朝乃山(叩き込み)隆の勝中盤の10日目を終えて1敗で1差単独トップの大栄翔が阿武咲に土俵際で突き落とされて2敗目。大栄翔の相撲は悪くなかった。立ち合いの角度、踏み込みもよかったのだが、勢いよく前に出すぎたか。こうなると3敗勢にも優勝のチャンスが出てくる。
3敗は朝乃山、明生、逸ノ城の3人だったが、逸ノ城が敗れ、明生が勝って勝ち越しを決めた。朝乃山は関脇の隆の勝と対戦が組まれた。
軍配が返り、先に両手をついて待つ朝乃山。当たってすぐに得意の右を差す。前に出ながら左を伸ばして上手に触るも取れず、そのまま圧力をかけていく。隆の勝が懸命に振りほどいて押し返していくところ、朝乃山はタイミングよく叩いて8勝目。バタバタした相撲だったが、勝ち越しを決めてカド番を脱出した。
「ちょっと上体が高くて、足の運びが悪かったんですけど、何とか踏ん張れた。あの相手には9月場所で一方的に負けて悔しい相撲だったので、何が何でも勝つという気持ちでいきました」と朝乃山。
カド番のプレッシャーもあったと思うが、「カド番を意識しすぎると硬くなるので、それほどは意識しないようにしました。ただ序盤は自分の相撲が取れずに苦しんでいた」と語る。
部屋には朝乃山以外に関取がおらず、稽古相手は幕下になってしまう。幕内上位の圧力とは比べものにならないので、相撲カンが戻るのに時間がかかったのだろう。しかし、これで7日目から5連勝。「自分の相撲が取れるようになってきているので、今は自信を持って土俵に上がっています」と頼もしい。
12日目の相手は連敗している照ノ富士。「自分の相撲を取れば結果はついてくると思うので、しっかりと攻める相撲を取りたい」と意気込む。
結びでは2敗の正代が隠岐の海と対戦。ほぼ負けている相撲が取り直しとなり、取り直しの相撲では負けた相撲が相手の勇み足で勝ちとなった。正代に運が向いているのかなという気もするが、取り直しの一番で右手を使っていなかったのが気になる。最初の相撲で痛めたのかもしれない。
とにかく大栄翔の失速で優勝の行方がわからなくなってきた。残り4日、優勝ラインは12勝だろうが、11勝まで下がる可能性もありそうだ。
文=山口亜土
大相撲初場所11日目 幕内取組結果
令和三年大相撲力士名鑑(「相撲」編集部/編)
相撲 1月号 初場所展望号(No.917)