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2021-01-18

【相撲編集部が選ぶ初場所9日目の一番】

単独トップを突っ走る大栄翔がベテラン宝富士の叩きにバッタリ落ち、連勝は8で止まった

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宝富士(叩き込み)大栄翔

中日を終えて大栄翔が全勝で単独トップ。平幕力士が後続に2差をつけての単独トップは初めてのことだそうだ。これまで前半戦で上位を蹴散らし、後半戦で番付下の力士に負けて失速という例を益荒雄や安芸乃島など何度も見てきた。相撲は上に勝ったから下にも勝てるという単純なものではないのだ。

大栄翔の9日目の相手は宝富士。過去の対戦では宝富士が7勝6敗とリードし3連勝中だ。大栄翔にとっては嫌な相手だが、ここを突破すれば初優勝がグッと近づいてくる。

立ち合い、いつものように頭から当たってモロ手で突き放す大栄翔。宝富士は後ろに下がりながらも左へ左へと動き、左肩を前に出した半身の体勢でしのぐ。大栄翔は休まず逃げる相手を追って突っ張るも、突きをはずされたときに足が一歩出ず、バッタリと落ちてしまった。

宝富士の勝因は攻めなかったこと。半身の構えは守りには強いが、自分から攻めることはできない。初めから大栄翔の突き押しをしのいで、相手が疲れてきてからが勝負と思っていたのだろう。強烈な大栄翔の突きも相手が正対しないで横に動いていては威力が半減してしまう。これまでは相手も一発で持っていこうという姿勢でぶつかってきたから吹っ飛ばせていたのだ。宝富士がベテランの老獪さを見せた一番だった。

「立ち合いで飛ばされないように集中していた。踏み込めていたんじゃないかな。相手は思い切り突っ張ってくるので、いつもかいくぐってイナしたりするけど、まずは押し負けないようにと心掛けている」と宝富士は語る。

土がついた大栄翔だが、立ち合いの角度や踏み込みは悪くなかった。ただ、勝負を焦りすぎたかなという気がする。「攻めはよかったと思うんですけど、無理に攻めすぎたかな。あまりに勝ち急ぎすぎました」と大栄翔自身も敗因がわかっている。「悔しいですけど、明日から気持ちを切り替えてやっていきたい」と前を向いた。

9日目を終えて優勝争いは1敗で大栄翔が単独トップ、2敗は正代ただ1人、3敗で朝乃山ら10人となっている。大栄翔が失速したら大混戦となりそうだが、どんな結末が待っているのだろうか。

文=山口亜土


 大相撲初場所9日目 幕内取組結果

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