「BBM女子プロレスカード2019 TRUE HEART」の発売を記念した高瀬みゆき選手の特別インタビューを、前編と後編の2回に分けてお届け。獣医を目指しながら女優へ、そして女子プロレスラーへと歩んだ一人の女性の軌跡から。

 女子プロレス界において、新人と呼ばれる時期がいつまでなのか、明確な定義があるわけではない。ましてやこの多団体時代、すべての団体を分け隔てなく取材しているメディアが存在しない現状では夢物語でしかないのだが、もし「新人賞」という開かれた賞があったとしたら、この選手は昨年、間違いなくノミネートされていたはずだ。

 Actwres girl'Z(アクトレスガールズ/AWG)のBeginningに所属する高瀬みゆき選手は、この1月にデビューから丸2年を迎えた。格闘技のバックボーンもない女優が、デビューイヤーから他団体にも参戦。昨年は約110試合をこなすなど、文字通り大車輪の活躍だった。

 3月1日に発売された「BBM女子プロレスカード2019 TRUE HEART」の商品ボックスにも登場する彼女に、発売記念インタビュー第1弾としてじっくり話をうかがってみた。

 その前編となる今回は、「女子プロレスラー・高瀬みゆき」が誕生するまで。

PROFILE
高瀬みゆき(たかせ・みゆき)
 9月8日、大阪府泉南郡出身。高校卒業後に女優を目指して上京。雑誌のモデルや舞台出演などを経て2013年に香川県に移住。「かがわ源平紅白キャラバン隊」のメンバーとして平清盛役を務めた。15年からは映画、舞台を中心に活動する一方でYouTubeでの動画配信も行い、「女優+ユーチューバー」を意味する「女Utuber」を名乗った。16年10月よりアクトレスガールズの練習に参加し、17年1月15日の新木場1stリング大会でデビュー(対戦相手はチェリー)。3月にJWP(現PURE-J)、6月にプロレスリングWAVEに参戦。特にWAVEには定期的に出場するようになり、18年はCatch the WAVE出場、さらにレジーナへの挑戦を果たすなど大躍進した。11月のアクトレスガールズ後楽園ホール大会からトレードマークの黒髪ロングをばっさりカットしイメージチェンジをした。
※高瀬の高は「はしごだか」が正しいのですが、文字化けを避けるため本稿では「高瀬」で統一いたします。ご了承ください。

獣医を志し高校進学も、
突然、芸能界に目覚める

BBM ご出身は大阪府泉南郡ということですが、大阪府のどのへんなんでしょう?

高瀬 大阪の南のほう、もう和歌山の隣です。地元には高校までいました。

BBM 子供の頃の高瀬選手は、どんなお嬢さんでしたか。

高瀬 小学生の頃は、男の子の中に一人だけ混じってサッカーをやっている女の子って感じでしたね。活発で、正義感が強くて、まじめでした(笑)。

BBM なんとなく分かる気がします(笑)。何かスポーツはされていましたか?

高瀬 水泳教室には6年間通っていましたね。運動神経は良いほうだったと思います。リレーのアンカーを任されたり。兄弟が兄と弟なので、男の子たちと山を駆け巡って遊んでいましたから、足は速かったと思います。中学ではバレーボール部、高校ではダンス部に入っていました。

BBM 大阪と聞くとどうしても市内あたりのイメージをしてしまいますが、南部のほうですと全然違います?

高瀬 もうすごい田舎ですね。港町なんですけど、すぐ裏に山もありますし。いまでも実家のある街にはコンビニがないです(笑)。先日帰ったときには、自動販売機が撤去されていましたし。

BBM あ、それは確かにすごい(笑)。

高瀬 車で5分走ればスーパーやコンビニがあるので、みんな買い物には徒歩で行くのではなく、車でって感じなんです。

BBM 子供の頃、将来の夢とかなりたい職業はありましたか?

高瀬 最初は特になくて、ケーキ屋さん、お花屋さんって感じ。それから中学生くらいからですかね、ウチは小さい頃から小鳥、インコを飼っていまして、事故や寿命で亡くなってしまうのに何もできないのが悲しくて、獣医になろうと思っていました。ですから進んだ高校は、獣医になるために選んだ学校だったんです。

BBM それがまたどうして……。

高瀬 高校を出て、ほぼ家出みたいな感じで東京に来てしまいました。高校在学中に芸能界に進みたいと思って、親にはそれを反対されまして。私、思ったら即行動というタイプなので、東京に行って、片っ端からオーディション受けようと……。

BBM 獣医さんを目指していたのに。

高瀬 獣医なら勉強さえしっかりやれば何歳になってもなれるけど、芸能界に進もうと思ったらもう遅いくらいじゃないですか。いま踏み出さないと年齢を理由にして諦めちゃうから、行くしかないと思いまして。だから勝手にオーディションを受けました。でも合格しても未成年なので親に連絡が行く。親が勝手に断ってケンカするってこと、何度も繰り返していましたね(笑)。

画像: 私服姿の高瀬はリング上とはまた違った魅力が。さまざまなエピソードを話してくれた

私服姿の高瀬はリング上とはまた違った魅力が。さまざまなエピソードを話してくれた

BBM 何かきっかけはありましたか?

高瀬 高校時代、大阪駅を歩いていたらスカウトされまして。そのお話も親が断っちゃったんですけど(笑)。すごい田舎で育ちましたから、それまで芸能の道に進むとか考えたこともなかったんです。でも、自分がなろうと思ったら、何にでもなれる可能性があるんだと気付いて。そうなると、やってみたくて仕方なくなったんですよ。

BBM 目覚めてしまったわけですね。

高瀬 ジャンルとしては、女優をやりたかったんだと思います。私は絵本が大好きな子供で、それから映画を好きになって。そういう作品作りをしたい、作品の一部になりたいと思いました。歌は別にうまくないですし、詩を書いたりも得意ではない。モデルやファッションに興味があったわけでもないですし、やはり目指したのは女優でしたね。

BBM 行動力、決断力ともすごいですね。では上京してからはどんな生活を?

高瀬 はじめは読者モデルやエキストラですね。そもそも、エキストラがお仕事としてあるというのが新鮮で。なのでエキストラの事務所に登録したんです。するとポンポンとその上の事務所に入ることになりまして。あの頃は舞台や雑誌のお仕事が多かったですね。ファッション誌で「目」の写真とか……。

BBM あ、メイクの違いでどうなるかという特集などのモデルさんですね。

高瀬 そうです、そうです!

香川県に移住し武将隊に。
そこでより凜々しくなった

BBM その後の転機としては、香川に行かれるんですよね?

高瀬 そうですね。でも実はその前に、私は一度、役者を辞めているんです。自分に自信もなくなったし、西と東の生活の違いや世間知らずということもありました。いつしか笑えなくなってしまったんです。でも、そのときは気付かないんですよね。久しぶりに笑ったときに、「私、これまで笑うことを忘れていた」って思って。でも、気付いたときにはもう遅くて、どうしていいのかも分からない。幸い、私の場合は1年程度で元に戻ったんですけどね。なのでその時期は、生きられる最低限の分を稼ぐように半月アルバイトして、残りの半月は大阪に帰って関西のエネルギーを補充するみたいな感じでした(笑)。

BBM 関西のエネルギーで何とか立ち直れたわけですね。

高瀬 はい。それで今度は一からやってみようと思って、養成所に入りました。そこで出会った方から「役者の修業を兼ねて行ってこい」と、香川県でのお仕事を勧められました。

BBM どういうお仕事だったのでしょう。

高瀬 県の観光PRのお仕事で、当時、武将隊がとても流行っていたんです。私は平清盛の役でした。過去からよみがえったという設定で、1年目は本名も非公開で平清盛を演じまして。殺陣入りの舞台が20~30分くらい、香川県を題材にした歌とダンスがあり、合間に観光PRを混ぜたMCトークがありで、だいたい30分~1時間のステージでしたね。

BBM 務められたのはどのくらいの期間です?

高瀬 2年間です。基本的に土日は香川の屋島でステージをやって、他にも栗林公園など香川県の観光名所で行ったり。また、他の都道府県の催し物にも行きました。関東にも来ましたよ、埼玉の大きなショッピングモールに。そういうステージが1年目だけで290くらいありました。

BBM かなりの数ですね。

高瀬 1日3ステージほどありましたから。なので住民票も移し、私は香川県の人間だという気持ちで務めさせていただきました。香川の丸亀城にはまた別の武将隊がいて、その方々とのコラボステージを高松駅前でやったり。

BBM 大阪の田舎で活発に育ったお嬢ちゃんが、そこでいまの格好良さを身につけたのですね(笑)。

高瀬 はい、その時期に雄々しく育ちました(笑)。

BBM 香川で2年間を過ごし、その後は?

高瀬 本当は大阪に帰りたかったんですけどね(笑)。香川でのお仕事を紹介してくださった社長さんに武将隊を辞めることをご報告したら、ウチの事務所に来いと誘っていただきまして。その事務所が東京でしたから、また東京に来ました。2015年のことです。

BBM だんだん現在に近くなってきました。そこではどんなお仕事を?

高瀬 映画が多かったですね。あと、もともと劇団だった事務所なので、舞台に出たり。それと私はパソコンが得意なので、他の役者のプロフィールをまとめるお手伝いをしつつ、プレーイングマネージャーとして自分も含めて売り込みに行ったり。なので当時は芸能のお仕事一色でした。

画像: リング上の高瀬はとにかく格好いい。その凜々しさは、香川時代により磨かれたようだ

リング上の高瀬はとにかく格好いい。その凜々しさは、香川時代により磨かれたようだ

二度も断ったプロレス入り
気持ちを変えさせたのは…

BBM どの時代のお話をうかがっても、面白いですね。「プロレスラー・高瀬みゆき」が生まれるまでだけでも、とても興味深い。本当はもっともっと掘り下げたいのですが、本題を忘れるわけにはいきません。なぜ、リングに立つようになったのか……です。

高瀬 香川で一緒にやっていた子の知り合いの方が、AWGの坂口(敬二)代表と親しかったらしく……なので元々は、代表は別の女の子を誘っていたんです。するとその子が、私も一緒だったらやってもいいという感じで答えて、結局は私だけがプロレスを始めちゃったみたいな(笑)。

BBM そのパターンですか! それまでプロレスについては……。

高瀬 まったく知りませんでした。格闘技との違いもよく分かりませんでしたし。よく芸人さんが物真似をされたり話していたりするじゃないですか。なので競技として存在することは知っていましたが、ボクシングとどう違うのかなど、ルールすら知りませんでした。

BBM それなのによく引き受けましたね。

高瀬 実はお断りしたんですよ。ちょっと長くなりますが経緯を話しますと、香川から戻ってお世話になった事務所の社長が、旧姓・広田さくら選手とお付き合いがあり、一緒に舞台に出演もしていたんです。私もそれをたまたま観たことがあり、「高瀬も試合、やってみたら?」と言われたことがありました。もちろん「やりません」とお答えして。そのときはそれで終わったんですが、ちょっと時間を空けてから今度は正式にお誘いがありました。坂口代表から「1回観たら印象も変わるから」と言われまして、ならばとアクトレスガールズの会場に行ったんです、未知な体験は好きなほうなので(笑)。

BBM 好奇心が勝った。

高瀬 そうなんですけど、やはりお断りをしました。当時はYouTubeを始めたばかりで、やるからにはと24時間かけて真剣に取り組んでいましたし、その中で女子プロレスに費やす時間はないなと思って。

BBM 自分がやるものではないと……。

高瀬 はい、響かなかったんですよね。ですがまたその半年後、今度は知り合いを介してではなく坂口代表から直接、「観においで」と誘われまして。「もう、観たやん!」って思いつつ、結局は押し切られて(笑)。でもいざ行ったら、半年前とは全然違ったんですよ。ちょっとひ弱いように見えた選手たちが、半年経ったらトップロープから場外へ飛んだり、すごく逞しく見えました。

画像: デビューした17年の高瀬。1年目から他団体でも活躍した

デビューした17年の高瀬。1年目から他団体でも活躍した

BBM しっかり成長していたんですね。

高瀬 それで思ったんです。この人たちは本気でやっている。でなければ、短期間でこれだけ変われないはずだって。ですから私はプロレスに感動した、好きになったからやってみたいというよりも、本気で何かに取り組んでいる人たちと一緒に活動したいって思ったんですよ。私は普段から、何をするかよりも誰といるかということのほうを大事にしています。前を向いて目標のために頑張っている人と一緒にいることで、自分も刺激を受けて頑張っていくということに重きを置いているので、彼女たちと一緒にいてみたいと思いました。私がデビューできるかどうかは分からない、なんなら痛いのも嫌い、シンドイ努力も嫌いだけど、まずはちょっと練習させてくださいと言いました。

BBM 3度目の正直ですね。それが16年の秋ですか。

高瀬 そうです。ただ、10代だったらまだ良かったんですけどね。バレー部で鍛えていた、体脂肪率8パーセントってときならともかく、もう当時はそうじゃないですから(笑)。でも毎日、筋肉痛でもう歩けないってなるくらいの厳しいトレーニングをして、吐きそうになっていても、だんだんとできることが増えていくんです。

BBM それは鍛えていた時代があるからですよ。

高瀬 学生時代は「自分は無敵だ」くらいに思っていて(笑)。やろうと思えば何でもできる、運動神経も悪くないし、誰にも負けないってくらいでいたんですけどね。でもずっと役者をやってきて、アルバイトなども販売員とかばかりだったんです。なので筋肉もすっかりなくなっていたときでしたから。

BBM かなりキツそうですね。

高瀬 最初は受け身をとるのも痛くって。でもだんだん、こうすれば痛くないんだと分かって、自信になっていく。その積み重ねの中で……知らぬ間にデビューしちゃっていた、そんな感じなんです。絶対無理だと思っていたんですけどね(笑)。

BBM 行動力がある上に、負けず嫌いだったのが功を奏したということかもしれませんね。

高瀬 そうだと思います(笑)。

<後編に続く>

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