大会前に混戦が予想されたインターハイ(沖縄)男子スプリント種目は、鵜澤飛羽(築館高2年・宮城)の圧勝で決着した。2年生の100m、200m二冠は、1991年の荒川岳士(宇都宮東高・栃木)以来、28年ぶりの偉業だ。2種目とも惜しくも追い風参考ながら(公認記録は追い風2.0mまで)、10秒19(+2.9)、20秒36(+2.1)の快走を見せた。公認での高2最高記録は100mが桐生祥秀(洛南高・京都、現・日本生命)の10秒19(2012年)、200mはサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大城西高・東京、現・フロリダ大)の20秒34(15年)で、いまや100m9秒台へと突入した2人に次ぐような記録をたたき出したと言える。

※写真上=高校男子短距離界のトップステージに一気に駆け上がってきた鵜澤
撮影/黒崎雅久(陸上競技マガジン)

 5月初旬に足首のじん帯を損傷し、インターハイ路線を断念することも考えたという鵜澤。どうにか出場を決めて臨んだ県大会、東北大会はいずれも向かい風のなかのレースで、実力を計りにくい部分があったことから、全国でも“有力候補の1人”という見方が強かったのだ。ただ、東北大会の後に1週間ほど休みを挟むと、少しずつ練習を積めるようになり、7月の宮城県選手権100mで10秒45(+0.9)をマーク。鵜澤自身は「もしかしたら勝てるのではないかと思った」と、インターハイに向けて手応えを得ていた。

 大会2日目(8月4日)の100mでは、「いつもスタートで出遅れるので、慌てずに得意の後半で巻き返せばいいと考えていました」と50m過ぎからリードを奪った。2日後の200mでは、コーナーを抜けたときに勝利を確信。準決勝で力を温存して高2歴代5位の20秒94(+0.5)だったことから、20秒7台くらいを考えていたといい、「まさかの(20秒)3台で、思わず叫んでしまった」と興奮気味に振り返った。

画像: 100m決勝では50m過ぎからリードを奪い、そのまま逃げ切った 撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)

100m決勝では50m過ぎからリードを奪い、そのまま逃げ切った
撮影/中野英聡(陸上競技マガジン)

 宮城県石巻市で育ち、11年の東日本大震災を機に栗原市へ。築館中では野球部に所属しながら、陸上でも3年時に200mで東北大会4位に入っている。築館高入学後は陸上部一本で活動。1年時のインターハイ路線は100m、200mとも東北大会の準決勝止まりだったが、秋には国体少年B100mで決勝進出、U18日本選手権200mのB決勝で1着を取るまでになった。ただ、国体はフライングで失格に終わっており、その悔しさが今季の飛躍につながった。

 取材中に報道陣を自然と笑顔にさせるような明るさが魅力だが、競技に対してはストイック。「努力、練習量は負けない自信があります。陸上のセンスはないけど、努力する才能はあると思う」と胸を張る。食生活もお菓子やジュース、ファストフードは一切控え、自宅で親に作ってもらった料理しか口にしないという徹底ぶりだ。

画像: ストイックに陸上に打ち込む鵜澤。秋以降の活躍も楽しみだ 撮影/椛本結城(陸上競技マガジン)

ストイックに陸上に打ち込む鵜澤。秋以降の活躍も楽しみだ
撮影/椛本結城(陸上競技マガジン)

 今後は追われる立場になり、注目度が高くなるが、「別にこれまでと何も変わらない。次の記録を狙って淡々とやるだけ」と飄々(ひょうひょう)としている。今大会と同等の記録を公認で出せるように、鵜澤は信じた道を歩み続ける。

文/石井安里

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