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2022-09-12

【ボクシング】「今度こそ!」──村地翼が10月にWBOアジアパシフィック王座挑戦

キャリアを積んで自信も得た村地

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「静岡から世界へ──」をスローガンに掲げ、若手有望選手を抱える駿河男児ジム(静岡県富士市)が、ジム初のチャンピオン誕生を狙う。12日、JBC(日本ボクシングコミッション)で会見が行われ、田中恒成(畑中)が返上したWBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王座決定戦に、同ジムの村地翼(むらち・つばさ、25歳、同級3位・日本バンタム級4位)が出場することを発表した。対戦相手は同7位ウィルベルト・ベロンド(26歳=フィリピン)。10月30日(日)、ふじさんめっせで開催される。

文_本間 暁
写真提供_駿河男児ジム

「機は熟しました」と前島正晃会長は言い切った。

 2018年5月にプロデビューした村地は、4連勝(3KO)の勢いに乗って、2019年9月に5戦目でタイトルマッチに挑戦(WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王座決定戦)。世界挑戦の経験もあるフローイラン・サルダール(フィリピン)を、初回に相打ちの右で勝ってダウンを奪ったものの、その後は老獪な技術に翻弄され、4、7、8回と倒されてストップされた。「初回にダウンを取ったことで、倒そうという意識が強くなった。その後はこちらの指示も耳に入らない状態だった」(前島会長)「あのときは勢いだけだった」(村地)

得意な左で主導権をつかめるか
得意な左で主導権をつかめるか

 西宮香風高校から東洋大学と、アマチュアの名門で培ったのは確かなもの。「左ジャブと右ストレート、スピードには自信がある」と本人も言うように、ジャブは速くて重く、シャープなブローには目をみはるものがある。だが、当時はあまりにキャリア不足だった。初回に倒したことで舞い上がった部分もあったろう。
「あの時、会長は『まだ早い』と反対したけれど、僕がチャンスだからと強引にやらせてもらった試合。それなのに負けてしまって、会長が叩かれることになったので、今回は何としてもベルトを会長に渡したい」。村地は静かに強く決意を語る。

 そのタイトルマッチ前から、東京の三迫ジムを中心に、大手ジムに出稽古に赴くというパターンで腕を磨いてきた。2020年には、ワタナベジムで河野公平(元WBA世界スーパーフライ級チャンピオン)らを育てた高橋智明氏がトレーナーに就任。チャンピオンメーカーのメソッドで、ジム全体に勢いだけでない実力が加味されてきた。

高橋トレーナー(左)も「ポテンシャルがある」と太鼓判
高橋トレーナー(左)も「ポテンシャルがある」と太鼓判

 村地は現在も三迫ジムで腕を磨いており、WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)と手合わせしているという。「拳四朗さんには、ガードをこじ開けられるので、しっかりとよけることを意識してやっています」。元来、ガードに頼って固まってしまう傾向にあった村地だが、「そうすると重心が浮いてしまうので」体の動きで外す形に取り組んでいるという。さらに、「拳四朗さんに『フェイント全部に反応しすぎること』『バックステップでかわすこと』をアドバイスされている」とも。村地のウィークポイントを的確に突く言葉。神経質に何でも反応しすぎると相手にペースを渡すことに繋がる。悠然と“無視”することも必要なのだ。

大嶋(左)に判定負けしたベロンド。序盤に右拳を痛めた影響もあった Photo/BBM
大嶋(左)に判定負けしたベロンド。序盤に右拳を痛めた影響もあった Photo/BBM

 対戦相手のベロンドは、2016年7月に丸田陽七太(前日本フェザー級チャンピオン=森岡)とWBCユース・バンタム級王座を争い(丸田の6回KO勝ち)、2019年8月に大嶋剣心(帝拳)に8回判定負けと、これまで2度来日している選手。「1発を振るタイプ」(村地)、「粘り強い」(前島会長)という印象を持つが、「後半にスタミナが落ちてきたところで、流れで倒せれば」と村地は話す。

 重く速いジャブで、まずは距離と主導権を握りたい。が、その左に臆せず右クロスを狙ってくるのがフィリピン人選手の傾向。打ってはステップバック、サイドへ移動などし、丁寧にヒット&アウェイでリズムをつかみたい。ガードの上からでも叩かせると勢いづく可能性もある。強打を空振りさせて流れを悪くさせ、スタミナも削りたい。

「前のタイトルのときとは違う、今は冷静に戦えるようになったし、自分を客観視できるようになった」と村地。前回の悔しさを、思いきり晴らすチャンス到来だ。

村地:10戦8勝(3KO)1敗1分
ベロンド:23戦16勝(6KO)5敗2分

兵庫出身だが、富士は第2の故郷。地元の人々への想いは強い
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