今回は「強くなるコアトレシリーズ」の第2弾、野球編を書かせていただけることになり、たいへん嬉しく思います。私にとって、野球は格別な想い入れがあるスポーツです。
どの競技においても、若年期の練習には問題があると感じています。特に野球は、身体能力の高い男子の目標になる種目です。それゆえ、小さな頃から専門的なトレーニングを強いられます。またジュニア期の練習というのは、誤解のないように言わせていただくと、競技特有の経験主義的な練習方法がほとんどです。そして監督やコーチの絶対主義的な環境が、選手の可能性を潰していることが多いようにも感じます。
私たちコンディショニングトレーナーは、未来の子どもたちのためにも正しいトレーニングを伝える必要があると強く思います。筋肉や骨格がまだできていない時期に強度の高い運動や技術練習を行うことは、無理やり身体を使うことになり、筋肉のアンバランスを招いて故障につながります。また、故障したところは弱っていると考えて、その場所を鍛える傾向にあるのも現場のトレーニングでよくある間違いです。
運動は科学です。筋肉については十分な研究がなされているにもかかわらず、現場に活かされず、指導者のところまで届いていないのです。したがって、指導者の経験に基づいて練習が組み立てられている。さらに現状としては、諸外国のトレーニングを真似している傾向もありますが、そもそも白人や黒人と日本人の身体には、仕組みの違いがあります。意味も理解せずにそのトレーニングを行うことは、とても危険なことなのです。
こうしたトレーニングにおける認識の間違いが、故障を誘発しています。かくいう私自身にも、故障で競技を断念した経験があります。思い出すと胸が痛くなります。当時は、痛みがあっても無理やり練習することが強くなるための道だと信じていました。そのときの想いが、今の私を後押ししてくれています。身体の痛みは筋肉の赤信号。何かを気づかせてくれているのです。だから私は選手たちに常々、「痛い身体で練習しないように」と伝えています。
また、コンディショニングでは身体の歪みによって、筋肉のアンバランスを判断します。スポーツの各種目における使い方の癖、その選手の身体の使い方の癖によって、「使いすぎている筋肉」と「使えていない筋肉」が出現します。これが骨格の歪みにつながっているわけです。したがって私は常々、「歪んだ身体で練習を始めないように」とも伝えています。
コンディショニングというトレーニング方法は、筋肉を整えるように指導するもの。鍛えるのではなく、整えるのです。そして、日常の姿勢において「ちゃんと寝れる」「ちゃんと座れる」「ちゃんと立てる」という状態を目指します。日々の生活で自分の姿勢を確認し、整えることによって、競技力向上を目指せるのです。 (本書P2-4より抜粋再編集)
著者ホームページはこちら
http://ariyoshiyoshie.com/
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