8月25日に開幕した世界柔道選手権。日本人選手たちの活躍をはじめ数々のドラマがあったが、前半戦を取材して、印象に残ったいくつかの場面を編集部が振り返った。

※写真上=大会3日目、圧倒的な強さで優勝した73kg級・大野将平(青)
写真◎近代柔道

素敵な笑顔

 大会4日目終了時点で、日本は「金」「銀」「銅」のメダルを3つずつ手中にした。東京五輪を翌年に控えて強豪国の強化がさらに進み、各階級で新鋭の台頭も相次ぐ中、熾烈な戦いを乗り越えてのメダル獲得。それぞれに重みがある。

特に、表彰台の一番上を占めた丸山城志郎選手、大野将平選手、阿部詩選手の戦いぶりは、三者三様の柔道スタイルで見る者を大いに惹きつけた。さらなる大舞台に向けて、3選手の勢いはますます増していくことだろう。

 一方、あと一歩で銀メダルに終わった渡名喜風南選手、芳田司選手、田代未来選手の奮闘も強く印象に残った。彼女たちの無念の思いは深いと思うが、世界トップクラスの実力をあらためて証明したことは事実。増地克之・女子監督が幾度となく口にしていたように、「紙一重の試合をいかにものにしていくか」が、来年の東京五輪で最高の笑顔を見せるための必須条件になるのは間違いないだろう。

 さて、今大会では連日、表彰式後にプレスルームでメダリスト全選手の記者会見が行われているが、結果に関しては明暗がくっきり分かれても、やはり皆一様に、激戦を終えた安堵の表情を見せてくれる。シビアな勝負の場を離れれば、ライバルへの敬意や友情を素直に表現してくれるのもうれしい。

大会4日目には、GS11分11秒の大熱闘を終えて涙で健闘を讃え合ったアグベニュヌー選手と田代選手が、銅メダルのトライドス選手とフランセン選手も交えて、アグベニュヌー選手のスマホで記念撮影をしていた。4人とも素敵な笑顔。会見前のひと時、実に心地よい空気が漂っていた。     (佐藤)

画像: ※写真上=メダリスト記者会見前にスマホで“自撮り”するアグベニュヌー(右)と田代未来 写真◎近代柔道

※写真上=メダリスト記者会見前にスマホで“自撮り”するアグベニュヌー(右)と田代未来
写真◎近代柔道

執念の柔道

 大会4日目が終わり、そろそろ疲れがたまってくる。朝、九段下の駅から日本武道館までの坂道が日に日につらくなる。しかし、会場について選手たちの頑張る姿を見ると、こちらも自然と活力が湧いてくるから不思議だ。

前半、多くのドラマがあったが、特に印象に残ったのは日本男子最初の金となった66kg級・丸山城志郎選手の優勝。準決勝で阿部一二三との直接対決に勝利し、決勝ではキム・リーマン(韓国)に内股と腰車の合わせ技で勝利して初の世界一に輝いた。丸山にとってこの勝利は、来年のオリンピック代表に向けて大きな一歩になったが、多くの人に強いインパクトを残した。

 準決勝の阿部との対決で、序盤に膝を傷め、だれの目から見ても「最後まで戦えるか」と思われる状況だった。しかし、そこから驚異の粘りで阿部の攻撃をしのぎ、最後は浮き技で「技あり」を奪って勝利した。

 大会前、丸山は「きれいな柔道で勝ちたい」と話していた。素早く飛び込んで跳ね上げる切れ味鋭い内股は芸術的であり、見ていても惚れ惚れする。しかし、準決勝の戦いは美しさよりも執念で戦っていたように見えた。それでも多くの人に感動を与えたのはケガを負って絶対的に不利という状況から、気迫の柔道を見せて最後は阿部をねじ伏せたからだと思う。 

 決してきれいな柔道でなくてもいい、気持ちのこもった柔道を見せれば、それは伝わる。普段、柔道なんて見ない友人たちからも「丸山、すごかったね」というメールをもらった。きれいな柔道で勝ちたいといっていた丸山が、別の形で柔道の魅力を伝えてくれた。

 さて、後半戦はどんなドラマがあるのだろうか。(岩佐)

画像: ※写真上=66kg級準決勝、阿部との激闘を制した丸山城志郎(白) 写真◎近代柔道

※写真上=66kg級準決勝、阿部との激闘を制した丸山城志郎(白)
写真◎近代柔道

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