MGCで男女2人ずつの東京オリンピック代表が決まった。しかし、これで代表争いがすべて終わったわけではない。まだ、1枠、残っている。その残る1枠は、来年3月に決まるが、この1枠を巡っても熾烈な戦いが繰り広げられそうだ。

写真上=大迫はMGC3位の大迫。ファイナルチャレンジの対象となるタイムは自身の持つ日本記録となるだけに、今後の動向に注目が集まる
写真/川口洋邦(陸上競技マガジン)

 3枠目の選考基準を改めて整理すると、「MGCファイナルチャレンジで、MGCファイナル設定記録(男子:2時間5分49秒、女子:2時間22分22秒)を突破した記録最上位の競技者」とある。

 MGCファイナルチャレンジは男女3レースずつ(※男子:福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン、女子:さいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソン)あり、MGCシリーズ(※2017年夏から2019年春に行われた国内の男子5大会、女子4大会)が開催されていた期間の最高記録より1秒速い記録に設定された“MGCファイナル設定記録”を破ることが絶対条件。そして、複数人いる場合はその中で最上位にならなければならない。また、「MGCシリーズに出場(完走)、またはMGC出場資格を有することを条件とする」という注釈が付き、MGCで敗れた選手以外にも、再度オリンピックのチャンスが巡ってくる。

●それぞれの実力と思惑

 ただし、男子は大迫傑(Nike)の持つ日本記録を更新しなければならない。日本人で2時間5分台で走っているのは大迫しかおらず、現実的に男子のMGCファイナル設定記録はかなりハードルが高い。現時点では、MGC3位の大迫が、3枠目の有力候補と見ていい。

 もちろん2時間6分台の記録をもつ設楽悠太(Honda)や井上大仁(MHPS)にも十分チャンスはある。MGCのレース後、「ファイナルチャレンジでやるしかない」と井上。一方の設楽は「(ファイナルチャレンジについて)今は考えたくない」と言うに留めたが、両者とも再チャレンジするだろう。特に設楽は、今回のMGCでは大逃げに失敗したが、冬レースであれば、単独走でもハイペースで押し切る力はある。

画像: 自分自身のスタイルを貫いたともいえる設楽。大迫の日本記録更新の可能性をもっとも秘めた選手だ 写真/桜井ひとし(陸上競技マガジン)

自分自身のスタイルを貫いたともいえる設楽。大迫の日本記録更新の可能性をもっとも秘めた選手だ
写真/桜井ひとし(陸上競技マガジン)

 また、MGCに向けた練習の過程でも、世界の高速レースに対応するべく、質の高い練習に取り組んできた佐藤悠基(日清食品グループ)も「最後、チャンスがあるので、ミスなくしっかりと体をつくっていきたいと思います」と再チャレンジに意欲を示している。

画像: MGCでは完走者中、まさかの最下位となった井上だが、実力は折り紙付き。ラストチャンスにかける 写真/桜井ひとし(陸上競技マガジン)

MGCでは完走者中、まさかの最下位となった井上だが、実力は折り紙付き。ラストチャンスにかける
写真/桜井ひとし(陸上競技マガジン)

 MGCに出場しなかった選手では、村山謙太(旭化成)も面白い存在になりそう。MGC後にTwitterで「3枠目目指して頑張ろう。」とコメント。過去にも前半からハイペースなマラソンを見せているが、今月のベルリンマラソンをステップに、2時間5分台の準備を進めていくだろう。

 大迫は「コーチと相談して、待つのか、それとも、自分自身もまた自己ベストを狙っていくのか、しっかり考えていきたい」と言うに留めているが、大迫がMGCファイナルチャレンジに挑むかどうかも1つの焦点となる。

●女子
大混戦模様の結末は?

 女子は、MGCファイナル設定記録は、日本歴代9位の松田瑞生(ダイハツ)の記録が基準となる。男子のタイムに比べればより現実的ではあるが、MGCで4位だった当の松田が、「簡単に出せる記録ではないと思うので、今以上に練習を積んでいきたいと思います」と言うように、こちらも易々とクリアできるタイムではない。やはりMGC3位の小原怜(天満屋)が有力候補か。

画像: 僅差でMGC3位となった小原。レース後の取材では、落ち着いた様子で悲壮感もなく答えていただけに、ファイナルチャレンジにも期待を抱かせる 写真/川口洋邦(陸上競技マガジン)

僅差でMGC3位となった小原。レース後の取材では、落ち着いた様子で悲壮感もなく答えていただけに、ファイナルチャレンジにも期待を抱かせる
写真/川口洋邦(陸上競技マガジン)

画像: MGCの優勝候補にあげられていた松田は力を発揮できず。持ち前の負けん気と前向き姿勢で、東京五輪の代表権を目指す 写真/椛本結城(陸上競技マガジン)

MGCの優勝候補にあげられていた松田は力を発揮できず。持ち前の負けん気と前向き姿勢で、東京五輪の代表権を目指す
写真/椛本結城(陸上競技マガジン)

 しかし、女子は、松田のほか、今回のMGCで序盤をハイペースで引っ張った一山麻緒(ワコール)、途中棄権した上原美幸(第一生命グループ)、欠場した関根花観(日本郵政グループ)といった、マラソン歴が浅いスピードランナーが多いのも事実。また、安藤友香(ワコール)は、自己記録ではMGCファイナル設定記録を上回る。2時間22分22秒以内で走れるポテンシャルをもった選手は多い。

 MGCファイナルチャレンジは男女3レースずつ指定されているが、男子はおそらく記録が出やすい東京マラソンに、女子は大阪国際女子マラソンか名古屋ウィメンズマラソンに、有力選手が集中するだろう。MGCの興奮をもう一度、あと3レース、MGCファイナルチャレンジでも味わうことができそうだ。

文/和田悟志

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