トラック&フィールドシーズンも終盤を迎え、2019年に向けた大事な冬季練習へと突入する。ここでは、長きにわたり日本のロングスプリント界をけん引し、2019年の世界選手権ドーハ大会、そして東京オリンピック代表を目指す金丸祐三選手(大塚製薬)に、冬季トレーニングで大切にしていること、季節に応じたギア選びのポイントなどについて聞いた。
―――単調できついイメージのある冬季練習ですが、それを乗り越えるコツ、大切にしていることは?
金丸 冬季練習は、ベースアップが一番の目的となります。将来、どういった自分になりたいか、そのために次のシーズンはどうなっていなければならないか、自分の課題は何かなどをしっかりと反省・分析し、その上でトレーニングに取り組む必要があります。
目標とするタイムだったり、動きだったり、フォームなどを具体的にイメージすることで、一つひとつの練習メニューに対する意識、取り組む姿勢も変わってくると思います。同じメニューをこなしていても、効果や結果が違ってくるのは、ここにポイントがあります。練習内容より、まずはしっかり自己分析し、現状把握を行い、なりたい自分をイメージすることが大切です。
金丸 冬季トレーニングで思い出に残っているのは高1のときです。それまでずっと肩に力の入る、力んだフォームでしたが、一冬かけリラックスした走りをイメージして取り組みました。
最初は全然かみ合わず、イメージとは違う走りで、なかなか効果も見えず苦しみましたが、継続していくことで徐々に感覚が出始め、記録の向上につながっていきました。どんなにいいメニューでも結果はすぐには出ません。しっかり目的、目標を決め、常にイメージしながら続けることが重要だと思います。
ともすれば、すぐに結果、答えを求めがちです。しかし、スポーツでそんなにすぐに結果が出ることはありません。最近は、国内外を問わずトップ選手の動画などがすぐに手に入ります。表面的に動きをまねることはできても、本質はそこにはありません。どうイメージし、どんな感覚なのかが重要です。
また、動画と実際にその場で目で見るのとでも受けるイメージは異なります。そうした情報、機器はあくまでもサポートとして活用し、自分の目、感覚を大切にしながら取り組んでほしいと思います。
―――シューズとならびウエアも選手にとっては大切なギアの一つです。ウエア選びのこだわり、ポイントは?
金丸 シューズ同様、動きの邪魔にならない軽さやフィット感を大切にしています。メイン練習の際は、冬季もシーズン中と同じように半袖・短パンが理想です。ですが寒いので、それと同じ感覚で走れて暖かいウエアを着用するようにしています。
ウオーミングアップや休憩中に着るウエアは、すぐに体が温まってほしいので、そういう機能のあるものがありがたいですね。とはいえ、ベンチウオーマーのような暖かくてもゴワゴワして動きづらいものではなく、できるだけ軽く、しっかり体に追従してくれるもの、動きを制限しないウエアがいいですね。
ウオーミングアップで動きの感覚を確認しているので、今回のバックウオームアパレルは、動きやすく、動きながら背中から温めてくれるので冬季トレーニングにはおすすめだと思います。「LIVE IN THE MOMENT」というメッセージが刻まれているのも、グッときますね。
―――冬季は低温の影響などもあり、ケガが気になる季節でもあります。日々の練習で気を付けていることは?
金丸 シーズン中以上に、動きづくりには気を配っています。冬季練習は、本数も増え、走る距離も長くなることが多くなります。そのためバランスの悪い動きで続けると疲労が溜まったり、ケガを招く要因となります。
末端ではなく体幹を軸とした正しい動きをつくるには、やはりウオーミングアップで感覚をつかんでおく必要があります。そのためにも背中を温めてくれるウエアは重要だと思います。メニューには、冬季はウオーミングアップにバランストレーニングを多めに入れています。
―――2018年はどんなシーズンでしたか? また2019年、2020年東京オリンピックに向けての抱負をお願いします。
金丸 2018年は勉強の年でした。感覚と動きのズレ、年齢と共に今までのやり方(練習メニューや調整法など)では通用しなかった場面も多く、試行錯誤を重ねた1年でした。いずれもこれまで感じたことのない部分だったので、戸惑いもありました。
とはいえ、戦えない感覚ではなく、少しのズレが解消されれば、記録も出るイメージはあるので、そこをどう合わせていくかがポイントになってくると思います。身体的な衰えをどう技術と経験でカバーするか。これまでは試合で9割の力しか出せなくても結果が残せていましたが、今後は100%、それ以上のパフォーマンスを本番でしっかり出し切れるよう、自分自身を磨いていきたいと思います。
―――部活動に励む中・高校生にメッセージをお願いします。
金丸 みなさんの憧れの存在は? 人々から憧れられる存在とは? どんな人でしょう。みなさんがカッコいいと思う人のカッコ良さは人それぞれです。一度考えてみてほしいと思います。
人から憧れられる人たちに共通しているのは、信念を持って、ブレない心で、ある道を極める点だと私は思います。みなさんがその憧れの存在に近づくためには、みなさん自身もブレない心で妥協せず突き進むことがポイントとなります。
難しいことではなく、道端にゴミがポイ捨てされていたときに、「憧れのあの人はどういう行動をするだろうか?」「1本ぐらいならと練習で手を抜くだろうか」と自問自答してみるなど、そうしたことの繰り返しが、少しずつみなさんを成長させてくれると思います。カッコいい自分を目指し、頑張ってほしいと思います。
Yuzo Kanemaru PROFILE
1987年9月18日生まれ。178cm・75kg、A型。大阪府出身。芝谷中→大阪高(いずれも大阪)→法政大→大塚製薬。高校3年から2015年まで日本選手権男子400m11連覇を達成。オリンピックは、北京、ロンドン、リオと3大会連続で代表入り。世界選手権代表は7回。長きにわたり日本のロングスプリント界をけん引してきた。自己ベストは100m・10秒32(05年)、200m・20秒69(06年)、400m・45秒16(09年・日本歴代4位)。
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アシックスジャパン株式会社
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