「ボールを奪える」ことは、チームにどんなメリットを与えるだろうか? ここでは、ジュニア年代での「ボール奪取」を掘り下げて学んでいく。技術の成熟と戦術の基礎的要素の習得を目指す東京武蔵野シティフットボールクラブU-15を2016年から率い、15年まで指導したジュニア・チームでは世界大会でも実績を残すなどカテゴリーを問わず活躍している戸田智史・監督に解説してもらう。その3回目は「ボール奪取」の基本として「立ち位置」を解説する。※5回(各回、前編・後編あり)に分けて掲載

(出典:『サッカークリニック』2015年8月号)

上のメイン写真=高い危機察知能力とフィジカルの強さを活かして相手からボールを奪うブラジル代表のカゼミーロ(左) (C)gettyimages

背後をとられず
下がりすぎない

 マッチアップする選手がボールを持っているときは相手との距離に迷うことはないでしょう。ボールを奪うために距離を詰めるだけです。しかし、それ以外の場合、相手との距離が自分の立ち位置における「正解」に大きくかかわってきます(下の図1)。

 守備の原則に従い、インターセプトを狙うか、マッチアップする選手がパスを受けた瞬間に奪いに行けるかを念頭に距離を考えます。同時に、自分の背後をとられない位置であることも考えなければなりません。

 そうしたことを考え合わせると、基本的にはボールに近い位置ならばマッチアップする選手との距離は近くなり、ボールから遠ければ距離は遠くなるのが自然です。

 ただし、これらは基本的なことと言えます。試合ではそれ以上のことを考えなければなりません。「相手チームのシステムと特徴とストロング・ポイント」、「ボール保持者の特徴」、「マッチアップする選手の特徴とマッチアップしているエリア」を考えた上で、最終的な立ち位置を探り、見極めていくということになります。

 背後をとられることを怖がると、背後のスペースを消すために守備の位置を下げたくなります。しかしそうしてしまうと、相手がボールを持てるスペースが中盤で空くため、自由にプレーされてしまいます。ずるずると下がるのではなく、思い切って最終ラインを上げることで中盤のスペースが狭まり、中盤でのプレスがかけやすくなるのです。積極的にチャレンジする主体的な守備は、そうした土台の上に成り立つことを小学校低学年のうちから理解させるべきです。

ボールとの距離に応じて変わる「立ち位置」

画像: 図1 ピッチ内でエリアを4つ程度に分け、「ボールのある位置」、「ゴールとの距離」を考え合わせて「立ち位置」を決める必要がある

図1 ピッチ内でエリアを4つ程度に分け、「ボールのある位置」、「ゴールとの距離」を考え合わせて「立ち位置」を決める必要がある

(ア)ボールから近い場合はマッチアップする選手にボールが渡るまでの時間が短くなる
→すぐにプレスをかけられる位置を考える
(イ)ボールから遠い場合はマッチアップする選手にボールが渡るまでの時間が長くなる
→距離をある程度は空けておくことができる
(ウ)自分たちのゴールから遠い場合はすぐにゴールを奪われる危険性が低い
→相手にある程度は自由を与えてもいいため、距離を空けておいてもいい
(エ)自分たちのゴールから近いエリアの場合は相手にボールが渡った瞬間にゴールを狙われる可能性が高い
→自由を与えない距離をとりつつ背後もとられないようにする

チャレンジ&カバーの
バランスを考える

 試合中はやはり、「立ち位置」の正しい答えを導き出すことは難しいでしょう。それは、攻撃側は幅と深さを広げることを考え、守備側はコンパクトにしようと考えるからです。守備側がコンパクトにするのは、リスク・マネジメントを考える上でチャレンジ・アンド・カバーをしやすくするためです。これについて、局面を切り取った「2対2」と「3対3」で考えてみましょう。

 まず「2対2」です。ボール保持者についていた味方が振り切られてしまったら、守備側のもう1人の選手はマッチアップする選手をフリーにしてでもボール保持者に詰めることになります。それができる立ち位置は、(1)ゴール、(2)ボール、(3)マッチアップする選手、の位置を考えながら決める原則から導き出されるはずです。

「3対3」では、サイドにボールがある場合、守備側の布陣はボール保持者に近い相手にマッチアップする選手と遠い相手につく選手とでは相手との距離が違います。遠い選手は自分の相手からある程度、距離をおき、カバーリングを考える必要があるからです。しかし、これもボールからの距離に応じて相手との距離も空けていると考えれば、(1)ゴール、(2)ボール、(3)マッチアップする選手、で立ち位置を考える原則から外れていないのです(下の図2)。

「全体の中での立ち位置」ということを考えず、マッチアップする選手を抑えようとする意識ばかりが強いとこの動き方は身につきません。そこで「2対2」や「3対3」というように局面を切り取った形でのトレーニングで、チャレンジ・アンド・カバーの動きも含め、(1)ゴール、(2)ボール、(3)マッチアップする選手、の位置を見ながら修正し続ける習慣を身につけるといいでしょう。また、数的同数のトレーニング・メニューはよりサッカーに近くなります。駆け引きなどの要素も自然と出てくるため、攻守両面でいいトレーニングになると思います。

カバーリングの考え方

画像: 図2

図2

守備側は最終ラインで1人余らせる形をとりたい。そのため、ボール保持者から最も遠くにいるDF3は、マッチアップする選手(右端の白の選手)をある程度、距離をとってでもカバーを意識(矢印A)。もちろん、本来のマッチアップする選手にパスが渡る場合も想定しておく(矢印B)が、マッチアップする選手を適宜受け渡してもいい

(取材・構成/長沢潤)

画像: 守備側は最終ラインで1人余らせる形をとりたい。そのため、ボール保持者から最も遠くにいるDF3は、マッチアップする選手(右端の白の選手)をある程度、距離をとってでもカバーを意識(矢印A)。もちろん、本来のマッチアップする選手にパスが渡る場合も想定しておく(矢印B)が、マッチアップする選手を適宜受け渡してもいい

解説者プロフィール

戸田智史(とだ・さとし)/1976年8月19日生まれ、東京都出身。2002年から横河武蔵野フットボールクラブのスクールコーチ、ジュニアユースコーチを歴任し、08年からジュニア監督を務めた。09年に全日本少年サッカー大会で3位に導き、14年にはダノンネーションズカップ世界大会に日本代表として出場し、初優勝をもたらした。16年から名称を変更した東京武蔵野シティフットボールクラブのU-15で監督を務めている

前編はこちら

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