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2021-07-06

【ソフトボール】東京五輪ソフト代表の山本優×森さやか対談(2)「普段どおりの打撃を心掛け、チャンスで打ちたい(森)」

同級生対談で真逆の打撃論を展開した山本優と森(撮影/桜井ひとし)

五輪でのソフトボール競技は2008年の北京大会を最後に正式種目から除外されていたが、2020年東京五輪で追加種目としての採用が決まり、強化を進めてきた。ソフトボール・マガジンWEBでは、3大会ぶりとなる東京五輪で金メダル獲得を目指す15名の選手たちを、順々に紹介していく。

山本優(ビックカメラ高崎/内野手)
森さやか(ビックカメラ高崎/外野手)
その一振りで流れを変える(2)

入社年は違えど、1988年生まれの同級生。2007年の世界ジュニア選手権には投手、内野手で出場し、銀メダルを獲得している。チームメイトとして再会を果たしたのは、森が入社し野手に転向した11年。以降、日本代表のヘッドコーチを務める宇津木麗華氏の下で打撃技術を磨いてきた。間もなくやってくる五輪本番を前に、二人の打撃論をお届けする。(取材は5月3日、全文はソフトボール・マガジン8月号掲載)

バットで手繰り寄せる
東京五輪での勝利
 
──ご自身のバッティングを確立されるまでに、参考にした選手はいますか。
山本 若いころは山田(恵里、デンソー)さんを参考にさせてもらいました。主にボールをとらえる瞬間の身体 のバランスです。とらえ方が美しいということは、しっかりとミートできている証拠でもあります。山田さんの ミートの形から逆算して、自分のトップの位置をつくっていきました。この形をつくるには身体のどこを使ったらいいのかな。右手なのか、左手なのか、左手の親指なのか、右手の親指なのか、というふうに。
  私はいないなぁ。
山本 天才だからね。
  もう! 人のバッティングが参考にならないわけではないけど、いいバッティングをしているなとしか思わないかも。人には人の良さが、自分には自分の良さがあると思っているから。 でも、山田さんの打つポイントは好きで、よく見てた。
山本 みんなは美しいとか、打つポイントがいいからという見方で参考にしていると思うんだけど、私の場合は違うんだよね。常に成績を残して、常に打っている人って誰だろうと考えたときに、頭に浮かんだのが山田さんだった。そこから、どうやって打っているんだろうっていうふうに、参考にした。
──それは、打撃率を上げたかったからですか。以前、本塁打よりもヒットにこだわりがあると話していましたね。
山本 結論から言えば、バッティングの最上級はホームランだと思っています。でも、ホームランってそんなに簡単に打てるものではありません。それならば、ホームランよりもヒットを目指したほうがいい。いつもいいポイントで、いい形で打っていたらいつか事故が起きてホームランになるかもしれないからです。だから私は、常にミートすることを大事にしてきました。
──バッティングで一番大事にしてい るのは、ボールをしっかりとらえること?
山本 というよりも、とらえるための身体のバランスですね。
  私は、とらえるための準備。
山本 間合いとか、そういうこと?
  そうそう。準備ができていないととらえることもできない。ピッ チャーと呼吸が合えばタイミングは合うでしょ。相手が落ち着いて投げて来ているのに、こっちが焦っていたら望むような結果にはならない。だから、 打席に入る前にネクストバッターズサークルで相手の呼吸を見てタイミングを合わせるの。打席に入るときはすでに準備ができているから、後はボールをとらえるだけ。
──以前、森選手に話を伺ったときに、ゾーンに入る瞬間があるという話をされてましたね。
  チームメイトがいい守備をしていたり、ピンチを乗り越えたり、味方のピッチャーがいいピッチングをしていると、自然と気持ちが高まってきてスイッチが入ります。
──みんなの頑張りが力になる?
  そうです。
山本 じゃあ、森が打てないときは私たちのせいか(笑)。
  違う、違う、そうじゃない(笑)。何て言ったらいいんだろう。大きな大会のときとか、いい緊張感を持っているときに、自然と入っていくイメージ。
──山本選手は、どんなときに集中力 の高まりを感じますか。
山本 悩が柔らかいときです。
  ……難しいねー(笑)。
山本 次々と考えが浮かんでくるときは、集中しているなって思う。集中力って意識して高めるものではないし、意識してる時点で集中できてないよね。
──雑念が浮かぶときもありますよね? そんなときはどうしていますか。
山本「ちっちゃいな、自分」って、自分で自分のことを笑います。客観的に自分を評価して、違う自分に切り替 えるというか。この自分をさっさと捨てて違う自分になったほうが楽じゃないですか。いい結果につながるかどうかは分からないけど、引きずるよりも違う自分になるほうがいい。
  私は、雑念ばっかりで……。
山本 お祓いしよっか?
  したほうがいいかも(笑)。
──リーグ前半戦では、森選手は二番を打ったり、七番を打ったり。山本選手は主に四番に座りました。
  試合に出ている以上、任された役割を果たさなければと思っているので、その都度状況に応じたバッティン グを心掛けています。二番のときは前に出塁率の高い市口(侑果)が、そして後ろには優や内藤(実穂)といった打てる(返してくれる)バッターがいるので、まずは進塁打を心掛けました。七番のときはチャンスメイク、チャンスで回ってくる代打のときはベストを尽くそうというように。
山本 私は前半戦の調子が悪かったので、我慢して使ってもらって申し訳ないな、と。でも、調子が悪いって嫌なことばかりではない。変えなきゃいけないことばかりだし、やることが多くて大変なんだけど、それが楽しい。
──さて、7月には東京五輪も控えています。
山本  勝つために選ばれたメンバーだと思っているので、私自身はベストなパフォーマンスを発揮できるように、 いい準備をして入りたいと思っています。選んでいただいてうれしいですし、これまでソフトボールの活動を通していろいろな方にお世話になってきたので、いい形で恩返しができたらと思っています。
  私は、打撃面で期待してもらっていると思うので、信念を持ってブレずに戦いたいです。宇津木(麗華)監督からの指示を徹底できればチームに貢献できると思うので、本番までにしっかりと技術力を磨いていきたいと思います。私にとってオリンピックは小学校のころからの夢でした。アルバムにもオリンピック選手になりたいと書いていたので。でも、漠然とした夢だったので、ソフトボールでとは書いていなかったんですけどね。
山本&森(笑)。
  でも、まだ夢がかなったわけではありません。本番では、ソフトボー ルをしている小中学生に勇気を与えられるようなプレーを見せられたらと思っています。
──どんなバッティングを披露したい ですか。
山本 打線が、しっかり「線」となるよう、自分の役割を果たしたいです。 後は、悪い流れを断ち切れるようなバッティングができれば。そして、チームが勝つための行動ができたらと思っています。
  私は、一番はチャンスで打つことですね。どんなピッチャーを相手にしても、普段どおりのバッティングができたらと思います。オリンピックには魔物がいると言うけれど、魔物にバ レないように頑張ります。(おわり)

【山本優PROFILE】
やまもと・ゆう/ 1988年8月20日、北海道生まれ。164cm 65kg。右投右打。内野手。当別高-ルネサス・ビックカメラ高 崎(2007年~ 11年、13年~)。これまで首位打者賞1度、本塁打王1度、打点王1度、ベストナイン賞6度受賞。日本代表では主軸打者として、14年から3大会連続で世界選手権に出場。今季リーグ成績(5節終了時点):11試合、40打席、8安打、2本塁打、9打点、0盗塁、打撃率.267

【森さやかPROFILE】
もり・さやか/ 1988年9月29日、埼玉県生まれ。163cm63kg。 右投右打。外野手。星野高-東京女子体育大-ルネサス・ビック カメラ高崎(2011年~)。これまで首位打者賞1度、ベストナイ ン賞3度受賞。日本代表としては投手として出場した07年世界ジ ュニア選手権で銀メダル、14年世界選手権で金メダルに輝いた。今季リーグ成績(5節終了時点):8試合、21打席、7安打、0本 塁打、3打点、0盗塁、打撃率.412

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