多くの五輪メダリストを育てた伝説的なランニングコーチ、アーサー・リディアード。彼のトレーニング理論をリディアード・ファウンデーションの橋爪伸也氏にひも解く。※『ランニングマガジン・クリール』2017年5月号から2018年4月号まで掲載された連載を再構成しました。

上の写真:不自由な左手のハンディも押して、リディアードの指導の下、確固たる自信と裏付けをもって1960年ローマ五輪に臨んだマレー・ハルバーグ(ニュージーランド)。男子5000mで金メダルに輝いた。

インターバルの副作用

 1960年のローマ五輪、男子5000mの決勝で、ニュージーランドのマレー・ハルバーグが優勝しました。この選手は17歳のときに、ラグビーの試合中の負傷で左腕を動かせなくなっていました。その後、陸上競技に転向し、左腕にハンディを負いながらリディアードの指導を受けてきたのです。

 五輪王者に輝いたそのレースで、彼はラスト3周から1周400mを60秒ですっ飛ばしました。そして、2位以下の選手たちを一気に30m引き離し、その差をキープしてゴールテープを切ったのです。実はその一見、無謀にも思えるラストスパートの背景には、緻密に計算された作戦と、それを実行に移せるだけのトレーニングに裏付けされた自信があったのです。

 当時のトレーニングの主流はインターバルでした。しかし、それではラストスパートに入る前に休息を求める体になってしまうい、ということをリディアードは見抜いていました。ヒトの体というのは、与えられたストレスに対して、その特別なストレスをスムーズに遂行できるように「適応」するからです。

 そこで、レースの全行程にわたって、一定のスピードで走れるように練習する。それをして初めて、それまで築き上げてきたスタミナとスピードを上手くミックスした走りができるようになるのです。これが「コーディネーション」です。

画像: インターバルの副作用

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