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2022-09-07

【NFL】ドラフト全体1位エリートの挫折 パンサーズで再起かけるQBメイフィールド

再起をかける、元全体1位指名のエリートQBメイフィールド=photo by Getty Images

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 アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは現地9月8日(日本時間9月9日)に2022年シーズンが開幕する。チームの中心である先発QBが変わるいくつかのチームに焦点を当ててみた。(写真はすべてGetty Images)


 クリーブランド・ブラウンズは7月6日、QBベイカー・メイフィールドをカロライナ・パンサーズにトレードした。見返りは2024年の条件付きドラフト指名権。ブラウンズはメイフィールドのパンサーズでのプレー時間に応じて、2024年に4巡または5巡の指名権を受け取るという。ブラウンズは、ヒューストン・テキサンズから、QBデショーン・ワトソンをトレードで獲得し、超大型契約を結んでおり、メイフィールドの放出は時間の問題だった。2018年のドラフト全体1位指名だったメイフィールドは、ブラウンズ在籍4年でチームを追われたのだった。

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 パンサーズには同年全体3位でニューヨーク・ジェッツに指名されたQBサム・ダーノルドが在籍している。4年前のエリートQB2人が、同じチームでポジション争いとなった。メイフィールドは、プレシーズンゲーム2試合で、パス13/22、134ヤード、2TDでインターセプトは無かった。そして、ダーノルドの負傷もあって、開幕スターターの座を得た。


2018年ドラフト全体1位のメイフィールド、同3位のダーノルドが、同じチームに揃うとはだれが予想しただろうか=photo by Getty Images

 オクラホマ大学時代は、全米最優秀選手に贈られるハイズマントロフィーを、ウォークオン(一般入部学生)として初めて受賞。ブラウンズ再建の切り札として期待を背負ったメイフィールドが、チームから見切りを付けられた理由は、QBとしての伸び悩みだ。

■2018年:14試合(13先発)6勝7敗 
パス310/486、63.8%、3725ヤード、27TD14INT、レーティング93.7
■2019年:16試合(16先発)6勝10敗
パス317/534、59.4%、3827ヤード、22TD21INT、レーティング78.8
■2020年:16試合(16先発)11勝5敗
パス305/486、62.8%、3563ヤード、26TD8INT、レーティング95.9
■2021年: 14試合(14先発)6勝8敗
パス253/418、60.5%、3010ヤード、17TD13INT、レーティング83.1

 3年目までは期待通りの成長曲線だった。プロ2年目で21だったインターセプトが、3年目の2020年はタッチダウン数の1/3以下の8本に減った。何よりも、2007年のデレク・アンダーソン以来、13年ぶりにチームを二桁勝利に導いたQBとなった。

昨シーズンの第17週スティーラーズ戦でのメイフィールド、ステファンスキーHCも厳しい表情=photo by Getty Images

 それが、2021年は明らかに失速した。

 この年、ブラウンズのバックフィールドは、リーグ屈指の陣容だった。WRにオデル・ベッカム・ジュニア、ジャービス・ランドリー、ドノバン・ピープルズジョーンズ、TEにデビッド・ジョクウ、オースティン・フーパーとタレントが揃った。

 加えてRBにニック・チャブ、カリーム・ハントという強力なタンデムがいた。ハントの負傷の後はデアーネスト・ジョンソンが台頭して穴を埋めた。ランはNFL4位だったし、オデル・ベッカムがゲームプランに不平を言って離脱した時も、チームはメイフィールドをかばった。

 しかし、メイフィールドは期待に応えられなかった。第5週以降に先発した10試合では、3連敗を含む3勝7敗。パス300ヤード以上は1試合だけで、15TDに対し11INTを喫した。プレーオフの可能性があった終盤のパッカーズ戦、スティーラーズ戦では2試合で6INTだった。利き腕ではない左肩の負傷に悩まされていたとはいえ、先発した以上は、結果が求められる。それがNFLのQBだ。

昨シーズン最終戦を終え、うつむきながらブラウンズの本拠地を去るメイフィールド=photo by Getty Images

 メイフィールドの問題点は、パス精度だ。NFLの全QBの中で、2018年以降の4シーズン、 最も多くのインターセプトを投げたのがメイフィールドで56。2位がダーノルドで52となっている。

 ドラフト1巡上位指名のQBは、プロ入り後の数年は育成のため、インターセプトの多さには目をつむってもらえる。

 1970年ドラフト全体1位だったテリー・ブラッドショー(スティーラーズ)は、最初の4シーズンで、73インターセプト(41TDパス)、1987年全体1位のビニー・テスタバーディー(当初はバッカニアーズ)は同じく4シーズンで81インターセプト(55TDパス)という数字を残している。それでも、ブラッドショーは、名将チャック・ノールの我慢強い指導の下で、ついに大輪の花を咲かせ、スーパーボウル4度制覇の名QBとなった。テスタバーディーも、スーパーボウルにこそ縁がなかったが、チームを転々としながらも、44歳まで21シーズンの現役生活を送った。

 しかし、今季のパンサーズ、3年目のマット・ルールHCは、メイフィールドの成長を待つ余裕がない。過去2シーズン5勝11敗、5勝12敗。今季も敗戦が続くようなら、シーズン中の解任も容易に起こり得る。

 パンサーズのスキルポジションにも問題はある。WR、TEで、シーズン1000ヤードレシーブを複数年経験しているのはD.J.ムーアだけ。RBは、エースのクリスチャン・マキャフリーが負傷がちで過去2シーズンで10試合しか出場していない。控えのチューバー・ハバードはパワー不足、ドンタ・フォアマンは経験不足が否めない。昨年のブラウンズの陣容とは比べるべくもない。再起の場が与えられたメイフィールドだが、楽観視はできない。

 開幕戦の相手は、因縁のブラウンズだ。メイフィールドは開幕戦の先発が決定した後、次のように語っている。

「そこ(ブラウンズ)には多くの愛着がある。それは明らかだ」

「(感情を持たない)ロボットになって、開幕戦のカードが何の意味もないと言うつもりもない。意味あるものになるだろう」

「事前に熟慮したりはしない。一旦ラインの内側に入れば、私は戦う男なのだ」

プレシーズンのビルズ戦でまずまずの活躍を見せたQBメイフィールド=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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