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2018-11-20

東大、桜美林大との全勝対決制し優勝悲願のTOP8昇格、楊主将男泣き=関東大学BIG8

アメリカンフットボールの関東大学1部リーグBIG8、第6節の東京大学対桜美林大学の一戦が11月18日、アミノバイタルフィールド(東京・調布市)であり、東大が桜美林大を破った。東大は6戦全勝で最終第7節を待たずにBIG8優勝と来季のTOP8昇格を決めた。

【東大 vs 桜美林大】悲願のTOP8昇格を決め、男泣きする東大の楊主将=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

東京大学○24-21●桜美林大学(11月18日、アミノバイタルフィールド)

東大が桜美林大に競り勝った。東大は最初のオフェンスシリーズで、ゴール前まで攻め込むと、QB伊藤宏一郎のスニークで先制タッチダウン(TD)。桜美林大もQB亀山一成からWR細川海都にTDパスで反撃した。第2Q、東大はK張湧実のフィールドゴール(FG)で逆転するが、直後のキックオフで、桜美林大のリターナー橋口虎乃丞がブロックを上手く使って抜け出すと92ヤードのリターンTDを決め、14-9と桜美林大が5点のリードで後半へ折り返した。

【東大 vs 桜美林大】第3Q、桜美林大のランをゴール前で食い止める東大ディフェンス陣。ゴールラインは画面下の白線=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

後半開始のキックオフで、桜美林大はまたもビッグリターン、DB伊藤颯が70ヤードを走って、エンドゾーンまで3ヤードと迫った。しかし、東大ディフェンス陣が桜美林大の4回のランを止めてTDを許さず。その後、東大は第3Q8分に、WR瀬戸裕介がオプションからのランで60ヤードを走り切ってTD、さらに2ポイントコンバージョンをRB大路航輝のランで決めて、17-14と逆転した。

第4Q、桜美林大のフォースダウンギャンブルを止めた東大は、直後のオフェンスの最初のプレーで、QB伊藤宏がWR東谷健人へ66ヤードのTDパスを決めて、10点差とした。桜美林大は同6分にQB亀山がWR佐藤寛人にTDを決めて3点差にまで詰め寄ったが、東大LB中原愉仁のインターセプトなどで反撃を断ち切られた。

【東大 vs 桜美林大】第4Q8分、桜美林大のパスをインターセプトした東大LB中原=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

東大は6戦全勝、桜美林大は5勝1敗。最終節で、東大が敗れ6勝1敗となっても、どちらかが6勝1敗となる横浜国大、桜美林大の両校に直接対決で勝っているので、東大の優勝となった。同時に、日大がBIG8に自動降格することになっているため、入れ替え戦なしでのTOP8昇格も決まった。

目立った球際の強さ 森HCの下成長した学生たち

東大が接戦を制して、優勝と悲願のTOP8昇格を決めた。日曜の夜にもかかわらず、多くの人が詰めかけた応援席へのあいさつを終えた後、東大のOL楊暁達主将は同級生と抱き合って涙を流した。
社会人・Xリーグの鹿島(現LIXIL)ディアーズのヘッドコーチ(HC)としてライスボウルを制し、世界選手権で2回連続日本代表HCも務めた森清之氏を招いて2年目。昨年はシーズン中盤まで4連勝だったが、第5節以降に3連敗と失速した。負傷者がシーズン中盤から続出し、デプスが薄いため、四苦八苦したという。その苦しい戦いの中で、チャンスをつかみ、今季大きく飛躍したのが3年生のQB伊藤宏だった。
今年は春から不動のエースQBとして固定され、特にパスが長足の進歩を遂げた。秋シーズンは前節までの5試合で、パス826ヤード、10TD、成功率68.6%。QBレーティングは166.1とBIG8首位だ。
森HCは「伊藤の一番良いところは、同じミスを再びしないこと」という。この試合でも28回投げてTDパスは1本だけだったが、インターセプトは0本。今季は133回パスを投げて1回もインターセプトを喫していない。

【東大 vs 桜美林大】第4Q、66ヤードのTDパスを決めた東大QB伊藤宏=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

伊藤宏を教えているのはLIXILのQB加藤翔平だ。森HCも「伊藤には、ディアーズで加藤に教えたのと同じことを教えてきた。ただ、守備のリードやフットボールの理解を教えることはできても、スローイングのメカニックは教えることができないので、その部分では、加藤の助力が大きい」という。
伊藤宏は、単にスタッツ上で優れているだけではなく、勝負どころに強い。この試合でも、先制のTDを奪ったドライブで、度々サードダウンコンバージョンを成功させた。第4Qに勝負を決めた66ヤードのTDは、ポストパターンを走った東谷に的確に決めたパスで、ギャンブル失敗で桜美林大がモメンタムを失ったところをきっちり突いた形だ。

伊藤に限らず、今の東大は、オフェンス・ディフェンス・キッキングで球際の強さが目立つ。この試合では、第2QのFGブロック、第3Q冒頭のゴール前ディフェンス、第4Qのインターセプトで、それが出た。
特に第3Qのゴール前ディフェンスは、後半開始のプレーで、キックカバーのミスが生んだ窮地だった。しかし、浮き足立つことなく、桜美林大の4回のランをすべて止めた。「モメンタムに左右されるゲームをしてはいけない」という森HCの持論通りに、この局面を無得点に抑えたことが試合の勝敗を左右した。
森HCは「狙ってできることではない。選手や、コールを出したスタッフたちも含めて、学生がよく成長した。頑張ってくれた」とたたえた。

TOP8で戦う上で足りないものはとの問いに「すべてが足りない」と即答した森HC。来季待ち構える強豪との戦いに、引き締まった表情を最後まで崩さなかった。

【写真・文:小座野容斉】

【東大 vs 桜美林大】第2Q残り2秒、桜美林大のFGは東大にブロックされる=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

【東大 vs 桜美林大】第1Q、桜美林大QB亀山が自らボールを持って24ヤードをゲイン=2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

【東大 vs 桜美林大】ランで108ヤード、パスレシーブで50ヤードと活躍した桜美林大のRB石田 =2018年11月18日 撮影Yosei Kozano.

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