社会人アメリカンフットボール・Xリーグのワイルドカード(WC)プレーオフ、東京ガスクリエイターズ対LIXILディアーズの一戦は、東京ガスがチーム史上初めて(鹿島時代も含め)ディアーズを破って、ジャパンXボウル(JXB)トーナメント準決勝に進出した。東京ガスは第4クオーター残り25秒で同点に追いつかれたが、延長タイブレーク(TB)で振り切った。
東京ガスで最も強力なユニットはOLだ。下位「バトル9」では頭一つ抜けたサイズとフィジカルを持つ。過去数年、チームの指揮官が変わっても、チームの基本オフェンスは、強いOLによるゾーンブロックとランだった。
今秋はそこに、RBのアンドレ・ホワイトが加わった。米ブライアント大(NCAAのFCS=Div.1AA)時代はDBだったが、卒業後は欧州のチームを渡り歩き、そこでRBとしてもプレーを重ねた。187センチ100キロとLB並みの体躯で、インサイドを突く力強さとアウトサイドをまくるスピードもある。
下位チームとの対戦では温存されたためスタッツはそれほどでもないが、オール三菱ライオンズ戦23回129ヤード、明治安田パイレーツ戦17回174ヤードと、重要な試合では必ず結果を残してきた。この試合では、ホワイトがまさにワークホースとして、徹底的に起用された。
東京ガスは、ファーストドライブは13プレー30ヤード。2度目のオフェンスシリーズは11プレーで53ヤード。反則による罰退や、ファンブルロスト、フィールドゴール(FG)失敗などで、得点には結びつかなかったが、第1クオーターのタイムオブポゼッションは12分中、11分4秒に達した。
それでもLIXILはパンター兼任のK青木大介が絶妙なパントを決め、ディフェンスも勝負所でホワイトを止めて、得点を防いだ。
LIXILは、オフェンスが苦戦した。前回の対戦では61ヤードに封じられたランが、それ以上に出なかった。白神有貴も走れなかったが、他のRBでは歯が立たなかった。後半開始からルーキーQB馬島臨太郎を投入したが、馬島のオプションも、ほとんど決まらず。2シリーズで、QBを加藤翔平に戻した。その加藤も、東京ガスディフェンスのブリッツに苦しみ、なかなかボールを進められなかった。チャンスらしいチャンスはほとんどなく、第4クオーターの43ヤードFGは失敗した。
第4クオーター半ばまで0-0と、現在のXリーグではまれに見るロースコアの展開となったが、東京ガスはまだ余裕があった。QBイカイカ・ウーズィーを、ショットガン隊形ではなくCのすぐ後ろに位置するセットバックでプレーさせていた。本来はGの渡邉将人をTEやFBとし、イカイカはセットバックからのドローで、ホワイトにボールを渡し続けた。
東京ガスの徳島秀一オフェンスコーディネーターは「いろいろ用意してきたけれども、(雨という)天候もあったので、ランで行こうと方針転換をした」という。前半を終えて、OLが勝てるという手ごたえがあったので「ゴリゴリのヘビーフォーメーションからヘビーなランをやっていったほうがいいということになった」という。
ホワイトに徹底的にボールを集める東京ガスに対して、LIXILのディフェンス陣は、セカンダリーの執拗なタックルで対抗した。第4クオーター中盤まで、ホワイトはラン30回で132ヤード、パスキャッチでも3回23ヤードを進まれたが、20ヤードを超すロングゲインは一度も許していなかった。
しかし、第4Q9分、東京ガスはそれまで執拗にインサイドを突いてきたホワイトが左のアウトサイドを突く。左タックルの外に渡辺、その外にTE鈴木翔太を3ポイントでセットさせて、完全にオーバーパワーしていた。DBが本職のホワイトのスピードにLIXILディフェンスは付いていけなかった。32ヤードのタッチダウン(TD)ラン。堤防が決壊するように、ついにビッグプレーが決まった。
直後のLIXILオフェンス、QB加藤のパスを東京ガスDB富田秀勝がインターセプト。残り1分39秒、決着は付いたかに思えた。しかし、LIXILは残されたタイムアウトをすべて使って、東京ガスのオフェンスを3回2ヤードに食い止めると残り1分8秒から最後の反撃に出た。
この試合で、東京ガスが唯一浮き足立った場面だ。東京ガスディフェンス陣は、7点リードで、上位チームの2ミニッツオフェンスを相手にした経験など皆無だったからだ。2度のパスインターフェアを取られて、LIXILにゴール前まで進まれると、残り25秒で加藤からWR宮本康弘へのTDパスを許し、同点とされた。
勝利を目前にして気が焦り、同点にされ、延長TBとなった。本来なら百戦錬磨のLIXILが優位のはずだった。しかし、東京ガスにはまだ余裕があった。QBイカイカにまだ十分な余力と、この日のために準備しながら使わなかったオフェンスのプレーが残されていたからだ。
延長TB、1回表。東京ガスはイカイカがカレッジ時代から慣れているショットガンに戻した。ホワイトのダイブと見せて外を突くオプションのランでファーストダウンを奪った。その後サードダウン15ヤードでは、QBキープと見せかけて16ヤードのパスを決めてゴール前まで攻め込んだ。そしてゴール前2ヤードからWR荻原汰二郎に浮かせたパスを投げ込んだ。萩原はスライディングしながらキャッチ。あっさりTDをうばった。
1回裏。LIXILのフォースダウン1ヤード。LIXIL加藤はフラットゾーンに走ったベテランTE長谷川賢吾にパスを投げた。しかし、タイミングが合っていなかった。ボールはフィールドに落ち、試合は終わった。
帰途スタジアムの出口で、RBホワイトと出くわし、少し話をした。ラン38回176ヤード、パスレシーブ3回23ヤード、キックオフリターン2回41ヤードと、計43回ボールを持って240ヤードをゲインしたホワイトだが、足を引きずるとか、どこかを痛めたような激闘の痕跡はみじんも感じさせなかった。米国人フットボーラーの強さを今更ながら痛感させられた。
【写真・文:小座野容斉】
・今の感想は
・イカイカをショットガンではなくセットバックで使っていた
・徳島オフェンスコーディネーターに聞いたが、イカイカは意外と走るのが好きではないそうだが
・板井さんがHCになって2年目。きっちり結果を出したが
・第2節の対戦では、LIXILのパス攻撃にディフェンスが苦しめられて、前半で大きく失点したが、今日はきっちり抑えた。
・OLの働きは
・来季、トップリーグの「X1スーパー」でプレーすることが決まった。それを踏まえて、次戦のパナソニック戦に向けては
・東京ガスを率いて、このチームはここまでやれる、こういうチームに成れるというのがあると思うが、現時点ではどれくらいの達成度合いか
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