アメリカンフットボールの関東大学2部リーグBブロック2次上位リーグは、11月15日に日本大学と上智大学の試合が富士通スタジアム川崎であり、日本大学が上智大学に35-6で勝った。スコアこそ差がついたが、内容は競った展開。特に前半は日大が攻撃のテンポをつかめず、上智大のリズムに押される時間帯が長かった。日大は先発QB川端迅(2年=千葉日大一)が後半に修正力を発揮し、WR岩﨑充希(3年=佼成学園)、WR森建斗(4年=日大鶴ヶ丘)へと立て続けにTDパスを決めて主導権を奪い返した。上智大はQB稲葉祥生(3年=南山)がパスオフェンスで粘り強く攻め、日大を苦しめた。日大は今シーズンはじめてコールドゲームとならず、フルゲームを経験。ボールコントロール、ボールセキュリティ面などの課題も浮き彫りとなった。【北川直樹】
日本大学・有志の会 ○35-6● 上智大学 (富士通スタジアム川崎)第1Q:序盤は両者譲らず、スコアレスの均衡 日大はWR岩﨑充希のリターンで自陣35ydから最初のシリーズをスタート。RB酒井佑昌(3年=箕面自由)のランで前進するも、パスが通らず3&アウトで攻撃権を上智に譲る。しかし上智もドライブは続かず攻守交代となり、両者ともに攻撃のリズムがつかめない立ち上がりとなった。
日大は自陣から2度目のシリーズを開始すると、川端からWR青木峻(4年=駒場学園)へのパス、酒井のランでダウンを更新し、敵陣30ydまで前進。しかしここで酒井がファンブル。上智大がこれをリカバーし、日大にとって痛いターンオーバーとなった。
勢いに乗りたい上智大は、自陣からRB小田航太朗(3年=都市大付属)のランで1stダウンを更新すると、QB稲葉からWR中畝晴登(3年=自由学園)へのパスを成功させて着実に前進。敵陣35yd付近まで到達し、短い距離を確実に刻む攻撃でリズムを作った。しかし第1Q9分過ぎに4thダウンとなり、ギャンブルに失敗。
日大は川端が森へのパス、WR冨士原優斗(3年=仙台育英)へのパスを成功させ敵陣45ydまで前進。しかしここで川端が岩﨑へのパスを試みるも、上智大DB兼松朗洋(4年=茗溪学園)がインターセプトを決め、上智が自陣30ydから攻撃権を獲得。第1Qは0-0のまま終了した。
攻めあぐねる展開でもエースQB川端は落ち着いてプレーした=撮影:北川直樹第2Q:ターンオーバーで得た好機に日大が先制TD 上智大はスクリーンパス成功後にボールをファンブルし、日大がこれをリカバー。日大は敵陣29ydという好位置から攻撃を再開すると、川端が青木へのパスを成功させて前進。再び川端が青木へのパスを決めて先制TDを奪い7-0とした。
その後、上智大はRB小田のランとQB稲葉のスクランブルで前進を続け、敵陣38yd付近まで到達。4thダウンでもギャンブルを選択し、稲葉が中畝へのパスを成功させるなど攻め続ける姿勢を貫いた。しかし再び稲葉が中畝へTDを狙ったパスを日大DB加藤鳳太(3年=日大三)がインターセプト。
日大は自陣3ydという厳しい位置からシリーズを開始。途中、RBがファンブルするもダウン後の扱いとなり事なきを得ると、酒井のランで自陣15ydまで前進しダウンを更新。その後、日大は3rdダウンでパス失敗、ディレイオブゲームで罰退し、自陣11ydからパントに追い込まれて流れに乗れない。好位置を得た上智大も得点にはつなげられなかった。
その後も日大はパスが決まらずにドライブが続かない。上智大はギャンブル成功から敵陣へ至るも時間切れとなり、7-0の日大リードで前半が終わった。フィールドの流れは五分、むしろ上智大がリズムよく攻撃していた時間が長かった印象だった。
この日は青木にボールがよく集まり奮闘した=撮影:北川直樹第3Q:日大のパスが安定しTD追加、上智大はFG失敗も粘りの攻撃 日大は後半最初の攻撃シリーズで川端が青木へのパスを決めて自陣45yd付近まで前進し、ダウンを更新。川端のパスが機能し始めた。さらに青木へのパスで敵陣へ。この時、青木がキャッチ後にボールをファンブルするも、日大がリカバーしターンオーバーは回避。敵陣7ydまで迫ると、第3Q4分すぎ、川端が岩﨑へのTDパスを決めて14-0と引き離した。
上智大は自陣20ydからシリーズを再開。稲葉がRB小田へのオプションとドローで連続してダウンを更新すると、RB米山圭佑(3年=小石川中等教育)のラン、稲葉からWR木村へのパスで敵陣24ydまで前進。しかし10分過ぎのFGトライが失敗し、得点につなげられず。
日大は川端から冨士原、森へのパスが成功してダウンを更新したところで第3Qが終了。14-0のまま最終Qへ。
森は手堅いキャッチで勝負所をおさえた=撮影:北川直樹第4Q:日大が3本のTDで大量加点、上智大も終盤に意地のTD
日大は敵陣41ydからの攻撃で川端が青木、岩﨑へのパスで敵陣深くへ。第4Q1分すぎ、、川端が森へのTDパスを決めて3本目のTD。21-0とすると、次の攻撃シリーズからQBを石上元輝(4年=日大鶴ヶ丘)に交代。4分過ぎに石上が冨士原へのTDパスを決めて、28-0とリードを広げた。
さらに中盤、冨士原のリターンで敵陣32ydからシリーズを開始すると、石上がWR余越海皇(3年=岩倉)へのパスを通す。第4Q8分過ぎには冨士原へ2本目のTDパスが決まり、35-0とした。
終盤、上智大は自陣からの攻撃で粘り強く前進。日大のパスインターフェアで敵陣13ydまで前進すると、残り26秒に稲葉からWR木村へのTDパスを成功させて意地を見せた。TFPは失敗し、35-6で試合終了となった。
甲子園はベンチ入りできなかったが、アメフトで冨士原の才能は開花した=撮影:北川直樹日大勝利の裏に課題も。上智大の粘り強さ光る
日大は先発QB川端が青木、岩﨑、森への3本のTDパスを投げ分け、後半のパスオフェンスで上智大を突き放した。特に後半は視野を広げてテンポと精度が向上し、立て続けにTDパスを決めて主導権を握った。青木の好プレーによるダウン更新、岩﨑と森の勝負どころでのTDキャッチなど、WR陣の総合力が光った。第4Q途中から登場した石上も、冨士原へ2本のTDパスを決め、出場後すぐにゲームをコントロールする落ち着きを見せた。加えて冨士原は、キッキングチームでのビッグリターンでも攻撃に勢いをもたらした。
守備陣は第2Q序盤のファンブルリカバーとDB加藤のインターセプトでターンオーバーを奪い、上智大の攻撃を第4Q終盤まで無得点に抑えた。DE會田空都(3年=横浜立野)のサックなど、要所でプレッシャーを効かせて締めた。
一方で課題も浮き彫りとなった。前半は攻撃のテンポがつかめず、ファンブルなど深い位置での危ういプレーが続いた。第1Q終盤には上智守備にカバーされてる状態でパスを投げてインターセプトされるなど、ボールコントロールとリスク管理面は改善点に見えた。
上智大は、スコア差よりも良い内容の戦いを見せた。QB稲葉を中心に、WR中畝、木村とのタイミングの良いパスオフェンスを展開した。RB小田のコンスタントなゲインを軸に前半はパントを蹴らず、4thダウンギャンブルを交えながら粘り強く攻めた。
日大は2次上位リーグ初戦に勝ち、次戦は12月13日に一橋大学と対戦予定となる。全勝で締めくくることができれば、1部下位リーグBIG8への自動昇格が決まる。
序盤は攻め込まれたが得点は1TDに抑えた守備陣=撮影:北川直樹
上智大は経験者のQB稲葉、WR中畝を中心に奮闘した=撮影:北川直樹
このメンバーで臨む試合も今シーズンあと1試合になるかもしれない=撮影:北川直樹