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2019-05-13

京大、ゴリゴリのランオフェンス 折れずに対抗した東大の反撃届かず

アメリカンフットボールの大学定期対校戦、東京大学ウォリアーズ対京都大学ギャングスターズの1戦が5月11日、東京・調布のアミノバイタルフィールドであり、京都大学が東京大学を16-6で破った。

【京大 vs 東大】京大RB杉本はランで89ヤード、1TDと活躍した=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

京都大学ギャングスターズ○16-6●東京大学ウォリアーズ(5月11日、アミノバイタルフィールド)

 徹底したランオフェンスで優位に立った京大が、逃げ切った。京大は第2クオーター、8分かけたロングドライブでエンドゾーンに迫り、QB滝藤雅貴からオプションピッチを受けたRB窪田幹太が先制のランタッチダウン(TD)。追う東大は、京大・滝藤のパスをDB梅澤迪がインターセプト、QB兼任のK伊藤拓のフィールドゴール(FG)で3-7と追い上げて、前半を終えた。
 後半開始直後、京大のオフェンスシリーズで、東大はLB児玉峻がパスインターセプトし、伊藤拓のFGにつなげて、1点差とした。

【京大 vs 東大】第3クオーター、東大LB児玉がパスインターセプト=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

 京大は後半、徹底したラン攻撃に切り替え窪田、杉本紫了、石井侑志の3人のRBが、縦の素早い上がりで次々にゲインを重ねて試合をコントロール。第4クオーターには、K丸山和馬のFGで10-6とした。
 東大は、第4クオーター4分にLB中原愉仁のファンブルリカバーで相手陣で攻撃権を奪い、エンドゾーンまで6ヤードと攻め込むが、伊藤拓が23ヤードのFGをポストに当てて失敗。その後の京大のオフェンスを止められずに、試合終了と同時にランTDを京大の杉本に決められた。

【京大 vs 東大】京大RB窪田はスピードある縦の上がりでラン93ヤード、1TDと、オフェンスをけん引した=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

両校のオフェンスに課題

 東大はQB伊藤宏一郎の、アウトサイドのスクリーンや、ショートアクロスなどのクイックなパスが要所で決まり、京大は窪田、杉本、石井の3人のRBでインサイドゾーンや、外のオプションで239ヤードをゲインした。両校のオフェンスが一定の成果を見せたが、課題も残した。
 東大は、レシーバー陣が「昨シーズンまで、まったく試合出場の無いメンバー」(森清之ヘッドコーチ)だったこともあり、伊藤のパスを何度も落球。さらに伊藤自身も、京大のパスラッシュでタイミングやコントロールが微妙に狂い、経験のないレシーバー陣をフォローできなかった。
 京大の課題は、今春先発を任されている2年生QB滝藤。先制TDを挙げたドライブでサードダウンコンバージョンのパスを決めるなど、序盤はパスが好調だったが、第2クオーターにパスインターセプトを喫してから調子が狂い、後半はパス獲得ヤードゼロに終わった。

【京大 vs 東大】第2クオーター、東大QB伊藤宏一郎が、京大ディフェンスのプレッシャーを受けながらパスを決める=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

秋に勝てるチームを作るために

 東大の森HCにとって、就任して3回目の母校との対決。0-35で完敗した1昨年、第4クオーター途中まで0-28だった昨年に対し、今年は終始押されながらも折れない試合運びで対抗した。
 試合後のハドルで、森HCは「三分七分くらいで押されているゲームだったけれど、勝負としては全然勝てる試合だった。フットボールとはそういうものだ」と選手に諭すように語り掛けた。

【京大 vs 東大】試合後に、東大の選手たちに話しかける森HC=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

 他校の選手は、高校からのフットボール経験者だけでなく、小学校からのフラッグフットボール経験者も多い。国内受験最難関校の東大は、付属校からの進学もなく、フットボールの基本知識から教え込まなければならないことがある。この日の試合中にも、エンドゾーンでキックオフのボールをキャッチした選手が、リターンするか逡巡し、京大カバーチームに詰め寄られた場面があった。森HCは「エンドゾーンで一瞬でも迷ったなら、必ず膝をつけ」と直々に注意をしていた。
 森HCは「春はフットボールの戦い方を覚えるのがテーマ。4年生はともかく、2年生はプレーの理解だけでなく、ゲームそのものの理解もまだまだ」と言う。
 「4月は、新入部員の勧誘に精力をつかって、ほとんど練習をしていなかったが、5月の連休中にかなりまとまった練習ができた。その意味ではフットボールにはなっていた」と話しながらも、「今日の京大に勝てなければ、TOP8で優勝争いに割って入るのは難しい」と言う。
 強豪校ばかりのTOP8で東大がどう勝ち抜いていくのか。その戦い方を、戦術ではなく戦略として皆が理解し体得していく。そのためには「試合でという以前に、練習でちゃんとイメージができるか」と森HCは話す。経験者がそろう他校に、体力や技術で負けないように個々の選手が鍛えるのは第一だが、「個人の課題ばかりに目が行ってしまうのではなく、練習の段階でもう一歩先のチームとしての戦い方を見据えなければ」と言う。
 東大はこの後、19日に慶応、26日に法政と、秋に戦う強敵とのオープン戦が待っている。TOP8で勝つチームを作り上げるため、3年目を迎えた森HCの模索は続く。【写真/文:小座野容斉】

【京大 vs 東大】OLのブロックを生かして前進する京大RB石井=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

【京大 vs 東大】第1クオーター、東大QB伊藤宏一郎(左後方)からのパスをキャッチしたWR森本が16ヤードをゲイン=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

【京大 vs 東大】第2クオーター、タイムアウトを取って話し合う東大の森HCとQB伊藤宏一郎=2019年5月11日 撮影 小座野容斉

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