※写真上=ファンの大声援を受け土俵に上がるも、栃煌山の寄りに力なく土俵を割った稀勢の里
写真:月刊相撲

栃煌山(寄り切り)稀勢の里

 稀勢の里が3日目の土俵に上がった。力強い横綱土俵入りを本場所で見るのは最後かもしれないなと思いながら見守った。初日、2日目の内容から、とても勝つ姿は想像できなかったからだ。

 結び前の一番で稀勢の里が登場すると、館内は大声援。「頑張れー」「勝ってくれー」と稀勢の里の背中を押す。憎らしいほど強いと言われた北の湖は晩年、ファンから「頑張れ」と言われて、ガックリしたという。勝って当たり前の横綱は、同情されたら終わりなのだ。

 この日の対戦相手は同学年の栃煌山。20代前半から大関を目指して切磋琢磨したライバルだ。稀勢の里はとにかく立ち合いで強く当たろうと意識していたのだろう。頭からぶつかり踏み込んでいったが、若いときからの悪癖である腰高、脇甘をつかれてモロ差しを許してしまう。

 それでも、右手を相手の首に巻き、左からおっつけて振りほどこうとするが、そこまでの力はなく、土俵際ではあきらめたように力を抜いた。土俵に対してか、栃煌山に対してか、軽く頭を下げたように見えた。これが最後の相撲になるのかと感じた人も多かっただろう。

 稀勢の里は敗戦後の支度部屋ではひと言も語らず、午後7時に田子ノ浦部屋へ。約1時間半、師匠と話し合ったが、集まった報道陣に進退は明言せず、無言のまま自宅に帰った。部屋の関係者も「今日は取材対応はしないので、撤収してください」と呼びかけた。

 明日の朝、引退を表明するのだろうか。それとも、まだ土俵に上がるのか。今の稀勢の里では、(4日目の相手の)錦木に勝てないだろう。もう楽になってもいいのではないか。誰も責めたりしない。稀勢の里の場合、横綱になるまでが一大ストーリーだったのだから。

文=山口亜土


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