1日、東京・後楽園ホールの日本ウェルター級タイトルマッチはIBF世界4位にランクされる挑戦者、小原佳太(三迫)が王者の永野祐樹(帝拳)に7回2分39秒TKO勝ち。世界に向け、国内王座からの再出発を心に誓った小原が、6年ぶりに日本王者になった。
上写真=7回、小原は連打を集めてレフェリーストップを呼び込んだ
ときには敗者の奮闘が、勝者に等しい喝采に浴することもある。今年のチャンピオン・カーニバルの最初のチャンピオンとして登場した永野こそは、そうだったかもしれない。挑戦を受ける立場とは言え、世界挑戦の実績もあり、スーパーライト級で日本、東洋太平洋、ウェルター級でWBOアジアパシフィックを2度と過去4つものタイトルを手にている小原に対し、徹頭徹尾、抗戦した。小原の正確な強打の前に何度となく苦境に陥っても、決してあきらめなかった。とにかく前に前にと突き進み、サウスポースタイルからの左、ときに右フックと渾身のパンチを打ち込んだ。
だが、やはりより多くの賛辞は勝った小原に与えられるべきだと思う。
「理想を言えば、もう半歩、外に出て戦いたかった。でも、永野選手はそんなこと関係なく前に出てくると。なら、パンチが当たるか、当たらないか、ぎりぎりの距離に立って、戦ったほうがいいと決めました」
勇気ある判断だった。小原としては心理の駆け引きをも計算しての作戦だったのかもしれない。この距離なら打てば当たるはず。だが、当たらない。逆に思わぬ角度とタイミングでパンチを打ち込まれる。今や日本有数の闘魂ファイターとなった永野も、そんな八方ふさがりのままやり込められたら、燃え立つファイティングスピリットも行き場を失うかもしれない。
セーフティファーストの選択ではない。海外では王座挑戦、あるいは挑戦者決定戦と世界のトップに2度挑んだが、いずれも届かなかった。ならば、日本からやり直す。挑戦者決定戦に勝って挑戦権を勝ち取り、そしてこの日を迎えた。すでに33歳。小原に後はない。「負けたら終わり」の決意を戦いのなかに存分に着色し、さらにレベルの違いもまた演出しなければならない戦いだった。
初回、ゴングとともにコーナーを走り出たのは、「挑む者の気持ちを見せたかった」から。永野が絶えず前進し、左を打ち込んできても、真正面から立ち向かう。ラウンド終盤には左フックでチャンピオンをふらつかせる。2回には、永野のダブルの左ストレートの打ち終わりを右ストレートで弾いてダウンを奪った。3回、切り立つ右に狙いすました左フックでさらに優勢を印象づけた。
4回には粘り強く攻めてる永野に追われるシーンもあったが、5回には右ストレート3発からの連打で、一方的に攻めまくる。チャンピオンの足は棒のように突っ張り、ダウン寸前の状態が続いた。
そして7回。フィニッシュの切り出しは左フックから。よろける永野は懸命に立っていたが、右ストレートが直撃。永野側のカルロス・リナレス・トレーナーがタオルを手にリングエプロンに上がるのと、レフェリーのビニー・マーチンが割って入るのはほぼ同時だった。
「(世界の)景色はまだ見えません」
控室の小原は安堵の色をはっきりとにじませながらも、自己評価は辛かった。「チャンスはなるべく早く作ってやりたいが、ウェルター級はスーパースターのクラスですから」(三迫貴志会長)。それでも挑むのなら、まだまだ強くならなければいけないのだと小原は言った。
「10回やって2、3回勝てるじゃダメなんで。これがラスト。負ければ終わりですから」
敗れた永野は率直の実力差を認めていた。
「距離が遠かった。前に前にと出たかったが、思いどおりにさせてもらえませんでした。いいパンチが当たっても、それ以上にいいパンチをもらってしまいました」
取材がはけ、もう一度、向かった医務室から出てきた永野とすれ違った。完敗の戦いに、私はうかつながらもかける言葉を見失っていた。ただ、「がんばって」としか言えなかった。
プロボクサーになるために九州から上京した。大きな野望はなかった。ただ、目の前にあることだけを見つめて、懸命に努力を重ねた。さしたる注目を集めることはなくとも、こつこつと勝ち星を拾い、そしてチャンピオンシップを握った。そんな永野が今後、ボクシングを続けるのかどうかはわからない。もう30歳だ。だが、二十代、青春と言われる季節を、今できる目の前のことだけに心のすべてをつぎ込んできた。だからこそ、彼のこの後の人生を含めて、もう一度、「がんばって」と告げたくなった。苦い慰めに聞こえたのなら、申し訳なく思う。
小原は28戦23勝(21KO)4敗1分。2度目の防衛に失敗した永野は20戦17勝(13KO)3敗。
文◎宮崎正博 写真◎馬場高志
採点上は一方的でも、永野の奮闘が光る戦いでもあった
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