第95回箱根駅伝は東海大の初優勝で幕を閉じた。そして選手たちは次の、それぞれの目標へと向かい出す。日本選手権1500m王者である東海大4区・館澤亨次が目指すものは。

※写真上=箱根駅伝のフィニッシュエリアでアンカーの帰りを待つ館澤(中、写真/JMPA)

秋から駅伝モード

 箱根駅伝で初優勝を果たした東海大で準エース区間と呼ばれる4区(20.9km)を走り、区間2位(1時間02分37)でチームに貢献した館澤亨次(3年)の主戦場は、中距離の1500mだ。多くが長距離の5000m、10000mに取り組む箱根駅伝の出場選手のなかで異色と言えるだろう。ただ、館澤の場合は取り組むだけではなく、日本選手権で2連覇中の日本トップランナーだ。
 春、夏は1500mに取り組み、秋から冬の駅伝を目指す。練習内容も大きく変わるだけに簡単なことではない。
「11、12月の練習は本当にきつかったです。前回の11、12月は練習についていくことができませんでしたが、今回はついていくことができました。ただ、ついていけてしまったからこそ、きつい部分もありました」
 そう苦笑いと充実の交じった表情で箱根駅伝への取り組みを振り返ったが、話が2019年シーズンに向くと、その表情は一気に引き締まった。

画像: 箱根駅伝4区を走る館澤(写真/黒崎雅久・陸上競技マガジン)

箱根駅伝4区を走る館澤(写真/黒崎雅久・陸上競技マガジン)

自分の位置を知ったアジア大会

 2018年は館澤にとって転換点となるかもしれないレースを経験した。8月、インドネシア・ジャカルタで行われたアジア大会だ。
 日本王者として臨んだこの大会は、メダル獲得を目標としていた。しかし、大会最終日の決勝、スタートから思うような位置取りができず、スパートも通用せずに9位に終わった。
 初めての日本代表の舞台で、いい経験になったのでは。そう思いながら取材エリアで待っていたのだが、館澤はうなだれるように現れた。そして悔しさをかみ殺すようにして言葉を振り絞った。
「残り1周でいいポジションを取って、ラスト200mでスパートをかけて勝負と思っていましたが、何も通用しなかった。最低限と思っていた入賞にも届かなかった。日本を代表してここにいるのに、日本で1500mをやっている人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいです」
 日本国内では武器と思っていたスパートも、アジアでは歯が立たなかった。レースも思うように運べず、何もできないままレースは終わってしまった。それでも収穫がなかったわけではない。海外の選手たちと立ち位置がどれだけ離れているかを実感できた。
 だからこそ、2019年はドーハで行われる世界選手権に出場することが目標だ。最大の目標である2020年東京オリンピックのためにも。
「東京オリンピックで勝負するためにも、まずは世界選手権に出場できなくては話になりません。出られなければ、仮に東京オリンピックに出場できたとしても出るだけで終わってしまいますから」
 世界とはどれだけ離れているのか、戦うためには何が必要なのか。それを知るためにはその舞台に上がるしかない。アジア大会で得た教訓だ。

画像: アジア大会では海外選手との差を痛感した(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

アジア大会では海外選手との差を痛感した(写真/中野英聡・陸上競技マガジン)

次への成長のヒントを

 とはいえ、世界選手権に出場することも非常に高いハードルだ。世界選手権1500mの参加標準記録は3分36秒00。館澤の1500mの自己ベストが3分40秒49で、日本記録でさえ3分37秒42(2004年、小林史和・NTN)だ。
「今までと同じではダメ。そのためにも1月末から4月までアメリカ・フラッグスタッフに遠征に行くので、次への成長のヒントを見つけてきたいです」
 その成果を試すのは、4月にドーハで行われるアジア選手権だ。
「まだ決まったわけではないのですが、出場できればと思っています。箱根に向けた練習なかで去年以上に培うことができた体力を、アメリカ遠征でどう生かせるのか。箱根に向けたトレーニングと、アメリカでのトレーニングの成果を試したい。今度こそメダルを取りたいです」
 昨年、通用しなかったアジアの強豪を相手に、どれだけ成長したかを確認するにはこれ以上ない舞台だ。
「箱根駅伝へ向けてトレーニングをしてきた20kmを走る体力は、間違いなく生きてくると思います」
 箱根から世界へ、という箱根駅伝創始者の金栗四三の理念は、マラソン以外にも通ずることを見せてもらいたい。
「あ、あと自分は来シーズンも駅伝はやるつもりです。やらない、みたいな報道が一部ありましたが、やる気満々なので。『もし、世界選手権に出場することができれば駅伝に間にあわないかもしれない』と言っただけで、駅伝と両立するつもりです」と、館澤。ひと回り大きくなって箱根路に戻ってきそうだ。
文/早川大介


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