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2021-09-05

【ボクシング】ホープ木村蓮太朗、齊藤陽二に2度ダウン食って薄氷の勝利

2度のダウンを跳ね返したという点では、木村(左)の底力は評価すべきだろう

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 5日、静岡県富士市のふじさんめっせで8回戦5試合のオールメインイベントが行われた。大トリはスーパーフェザー級。日本フェザー級20位のホープ、木村蓮太朗(24歳=駿河男児)は、日本スーパーフェザー級12位・齊藤陽二(25歳=角海老宝石)に2度ダウンを奪われたものの、76対74、76対74、75対75の2-0判定勝ち。辛くも無敗(5勝3KO)をキープした。

文&写真_本間 暁

齊藤の右で木村2度目のダウン
齊藤の右で木村2度目のダウン

 初回、ロープ際の狭い空間のやり取りの中、齊藤の右フックがアゴをかすめると、サウスポー木村の体がその場にストンと落ちた。「パンチが効いてのダウンは初めて」という木村はその後、足を使って軽打を集めるのだが、齊藤のプレッシャーは止まらなかった。
 落ち着きを取り戻し、左ボディアッパーを多用し始めた木村だが、4回終了間際、ふたたび齊藤の右が木村を捉える。右を上下にダブルで放つと、木村はまたしてもキャンバスにヒザを着いた。「2度目のダウンは本当に効いていた」という木村。ラウンド終了間際だったのが幸いした。
 続く5回、勝負を賭けたのは木村だった。力感溢れるパンチで齊藤を攻め立てる。パワーでは上回る齊藤だったが、ここで打ち負けてしまう。結果的に、ここが勝負のポイントだったように思う。
 上下左右と打ち分ける木村に対し、齊藤はタイミングがやや遅れてくる左右フックで応戦する。6回には右フックで木村の鼻から大量の血を噴き出させ、スイングをかましまくる。しかし、どうしてもモーションが大きくなってしまい、正確性を欠いてしまった。最終回、木村は左ボディアッパーをグサグサと突き刺して齊藤にダメージを与える。腰を引きながら、それでも齊藤も粘って反撃。木村勝利としたジャッジ二者は、ダウンラウンド以外をすべて木村につけたということになる。齊藤のセコンド陣が、両手を広げて異を唱えるのも理解できた。
 それにしても、2度のダウンというビハインドを負いながら、自滅しなかった木村の粘りも見事。ただし、サイドへ回り込む技を使わずに、正面から齊藤の攻撃を受け止めたのは反省しなければならない。齊藤は、独特のタイミングを生かしたパワーパンチャーとして、これにめげずに頑張ってほしい。齊藤の戦績は7戦3勝(3KO)2敗2分。

畑中の右ストレートがヒット。だが、須藤のガードは堅く、こういうシーンをなかなか見せられなかった
畑中の右ストレートがヒット。だが、須藤のガードは堅く、こういうシーンをなかなか見せられなかった

 フライ級戦に登場した日本同級1位の畑中建人(23歳=畑中)は、ノーランカーの須藤大介(26歳=三迫)と対戦。78対74、79対73、79対73の3-0判定勝利を収めた。
 小兵でガードをガッチリと固めた須藤に、畑中は手を焼いた。まともに打ってもガードの上。右アッパーをわざと空振りして意識を吸い寄せたり、様々にパンチを散らしたりしても、須藤の両腕はなかなか開かない。至近距離では須藤のショートアッパーを浴びるシーンもあった。
 ワンツーからの左ボディブローは須藤に明らかにダメージを与えたが、そこも攻め切れない。「1年7ヵ月ぶりの試合は、やっぱりスパーリングとは違った」と畑中。4回にリズムよく攻めるテンポになったが、あれを要所で見せることができれば、もっとはっきりと勝つことができたかもしれない。
「(父で元WBC世界スーパーバンタム級王者・畑中清詞)会長と、タイトル戦について話している」という。ターゲットは日本王者ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)。「話があれば、ぜひ対戦してみたい」という。実現すれば、これもまた話題を呼ぶカードだ。
 畑中の戦績は12戦12勝(9KO)。須藤の戦績は18戦7勝8敗3分。

村地得意の左ジャブがヒット。しかし、この日は重たいジャブを打つことができなかった
村地得意の左ジャブがヒット。しかし、この日は重たいジャブを打つことができなかった

 日本バンタム級5位の村地翼(24歳=駿河男児)と日本スーパーフライ級9位・中村祐斗(24歳=市野)のバンタム級戦は、77対75(中村)、78対74(村地)、76対76の三者三様のドロー。
 重い左ジャブが進境著しい村地だが、この日は右の相打ち争いが目立った。「序盤に頭がぶつかって」左目下を痛め、そこに中村が目線を外しながら打つ右を再三再四もらって腫れが大きくなり、視界も狭まった。「中村選手は右も左もパンチが強かった」と村地。得意の左には右クロスを狙われ、フリッカージャブに切り替える。だが、これでは中村の前進を止められなかった。

ノールックで放つ中村の右が有効だった
ノールックで放つ中村の右が有効だった

 クリーンヒット数では、中村が上回っていたように見えた。しかし、村地はときに距離を大きく取ったり、左右への変則的なステップを刻んだり、右腕をぐるぐると回して撹乱したりと、冷静さを最後まで保っていたのは進歩の証。本人は「冷静すぎた」と反省するが、状況を考えれば、もっとジリ貧になってもおかしくなく、落ち着きによって踏みとどまったといえる。
 腫れがバッティングによるものとJBC(日本ボクシングコミッション)からコールされたのは6回終了時。これはあまりにも遅すぎる。レフェリーが最後までドクターチェックを促さなかったのも解せない。腫れが目立ち始めたのは3回終了時。その時点でなんらかのアクションを起こさねば、様々な疑念を起こさせてしまう。
 村地の戦績は9戦7勝(3KO)1敗1分。無念のドローとなった中村は19戦11勝(8KO)6敗2分。

先にダウンを喫した湯川だが、3度倒して逆転KO勝利
先にダウンを喫した湯川だが、3度倒して逆転KO勝利

 60㎏契約戦は湯川成美(ゆかわ・なるみ、26歳=駿河男児)が2016年度全日本新人王のサウスポー、粟田祐之(あわた・ゆうじ、30歳=KG大和)に4回2分57秒TKO勝ち。
 初回、粟田の左をカウンタ―されてヒザを着いたのは湯川。続く2回も、粟田が上下にパンチを打ち分けて、リズムのない湯川をリードした。
 しかし3回、右をリードブローにした湯川は、これをビシビシと当ててペースを取り戻すと4回、「それだけしか狙ってなかった」という右ボディアッパーで2度ヒザを着かせ、サウスポーにスイッチしての左フックで3度目のダウンを奪うとレフェリーが試合を止めた。
 湯川は3戦3勝(2KO)。粟田は22戦12勝(5KO)9敗1分。

木村の右アッパー。これはよくヒットした
木村の右アッパー。これはよくヒットした

 スーパーバンタム級戦は、木村天汰郎(22歳=駿河男児)が干場悟(ほしば・さとる、23歳=蟹江)に77対75、79対73、80対72の3-0判定勝利。
 木村は右アッパーから左フックのコンビネーションを多用。干場はこの右をよく食って、左目周りを腫れさせたが、じわじわと前進を繰り返し、ショートパンチをねじ込んだ。
 木村の左フックは、上から振り下ろすような独特のもので、これは死角から飛んでくる効果を上げたが、パターン化しすぎて、徐々に見切られてしまった。
 勝敗は文句なしだが、フルマークや1ポイントしか取れていないというのはあまりにも干場に気の毒な採点だ。木村は10戦8勝2分。干場は13戦7勝(2KO)6敗

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