アメリカンフットボールの「Xリーグ」は6月2日、東日本社会人選手権「パールボウル」トーナメントの準決勝2試合があり、第2試合では、オービックシーガルズが富士通フロンティアーズを破って、3年連続で決勝に進出した。6月17日、東京ドームの「パールボウル」で、もう一方の準決勝を勝ち上がったIBMビッグブルーと対戦する。
常に先手を取り続けたオービックが、富士通の反撃を振り切って3年連続パールボウル進出を決めた。
オービックは第2クオーターにQBスカイラー・ハワードがWR西村有斗に45ヤードのタッチダウン(TD)パスをヒットし。さらにパントブロックによるセーフティーや、K星野貴俊の2本のフィールド(FG)で着々と加点した。 富士通は第2クオーター11分過ぎにRB金雄一がTDを決め、流れを取りもどすと、第3クオーター1分に、QBマイケル・バードソンからWR岩松慶将にTDパス、さらに2ポイントコンバージョンを決めて、15-15の同点とした。
しかしオービックは第3クオーター5分にRB李卓のTDランで再び勝ち越すと、第4クオーター3分にはQBスカイラーからWR前田眞郷へのTDパスで突き放した。富士通は第4クオーター残り8秒で1TDを返したが、すでに勝敗は決していた。
過去10年間、日本のフットボールをリードしてきたライバルの戦いは、オービックが富士通を攻守両面でオーバーパワーした。
オフェンスでは、QBスカイラーが久々に会心のパフォーマンスを見せた。西村への45ヤードTDパスや、前田への57ヤードパス、33ヤードTDパスなど、強いロングボールを連発。パス17/23、274ヤード、2TDと、NCAA方式のQBレーティングで200を超える202.68を記録した。米国人QBがチームに加わるようになって4年目だが、2年続けて同じQBとなったのは今季が初めて。それがプラスに働いた形だ。
RB李卓らのランも交えて、オービックオフェンスは、2回目のドライブから8シリーズ連続でパントを蹴らず、7シリーズ連続で得点した。K星野が成功させた49ヤードを含む4本のFGが、効果的だった。
ディフェンスでは、昨秋、10月のリーグ戦、11月のプレーオフ準決勝の2度に渡って煮え湯を飲まされた、富士通のQBバードソンを徹底的に狙った。
DLバイロン・ビーティー・ジュニアや仲里広章、江頭玲王、さらにこの試合が日本デビューとなった、新米国人選手ジェイソン・ファナイカらが強烈な圧力をかけ続けた。NCAA方式では、QBサックはランのロスヤードと計算されるため、バードソンのランはマイナス55ヤード。RBトラショーン・ニクソンの出場も限定的だったため、富士通のチームのラン成績はわずか4ヤードとなった。
オービックは、実質的なオフェンスコーディネーターとして、濱部昇コーチがスポッター席に上がってフィールドを鳥瞰、地上の新加入・長谷川昌泳コーチと意見を交換しながらプレーを作り上げている。この日のスカイラーのパスも、決して縦の攻撃やロングを意識したのではなく、ランと有機的に組み合わせる中で結果的にそういうプレーコールになったという。
「ハイエナジーな試合だった。我々も相手も」と振り返ったスカイラー。自身について、昨年との違いを「コミュニケーションだ」という。「我々のチームは、本当にグッドタレントがそろっている。彼らと共に、昨年から、フットボールをイノベートして、日々進化している。日本語も学んでいて少しづつ理解できるようになっている」。ロングパスが多かったことにも「ランが良かった。そのバランスだ」と話す。
古庄直樹ヘッドコーチは「パスはスカイラーらしさが出ていた。ランも、我慢しながらいろいろなことにチャレンジできていた」とオフェンスを総括する。
今季はLIXILディアーズから加入した小島健吾コーチが事実上のディフェンスコーディネーターとなった。ディフェンスをかなり任せられるようになったため、古庄HCがオフェンスを見る時間が「かなり増えた」という。
フィールド内では、引退したケビン・ジャクソン(現コーチ)に代わる新米国人ファナイカ、移籍のDL平澤徹、DB山本泰世、さらにルーキーでLB小田原利之(日大)、市川憲章(関大)DB須田克志(京大)、WR河本航太朗 (立大)といった面々が即戦力として活躍しているが、サイドラインでも新たな体制を構築している。
一方、敗れた富士通。レシーバー陣は、ルーキーの松井理己(関学大)高津佐隼矢(法大)らが中心。デイフェンスでも切り札のDBアルリワン・アディヤミが出場していない。この試合はやられまくったQBバードソンも、リベンジを期すだろう。秋にかけて、よりパワーアップするのは間違いない。
日本のフットボールの「ツインピークス」の戦いは、秋どのような形になるのか。想像するだけで楽しい。あえて言えば、1昨年秋から、5試合続けて富士通スタジアム川崎を満員にしてきたライバルの戦いを、もっと大きな舞台で見たいとも考えている。【写真/文:小座野容斉】
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