新型コロナウイルスの感染の拡大傾向が緩やかになってきているが、まだ、出口がはっきりと見えているわけではない。そんななか、4月中旬に発症し、入院、5月12日に退院したサブ3ランナーが、発症から退院までを教えてくれた。日ごろ、鍛えているからといって油断はできない。多くのランナーの参考になればと考えて、公表してくれた。

上の写真 入院中の病室(窓の外の景色がわからないように加工してあります)

 

強度の高いトレーニング後に感じた倦怠感

 4月上旬、Aさんが勤務するビルで、新型コロナウイルスの感染者が発生した。1000人あまりの人たちが働く大きな建物で、感染者が出たフロアからは離れているため、「まさか自分が感染することになるとは」と思っていたそうだ。

 発症するまでのAさんのトレーニングは以下の通り。サブ3ランナーとしては、平均的というよりも、少ないくらいだ。シーズンも一段落し、目指す大会もしばらくなくなったために、強度的には低いものになっている。

4月2日練習会+自主練 ジョグ 約19km。
クラブの練習会はこの後、当面自粛(休止)となる
4月4日トレラン(友人4人と近所の低山等) 約20キロ 約4時間半
4月5日ジョグ 約8km(1人)
4月7日ジョグ+1km 計約10km(1人)
4月9日ジョグ 約15km(途中から友人数名と出会い一緒に走る)
4月11日ジョグ+流し 約9km(1人)
4月12日トレラン(1人で近所の低山) 約15km 2時間余
下山後の帰宅中に体に汗冷えを感じる(風邪の予感)
4月13日出勤、軽い倦怠感あり。風邪の兆候か
4月14日出勤、倦怠感が少しあるため感染予防として午後から休暇
4月15日休暇、倦怠感あり
4月16日発熱(39℃台)、ひどい倦怠感、頭痛、息苦しさ
4月18日帰国者・接触者外来受診
4月19日PCR検査陽性、新型コロナウイルス感染症確定
4月20日入院。4日目くらいから熱が36度台に落ち着く
5月12日退院
5月20日現在、自宅療養中

 Aさんが「感染(発症)に影響したかもしれない」と考えているのは、4月12日の約2時間のトレイルランニングだ。「感覚的にロード30km走程度の疲労感があり、このあと一時的に急激に免疫が下がったのかもしれません」と言う。

 新型コロナウイルスに限らず、感染症予防でよく指摘されているのが免疫力。適度な運動は免疫力を高めるが、激しい過酷なトレーニングは一時的に免疫力が下がり、かえって感染・発症リスクを高めるという研究データもある。

 Aさんの場合は、たまたまトレイルランニングだったが、トラックでもロードでも、感染症が流行している時期に、負荷の高いトレーニングを行うことはリスクを伴うともいえる。そのために、手洗い・うがい・マスク着用などの普段からの基本的な予防対策はもちろん、バランスの良い食事や十分な睡眠など、疲労回復にもより一層気を配ることが大切になるだろう。

 ちなみに、発症・感染判明までの間に、一緒に走った友人の中で発症した人はいない。

画像: トレランにせよロードを走るにせよ、高強度のトレーニングは免疫力低下のリスクがあるといわれている(写真はイメージ)

トレランにせよロードを走るにせよ、高強度のトレーニングは免疫力低下のリスクがあるといわれている(写真はイメージ)

 その後は、報道されている他の感染者と同様の経過をたどる。倦怠感から発熱 → PCR検査 → 入院。インフルエンザの治療薬であるアビガンの服用を経て、幸いにも症状が改善し、熱も下がった。

 Aさんは、病室から出られず、窓も開けられず、面会もできない23日間の入院生活を経て陰性となった。5月20日現在、退院し、自宅で経過観察中だ。家族に移さず、重症化にはならなかったのは不幸中の幸いだ。

 しかし、肺炎になったことによって、心肺機能は衰えている。その上、発症から運動を控えているのため、全身の筋肉量が減った。

「私は走れるようになるのか、練習をいつから再開できるのか、肺炎の後遺症がいつまでも残るのか」と、不安を口にする。3km程度のゆっくりとした散歩でも、息苦しさがあるという。これまで4回もサブ3をしているランナーにとって、2カ月にも及ぶ練習中断は、耐えられないことだろう。トレーニングを再開できたとしても、ゼロからではなく、マイナスからのスタートになる。

 ランナーとしての未来に不安を感じながらも、今回、経験を公表したのは、「自分の経験が多くのランナーの少しでも役に立てば」という思いからだ。

 新型コロナウイルスは、夏にいったん終息に向かったとしても、秋から冬にかけて、第2波が起きる可能性を指摘する感染症の専門家もいる。多くのランナーが、Aさんの経験を知ることによって、感染を予防してほしい。

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