれで右目上をカットし、本人曰く、意識を飛ばされてしまったというわけだ。

画像: 従兄・浩樹の戦い方を、井上尚弥は「何をしたいのか、まったく伝わってこなかった。気持ちの面も含め、イチからやり直しですね」と評した

従兄・浩樹の戦い方を、井上尚弥は「何をしたいのか、まったく伝わってこなかった。気持ちの面も含め、イチからやり直しですね」と評した

 井上はその後も受けのかたちを取りながら、左ストレート、右フックのカウンターを狙う。だが、タイミングと距離は微妙にズレており、永田にダメージを与えるどころか、前進を止めることもままならない。挑戦者は、王者の右ジャブに左クロスを何度も重ねた。技術のある井上は、これをまともには浴びなかったものの、永田の押し込むような打ち方、弾くようなパンチによって、右目周辺が徐々に腫れてしまった。

 歩いて追いかけて、追いかけながら連打を出し続けてリズムに乗った永田。最初から最後まで足は動かず、リズムもスピード感も失ったままの井上。勝敗とはそういうものだが、明暗くっきりの、好対照の両者だった。

初黒星に茫然自失の井上浩樹。右目周辺の腫れが痛々しい

「獲って当たり前! と言いたいところでしたが、正直、険しい道でした。日本チャンピオンになって嬉しいですが、これがスタート。こういう状況の中で、ボクシングをできるのが幸せです」と語った新チャンピオンは18戦15勝(6KO)2敗1分。

 中川健太(スーパーフライ級)、鈴木悠介(バンタム級)、佐川遼(フェザー級)、吉野修一郎(ライト級)、小原佳太(ウェルタ-級)──。
 三迫ジムはこれで6人の日本チャンピオンを同時に抱えるという史上初の快挙を遂げ、今年度のチャンピオンカーニバルで開催された3試合で3連勝(吉野、小原)を飾ることにもなった。

2度目のタイトル挑戦で王座を射止めた永田。前回惜敗したOPBF王者・内藤律樹(E&Jカシアス)戦が生きた

おすすめ記事

ボクシング・マガジン 2020年8月号


This article is a sponsored article by
''.