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2021-12-14

【箱根駅伝の一番星】元柔道部の無印ランナー清野太成がカリスマの指導で駿河台大のエースに、そして箱根へ「どこまでやれるか試したい」

駿河台大のエースに成長した清野太成(3年)

陸マガの箱根駅伝2022カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。徳本一善監督に率いられ、44校目の初出場チームとなった駿河台大。チームを支えるのは、留学生のジェームス・ブヌカ(4年)と高校時代は無名のランナーたちだ。清野太成(3年)も中学までは柔道部で、高校で全国大会の出場経験はない。地元の飯能南高から駿河台大に入学後、カリスマの指導で走力を磨き、箱根予選会でチーム2位に。来たる箱根では往路で力を試したいと思っている。

徳本監督の言う通りに練習したらどんどん速くなった

 箱根駅伝への初出場を決めた駿河台大のエース、清野太成(3年)は、多くの人に大きな夢を与える存在だ。

 大学入学後、急カーブを描く清野の成長曲線は、「いつか箱根駅伝を走りたい、でも……」と躊躇する中高生に、自分の限界を決めつける必要はないことを教えてくれる。

 清野自身、箱根駅伝は遠い夢だった。中学時代、柔道部に所属していた清野は、中3のとき、「陸上部の子と競争して勝ったんで、意外とオレ、陸上でイケるんじゃない?」と進学した飯能南高で陸上部に入った。とはいっても、最高成績は県大会どまり。高3時の5000m自己ベストは15分54秒07で、箱根の上位校であれば、レギュラー入りは難しい数字だろう。

 それでも、清野は「箱根駅伝を走れたら」という密かな思いを胸に、高校から走って約5分の駿河台大に入学する。すると、走りが変わった。「カリスマ性がある」(清野)という、箱根路を目指す徳本一善監督に出会ったからだ。

「徳本監督の言ったことをそのままやったんです。そしたら、どんどん速くなった。自分が変わったなと実感したのは、1年の後半からですね」

 もちろん、速くなった実感はレース結果にも表れた。清野が「特にうれしかった」と振り返るのは、今年5月の関東インカレ1500mでの決勝進出だ。順天堂大の三浦龍司(2年)らと走り、8位入賞を飾った。「いま強い選手と戦えることが楽しいです」とイキイキとした顔を見せる。

 また、総合54位だった10月の箱根予選会については、「本当は30番台くらいに入って(順位を)稼ぎたかった」と不満そうだが、徳本監督は、「エースの自覚を持った走りをしてくれた」と目を細めている。

「実績のないウチの大学には、高校時代に活躍した選手は入ってこないから、選手を育てないといけない」という指揮官にとって、清野は一つの作品であり、大切な珠玉なのだ。

 そして1月はいよいよ箱根本戦。清野が希望するのはチームの流れを決める1区だ。各チームのエース格が集まるこの区間で、「自分がどこまでやれるか試したい」と気を吐く。

「大きく育ってほしい」という願いを込め、“太成”と名付けられた21歳は、「タスキを最後まで繋げる」というチーム目標のため、多くの人を惹きつける魂の走りを見せてくれるはずだ。



箱根駅伝出場を決めてから、それまで陸上にあまり興味がなかったという家族も応援してくれるようになったそう


きよの・たいせい◎2000年12月4日、埼玉県生まれ。168cm・52kg、O型。新座六中→飯能南高(埼玉)。中学までは柔道部、高校で陸上に転向。高校時代の自己ベストは800m1分56秒40(2018年)など。駿河台大では2年時の箱根予選会でチーム3位の1時間03分18秒(自己ベスト)。3年時の関カレ1部1500m8位入賞。箱根予選会ではチーム2番手に入った。12月に10000mで28分49秒66と自己記録を更新。5000mの自己ベストは14分04秒34(21年)。

文/鈴木快美 写真/桜井ひとし、矢野寿明

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