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2018-11-05

オール三菱、ラン止まらず チームを変革 シルバースター戦3回目の勝利

社会人アメリカンフットボール・Xリーグのワイルドカード(WC)プレーオフ、オール三菱ライオンズとアサヒビールシルバースターの一戦はオール三菱がアサヒビールを破って、ジャパンXボウル(JXB)トーナメント準決勝に進出した。先制したオール三菱が、試合を通じて主導権を握り、危なげなく勝ち切った。

【オール三菱 vs アサヒビール】密集を抜けて走るオール三菱のRB北条。早大出身の2年目で、小柄ながら力強い走りが持ち味だ=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

オール三菱○17-6●アサヒビール(11月4日、横浜スタジアム)

1年前、同じWCの舞台で対戦して以来となった両チームの試合は、スコア以上に、現在の力量差を感じる結果となった。

オール三菱はファーストドライブから、連続でファーストダウンを更新、QB谷口翔真のパスでタッチダウン(TD)を奪った。8プレー80ヤードのドライブだった。次のオフェンスシリーズでも11プレー52ヤードを前進、開始位置が自陣深くだったのでパントで終わったが、オール三菱サイドラインは十分な手ごたえを感じていたに違いない。

アサヒビールは、第2クオーター(Q)にRBジョナ・ホッジスの61ヤードビッグゲインなどで攻め込んで2本のFGを返し、6-7と詰め寄って後半へ折り返した。しかし、結果的にはこの2回のチャンスでTDを取り切れなかったのが響くことになった。

【オール三菱 vs アサヒビール】ラン108ヤード、パス71ヤード1TDでオール三菱オフェンスをけん引したエースQB谷口=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

オール三菱のオフェンスで始まった第3Q、QB谷口が、左のアウトサイドから中に切れ込んで59ヤードのロングゲイン、アサヒビールゴール直前まで攻め込む。ここでオール三菱はQBをランが得意な田中蔵馬にスイッチ。田中のランTDでリードを広げた。

勝負を分けたのはオール三菱の次のドライブだった。一度はパントに追い込まれながら、アサヒビールがパントの着地点で不用意に触りフリーボールにしてしまう。リカバーしたオール三菱が、アサヒビールゴール前16ヤードから再びオフェンスとなった。

アサヒビールディフェンス陣は必死の守りで、かろうじてFGに留めた。ゴール前の攻防は、オール三菱7回のプレーで7ヤードゲイン。しかし、時間を4分27秒も使っていた。

第4Q残り4分余りで、アサヒビールはオール三菱K谷澤隼人のFGをブロックして、最後の望みをオフェンスに託した。しかし残り1分49秒エンドゾーンまで23ヤードでフォースダウンギャンブルに失敗し、万事休した。

試合を通じて、オール三菱は、攻守ともにライン戦でアサヒビールを凌駕しており、それがそのまま展開に現れた。

特にオフェンスはインサイドのゾーンブロックが強力で、QB谷口、RB小形亮介の両エースに加え、RB北条淳士が活躍。オール三菱はオフェンス55プレー中47回でランを選択、10人のランナーで227ヤードを記録した。

【オール三菱 vs アサヒビール】インサイドを突いて走るオール三菱のRB小形。ロングゲインはなかったが、ボールを持つと確実に前進した=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

オール三菱はディフェンスでも、アサヒビールRBホッジスのランを第2クオーターの61ヤード以外、ロスタックル3回、ゲインなし3回と「準完封」。成功率68%を超えたアサヒビールQB安藤和馬のパスも、要所では抑え込んだ。

ホッジスのランを封じられたアサヒビールは他にオフェンスの決め手がなく、レッドゾーン(ゴールまで20ヤード以内)に攻め込んだのは第2クオーターの2回にとどまった。

【オール三菱 vs アサヒビール】パスをキャッチして走るアサヒビールRBホッジス レシーバーとしては活躍したが本業のランでは封じ込まれた=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

オール三菱は、この2年間でアサヒビールと4回戦って3勝。1年前は、同じカードで勝利に感情を爆発させた選手たちだが、この日は控えめな喜びに終始した。自分たちのフットボールを信じて、プレーを遂行できたことを物語っていた。

次戦のJXBトーナメント準決勝(11月10日)の相手は、富士通フロンティアーズ。中5日でやってくる最強王者との戦いに、若き獅子たちの眼は向けられていた。

【オール三菱 vs アサヒビール】勝利にも落ち着いた様子の宮田主将(左)を始めとするオール三菱の選手たち=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

◇オール三菱・林顕ヘッドコーチの一問一答

・試合を通じてランが出続けた。

シルバースターのディフェンスが、スカウティング通りで、そのままだったので。ランが出なくなるまでやろうと、プランを変えずにやり続けた。

・QBで斎藤(圭)が出場しなかったが

斎藤はいたけれど、田中の方が調子が良かったので田中を起用した。

・リードした展開だったので、パサーの斎藤を出さなかったのか

展開は関係ない。QBは谷口で難しくなったら、田中で行く予定だった。ラン、パスではなく、田中が斎藤を抜いたということ。

・チーム内で競争が活発化してきたということか

特にQB,RBは競争原理が働いて、誰を出しても、結果を出せるようになってきた。総力戦ができる状態だ。

・RBでは北条が良かった

良かった。個人的にもとてもうれしい収穫だった。

・ディフェンスは

デイフェンスは頑張った。ある程度はRBホッジスのランを出されるのは仕方がないと思っていたが、相手をはめるところにはめて、プラン通りにできた。

・シルバースターとは、去年は3回やって2勝。今年も勝利で一つ乗り越えた感があるか

いやいや全然。1ゲーム1ゲーム難しいハンドリングがある。逆に、次の富士通は、(対戦は)今年3回目。「三度目の正直」ではないが、なんとかしっかりやりたい。

・来シーズンから、X1スーパーでやることも決まった。

率直にうれしい。この何年か、ずっと上位リーグに上がろうということでやってきた。その言葉を信じて、皆が良くついてきてくれた。

・チームを変えるため、一番苦労したのは何か

選手の気持ちだ。実績のないチームだったので、皆を本気にさせるのが難しい作業だった。

・レギュラーシーズン第4節の東京ガス戦で手痛い逆転負けを喫したが、その後のチームは

今、こうなったから言えるのかもしれないが、良い薬になった。あそこであの敗戦があったから、ここまでこれたのかなと思う。

・レギュラーシーズン第3節の富士通戦では、第4クオーターに3TDと良いオフェンスができた。

あれは、オフェンスとしては一つの手ごたえを貰えたと思う。ただ、中5日で、チーム全体としては、まったく練習ができないので。何とかやりくりして、準備するしかない。一足飛びに、2ランク3ランク上に上がれるとは思っていないが、選手には、持っている力をすべて出せるように求めたい。

【オール三菱 vs アサヒビール】アサヒビールRB柳澤の突進を食い止めるオール三菱ディフェンス陣=2018年11月4日 撮影 YoseiKozano

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