12月13日、アメリカンフットボールの大学日本一を決める甲子園ボウルで、関学大と日大が対戦する。両校が対戦するのは、悪質タックル問題が起きた2018 年以来となる。当時、関学大監督で、昨シーズン勇退した鳥内秀晃氏に話を聞いた。
(聞き手・構成/生島淳)
今年は大人の度量が問われる1年やったね。2020年はコロナ禍で、いろいろな問題が浮き彫りになったし、本当に必要なことが分かった1年だったと思うね。特に、部活動を含めて、教育の現場に携わる大人の行動、判断、それに度量が問われる1年だったでしょう。
今年は反省も大切で、野球の関係者はほんまに甲子園ができなかったのかどうか、検証する必要があると思うし、大学のリモート授業の環境が整ったのは良かったのかもしれへんけど、すべてがリモートでええのかどうかは、きっちりと検証すべきだと思うよ。
すべての判断基準は、学生のためになっているかどうかです。
そんな状況で関西学生アメリカンフットボールは、リーグ戦ができひんかった。勝ち抜き戦だから、一回負けたらそれで終わり。4年生にとってはしんどかったと思います。
そりゃ、コロナウィルスがどんなもんか分からなかった3月、4月くらいは慎重になって当たり前でしょう。ただ、その後も「感染者を出したくない」という発想で学生の活動を止めるのは、本当に教育的に正しいのかどうかと思ってたね。
リスクはあるけれども、じゃあ、学生のために何ができるのかを探るのが大人の仕事とちゃうの? 今はまた、12月に入ってから感染が拡大してきて、いろいろな判断をするのは難しいとは思う。でも、「いまできること」を確かめていくことが、2021年に向けても大切やで。来年になっても、完全に収束しているかどうか分からんから、今年のケースを参考にして、学生のためにできることを増やしていければいいよね。
俺? 俺のことはどうでもええねん。
俺が何してるかって? 朝の5時から配達やってます。実家の製麺所の仕事ですよ。
ほんまはね、監督も引退して、去年には本も出して、今年は講演やったりして大金持ちになるはずやったんやけど、コロナ、コロナでキャンセルの嵐。アテが外れたね。頼むで、ほんまに。邪魔せんといてください。
コロナの影響もあって、関西学院のキャンパスにも立ち入りがなかなかできなくて、練習はほとんど見てないです。それにしても、11月28日の関西学院と立命館の甲子園ボウルの出場権を懸けた試合、あれは関西学院の負け試合やったね。第4Qの立命館のラン攻撃を見て、「これは負けたな」と思ってた。
ところが、最後はディフェンスが踏ん張って立命館の終盤の得点機を防いで、最後のフィールドゴール(FG)に結びつけた。QBの奥野、WRの鈴木もしっかりと練習通りのプレーができたから、フィールドゴール・レンジまで持っていけたし、逆転のFGを決めた永田も、練習通りだったんでしょう。コロナ禍でたいへんなシーズンやったと思うけど、いい準備ができてたんちゃうかな。
11月8日の関西学生1部トーナメント準決勝・関学大対神戸大を観戦する鳥内氏 撮影:佐藤誠甲子園ボウル。ここで負けたら面白くないねん
今度の日曜日は甲子園ボウルです。関西学院と日大の一戦。私が学生のときは、それこそコテンパンにやられた相手が日大やった。4年のときは勝つチャンス、あったけどね。ひとつのミスで消えてしもうた。
その試合、そのミスがあったからこそ、「いつ、自分が勝負を決める仕事をせなあかんようになっても、ちゃんと準備しといてください。練習では試合を想定して、試合では練習のように、いつも通りやってください」と学生たちにずっと伝えてたわけです。
日大に一度も勝てなかったことが、私の監督人生の始まりだったわけです。
マスコミのみなさんは、一昨年の因縁とかで注目するかもしれんけど、蒸し返さんとええんちゃうかな。2020年、今年の学生であり、今年のチームやからね。
関西学院と、日大の伝統校同士のライバル対決いうことで、よろしく頼みます。ただね、あっこまで行って、負けたら面白くないねん。勝たな、おもろないよ。今年はいろんなことがあったけど、いい試合見せて欲しい。それだけです。
鳥内秀晃(とりうち・ひであき)◎1992年に関西学院大学アメリカンフットボール部監督就任。以後、甲子園ボウルの優勝は12回を数え、02年にはライスボウルも制覇した。2016年には世界大学選手権日本代表チームを指揮。昨シーズンを最後に監督の座から退いた。
三菱電機杯第75回毎日甲子園ボウルの試合概要、チケット、大会記念グッズなどは以下公式サイトを参照ください。
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